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第10話 迷い


緋音にメッセージを送ってから、舞美は依頼絵を描いていた。
しばらく作業をしていると緋音から返信がきた。

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『返信遅くなってごめんなさい!
イラストの色に関しては、どちらかと言えば真っ白がいいです!それにピンクのメッシュを入れてほしいです』

『了解!明後日までにラフを送るね!』(既読)

『ありがとうございます!』

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依頼絵のしめきりは来週で完成間近なので、課題より先に依頼絵の続きを描き始める。

叔母が買ってきたというメロンパンをつまみながら舞美は順調に絵を描いていた。

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   ピコン 『新着メッセージがあります』

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(……!るあ姉からだ!!)

舞美は瑠愛子のことを“るあ姉”と呼んでいる。

特に理由はないが強いて言うなら姉のように面倒見がいいことと、舞美よりゲームが上手でゲーム講座を開いてもらったことがあることが由来する。舞美が実況を撮る時には、アドバイスをくれたりもする。

だから舞美にとって瑠愛子は師匠のようなものであり、姉のような存在なのだ。

舞美にも瑠愛子のような姉がほしかったと不覚にも思ってしまう自分がいた​──​──​────。

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『お疲れ様。明日の放課後一緒に遊びに行かない?花音譜と綸音は来るみたいなんだけど、咲南花は部活らしくて唯花はまだ聞いてない』

『うん!あたしはぜんぜんOKだよ♡ちなみにどこ行くの?』(既読)

『うーん…あんまり考えてなかったけど、カラオケとかボーリングとかに行こうかなって思ってる』

『それか駅前のデパートに買い物しに行ってもいいよ!』

『めっちゃいいね!!!カラオケの帰りにデパートでおそろいの何かを買おう!』(既読)

『てかさ、グループで送ればよくなかった?』(既読)

『あ、たしかにwすっかり忘れてたw』

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そういうところがかわいいんだよな…と思っていると、ふいに昔のことを思い出した。

初めて唯花たちと出会った日、舞美は両親を失ったばかりで気分の浮き沈みが激しく周りの人には“もう大丈夫!”と笑顔を作っていたが本当は毎晩1人で泣いていた。

そんな時に、舞美の笑顔(ツクリモノ)に気づいた唯花が一緒に歌い手活動をしないかと誘ってくれたのだ。

もしあの時唯花が気づいてくれなかったら、昔の自分がOKを出さなかったら、
舞美の心は壊れていたかもしれないと思うと唯花たちには感謝しかない。

だけど、最近になって考える。

“歌い手活動”というのは、“イラストレーター”というのは、舞美が本当にやりたかったことなのだろうかと………。

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