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kawaii少女カルト


わたしはおんなのこだし
おんなのこでいることがわりと好き

物心がついたときからかわいいって言葉をかけられることが当たり前で日常だった。

小学校低学年のときは下校すると毎日のように通りすがりのセーラー服を着たお姉さん達が私を見て「あの娘かわいい」と言ってくれた。

恥ずかしくて聞こえないふりをしていた
一緒に下校してる子にも聞こえないでほしかった

私はそのありがたみが分からなかったし、正直鬱陶しくて放っておいて欲しかった。

なにもしなくても目立ってしまうことが嫌だった

いつも見られているという感覚から
自意識だけが
砂時計の砂が落ちるごとく増大していった

高学年になると竹下通りに行くと必ずスカウトマンに声をかけられるようになった。

彼らが列をつくり、1度に4回スカウトされた日もあった。

溜まっていく名刺がかわいいの保証みたいで嬉しかった。わたしって可愛いんだ。と思えた

そんなことが続くと私はモデルがしたくなった。
両親は危ないから
高校生になるまでダメだと言った


彼らはわたしがずっといじめられていたことを知らなかった。

私はハーフなので学校ではいつも

部外者、異常な存在 

として扱われていた。嫌な言葉を毎日浴びていると自分の存在意義と価値が曖昧になる。

私にかわいいと言ってくれるのは、街中の通行人A、通行人B、知らない人たちだけだった。

いじめられていたから、私は他の場所で自分の存在価値を確立したかった。
学校のいじめっ子は認めてくれない、もっと大きな世界での、 "圧倒的な価値" が、欲しかった。

中学校に入ると、私よりかわいい子がいた。
性格のいい子にしかない、愛されて育った子特有の真っ直ぐな可愛さだった。敵わないと思った。

私はその子と仲良くなり、学校が始まって数ヶ月後、その子はわたしをいじめてきた男の子と付き合った。その男はカスだったので適当な理由でその子を傷つけてすぐに別れていた。

私は何も思わなかった、そんな奴と付き合うなんて見る目がないな。とは思ったけど、それくらいの感情しかなかった。

そのときいくら可愛くても男に傷つけられることを知った。

中学2年生になるとサロンモデルをするようになった。芸能界には反対の親もそれくらいなら、、と納得してくれた。楽しかった、輝いてる気がした。周りにそんなことをしている子はいなかったから、わたしは特別だと思えた


そのときやっと、小さな田舎町の外の、もっと広い世界で、私を認めてくれる大人達が私の人生にぽつぽつと存在し始めた。


彼らはよくモテるでしょ?と言ったが実際、そんなことは全然無かった。小学校のときほど過激な嫌がらせを受けることはなくなったが、それでも微かな憎悪を浴び続ける毎日を過ごしていた。
学校でそんな状態だとは言えず
男の子にはあまり好かれない、とだけ答えた

「男はアホだからね(笑)高校生になったら気づいてくれるよ」彼らは笑った。

今までの人生ずっといじめられてきて、そんなことがあるとは思えなかったけど、そうだったらいいな、と淡い期待を抱いて中学校の卒業を心待ちにした。

実際、彼らの言う通りになった。

高校生になると私に意地悪をしてくる男の子はいなくなった。
大人たちが言うように、憎悪の代わりに好意を受けるようになった。
廊下を通るといつも人に見られるから、また悪口を言われているんだろう、と思っていたけど
そんなことは別になかった。

意地悪がなくなると同時に、スカウトも以前ほどされなくなった。

私にはもう、そういう、"圧倒的な可愛さ" はないんだな。と思った

周りに見られている感覚は苦しかったけど直接的な被害がない限りは別にどうでもよかった


私が知らない人も私のことを知っていて、
こんなに目立つなんてわたしはやっぱりどこかおかしいんだろうと思った、無意識に変な行動をしているのかも、とも思った。

コロナ禍だったので熱があると言えば学校はいくらでも休めた。出席停止扱いになるので退学の心配もなく休み放題だった。

週に1. 2回は休むようになり、その生活を続けた

夜は眠れなくて、好きな音楽を聴き、本を読み、思考に耽って自分の世界をつくった

そんな孤独な私の世界を支えたのは男の子からの承認だった。

やっと男の子から好意を向けられるようになったことが嬉しくて、わたしはかなり調子に乗った

いままで欠けていた分、めちゃくちゃ求めた

ナンパに答えたことはなかったけど、正直そんなレベルでも嬉しかった

どうしようもなく歪んだ

自分のことを好きな人を見つけては、最大限に可愛く接し沼らせ、相手が本気で私を好きになったらつまらなくなって捨ててしまう。

そんなことばっかしていると好きが分からなくなってくる。

そんなことばっかしているせいで本気で人が愛せないし、大好きな人ができてももっと上を求めてしまって、ダメにしちゃう

今年20歳になったが、この歪みはまだ治せずにいる。治す努力はしているが難しい。

それに今になっても、小学生のときにできた基準のせいで、街を歩くたびに通行人からの承認を求めてしまう。当たり前のことなのに、誰にも振り返ってもらえないと私はもう可愛くないんだと思ってどうしようもなく悲しくなる

現代でかわいいは信仰だしカルト

どこに行ったって、かわいいという言葉で埋め尽くされていて、女の子はみんなかわいいを追っている

でもかわいいの価値ってほんとうにそんなに高いのかな、

私にとっての "かわいい" はいつしか呪いのようなもので

私を苦しめる根源だ


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