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第26話 嫌われた命


変わらない毎日。当たり前のような空間。

でも本当は、自分の居場所はここではない気がしてたまらない。

『もしもしー?聞こえるー??
今日の夕陽、めっちゃきれいだよ!?』

『そうなんだ』

『ぜんぜん興味なさそうじゃん…(笑)』

『まあ』

『今日はお家にだれかいるー?』

『誰も。兄は家出、姉は父と病院に行った。
しばらく誰も帰ってこない』

『そっかー、大変だね』

『まあ』

綸音はそう返事をするしかなかった。

『寂しくないの?』

『何で?』

『家族とお話とかしないって言ってたから』

『そっちこそ、寂しくならないの?』

『うーん…たしかに後悔することもあるよ』

『あの時あたしが限定モノのぬいぐるみがほしいなんて言わなければ、今でも両親と笑い合えたのかなって。
毎年誕生日になると少し悲しくなっちゃうな…』

そう。舞美は誕生日の前日に両親とまだ見ぬ妹を失った。

舞美の両親は、誕生日プレゼントとして限定モノのぬいぐるみを買うために少し遠出をした。
そこで飲酒運転をした車に突っ込まれて両親のみ亡くなったらしい。相手は反省していなさそうだったと舞美から聞いている。

ちょうどその頃は下の子の性別が女の子だと分かった時だった。
もし舞美の妹が生きていたら唯花の妹と同い年だったと言われた時は複雑な気持ちになった。

『舞美の辛さに比べたら自分なんて……』

『どうしてそう思うの?』

『綸音、いつも言ってるよね。“自分はいらない子だ”って、“生まれてこなきゃよかったかな”って。』

顔を見なくても分かる。舞美は自分のために本気で向き合ってくれている、と。

『最後に家族と会話をしたのがいつかも分からないし、学校でもいつも1人で本を読んだりしてるし。
いてもいなくても同じだと思ったから………』

『んー、本当にそうなのかな?』

さっきまでの真剣なトーンとは打って変わって、少し明るく話す。

『この世に“嫌われた命”なんてないと思うんだ。もっと言うと全員が誰かにとって唯一無二の、かけがえのない存在だってこと!』

『あたしは家族に恵まれて、友人にも恵まれて、たくさん愛されている自覚があるから、綸音の気持ちを完全に理解することはできない。
でもあたしにとって綸音は暗闇から救ってくれたヒーローだし、綸音のかける言葉ひとつひとつに救われたの!』

『今度はあたしが綸音を救いたい。
ううん、綸音だけじゃなくてれいどろ全員を救いたい!』

『“いなくなりたい”って思わなくなるような、毎日が楽しいって思えるような毎日を送れるようにがんばる!
だから、自分のことを否定しないでほしいな』

『…………』

この世に“嫌われた命”なんてない、か。

たしかにそうかもしれない。



昔誰かが言っていた。自分を最後まで愛せるのは自分だけ。

自分を大切にできない人が他人を大切にできる訳ない、と。




これは、もう少しだけ生きてみようと思った日の出来事。

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