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第20話 家族
「たっだいま〜!!」
そう舞美が元気に呟くと、叔母は優しく微笑み
「今日はね、いつメンで図書館に行くんだ!!そこでテスト勉強するんだよ♪」
「ああ、あの子たちね
車に気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとう!!」
舞美の叔母は優しく微笑んでから舞美を快く見送ってくれた。
図書館前の信号で信号待ちしている時、何気なくスマホを見ると1件のメッセージが来ていた。それは咲南花からで『今日は行けない』というものだった。
きっと母親が許してくれなかったんだろうなと悲しくなる。舞美の叔母はあれだけ優しく見送ってくれたのに。
たしかに「友だちと勉強する」とだけ聞くと、遊びと変わらないだろうとあの親なら思うだろう。だけど、母親の監視下で1人寂しく勉強する咲南花が不憫でならなかった。
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「ただいま」
「あ、おかえり」
そう言って玄関まで来てくれたのは、次女の杏奈だ。
「お母さんと遥菜お姉ちゃんは?」
「お母さんは茶道の習い事に行ってる。お姉ちゃんは知らない。まあお姉ちゃんのことだし彼氏さんのとこにでも行ってるんじゃない?」
「それに柑奈は吹部の大会が近いらしいし遅くなると思う」
「そっか。それとね、わたしは今から舞美たちと図書館に勉強しに行くね」
「今は4時半だから、5時半には図書館を出られるように急いで行ってくる!」
「わかった。お母さんに伝えとくよ」
「ありがとう!」
「うん」
やっぱり瑠愛子はこうでなきゃね…という最後の次女の発言は無視して、駆け足で家を出た。
ただでさえ時間もないので自慢の脚力で図書館まで走ろう。
中学生のうちは寄り道もできないから図書館で自習できる時間が限られるのはきついけど、図書館が過半数の人の近所でよかったと思う。
咲南花と舞美と花音譜は図書館の近所に住んでおり、唯花や綸音は自転車で通える距離にある。
咲南花は図書館の西側、舞美と花音譜は図書館の東側に住んでおり、瑠愛子の家の方向と同じだ。
そして瑠愛子に関しては、家から徒歩30秒で通える。
だからテスト期間は毎回図書館の自習スペースを使っている。また、今回5人に自習の誘いをしたのも瑠愛子なのだ。
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ピコン『新着メッセージがあります』
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前回のテストのこともあり、メッセージを見ると
『今日は行けない』
という咲南花からの簡素な文だった。
本当は咲南花に勉強を教わりたかったがワガママを言うわけにはいかなかったので、了解のスタンプだけを送り、瑠愛子は他の人と合流して自習を始めた。
瑠愛子たちの心のモヤモヤは晴れることはなかった。