孤城①
「クリニックですー!!こんにちは!」
インターフォンを押すも
お返事はない
ドアをノックする
コンコンコン!
「クリニックですーーー!」
真冬の冷たいかぜの当たる
古いマンションの3階
その方は80代男性
肺がん末期
前医からの手紙によるとどうやら
「いしゃぎらい」
体調不良で緊急入院して
ガンが見つかった
長くかかっていた
「いしゃ」の先生しか
信用しないと言ってたな、、
そういえば。
はじめてクリニックの「いしゃ」が訪問した時は
そのドアを開け
たくさんの質問をし
片方しか見えないその目に
虫メガネのレンズを押し当てて
書類にサインをしたそうだ。
さて、
看護師と看護助手のコンビの訪問では
ドアを開けてくれるのかな、、、
しばらく待つと
ドアの向こうにゴソゴソと音がして
しまったままの戸の向こうから
しわがれた
大きな声が聞こえてきた
「だれだ?」
看護師の訪問と伝えると、、
「いい、いらない。」
ドアは
開かなかった。