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第15話 自責の念


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   『Rioが通話に入りました』

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『あ、やっときた〜お疲れ様』

『お疲れ様』

『お疲れ様。遅くなってごめん』

『ぜんぜん大丈夫だよ』

『今日はお絵描きをテーマにした動画だよね!?
めっちゃ楽しみ!!!』

『今さらだけど、誰が動画回すの?』

『えっとね、前回パーティーゲームの動画で舞美と瑠愛子と咲南花が回したんだよね?
だったら今回は私と綸音が回そうか』

『了解。前回と同じ動画の作りにする感じね』

『そう。ずっと同じ視点だと飽きちゃうかなって思ってね。綸音は動画回せそう?』

『…多分』

そうして、綸音たちは動画を撮り始めた。

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『それじゃあ次が最後だね』

ついに最終ラウンドに入り、もうすぐ録画が終わるという時に事件は起こった。

『私が描いた絵がさなに行くんだよね?なら、別に言葉足らずでもいいか』

『何でだよ』

『だってゆいさなの仲でしょ?
この仲なら言葉足らず​──​──​──絵足らずでも伝わるはず!!』

『あ!犬猿の仲ってやつだ!?』

『それを言うなら“ツーカーの仲”ですわ』

『あははっ(笑)そうだっ………』

『おいゴラァ!!!!』


突然外部から男性の怒号が聞こえた。綸音はその声に心当たりがあった。

『………!!』

『みんな大丈夫?』

『外からかな』

『治安わりいな』

みんなをビックリさせたこと、怖がらせたこと、動画の進行を妨げてしまったこと。
いろいろ申し訳なくなって、綸音は思わず

『ごめん……』

と呟いていた。

『なんでりおが謝るの?』

『さっきの声………お父さんの』

『お父さんが、お姉ちゃんに怒鳴ったんだと思う。さっきからケンカの声はうっすら聞こえてたから』

どんな顔をすればいいか分からず、自然と俯いてしまう。

『そうなんだ…りおは大丈夫?』

『うん。いつものことだから』


『………この動画、ボツだよね』

『そのシーンだけカットとかはできないの?』

『けどあまりに急なことでゲームも放置しちゃったものね』

『ほんとに、ごめんなさい』

綸音は貴重なれいどろ動画をボツにさせてしまったこと、
家族の話はしていたけれど毎日のように家族がケンカしていると伝えなかったこと、
れいどろのルールである“隠し事をしない”というものを破ってしまったこと、
いろいろな後悔が複雑に絡まり黒いモヤとなって綸音の胸に残り続ける。

『明日は空いてる?』

という唯花の問いに、

『あたしは大丈夫だよ〜ん♡』

『俺は午前中だけ部活あるけど午後は暇』

『わたしも昼くらいまでは用事があるかな』

『明日はいつでも空いているわよ』

と4人は答える。

『じゃあ夕方くらいにもう1回同じゲームで撮ろうか。綸音は私の家においで』

『…ありがとう』

その後少し雑談をして、解散した。

翌日綸音は唯花の家に機材を持って行き、無事に実況動画を撮ることができたのだった。
無事に撮れたはいいものの、綸音の中にあるモヤモヤは取れることがなかった。

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