さっき男性と会ってきたんだが文句いいか?

いや私もね、子供は作らないとは言え家族とも疎遠やから心の拠り所を持つべきやと行動したんですよ(この時点で偉すぎる)
病気をした時の緊急連絡先がないというのは社会的存在として生きていくには不便でございまして、各種SNSやアプリケーションを用いてお会いしたいと言ってくださる方を探したわけでございます。

ほんで割ととんとん拍子に進みまして、LINE交換は抵抗があったからインスタの別垢交換してやり取りしてたんですよ。
LINE交換に抵抗があるのは元お堅い職場勤務、名前や顔から色々と情報が漏れ出すのを警戒してのことであり皆さん一律で同じ対応をしているわけです。

さて本日、待ち合わせは梅田。お昼時だったのでおおかた周辺でご飯を食べてお茶でもして解散かしらといった感じです。
とはいえ梅田。さりとて中心地。
初デート(デートなのか?)となるとそれ相応の価格帯の店は大量にございます。私はこの辺りの価格帯だなとあたりをつけて財布に金を突っ込みました。最悪両名ともの支払いができるくらいにはね。

合流しましたと、そいつがリュックで登場したことはよしとしよう、リュックは何も悪くないから。個人的にリュック姿で登場する男のシルエットに元彼を思い出すのでできればリュックは避けて欲しいが。リュックに罪はない。

梅田から直結のルクアに入り、「よくあるどこでもいいよって本当は答えがあるってやつありますけど私食べ物に関心があるわけじゃないので本当にどこでも良いですよ」って話をしたら男はエキポンテベッキオを選んだんですよ。

私じゃないよ 男がだ

ポンテベッキオってなぁに〜?となるフレンドのためにURLを記載する。
本店はこのレベルである。流石にルクアに入っているのはこれをかなりカジュアルダウンした店ではあるが、それでもポンテベッキオの名を冠している。

何の偶然か、私は本店の方に行ったことがある。
大学の合格祝賀会だ。あの年は大量に高学歴が爆誕したので合格祝賀会の会場が高級レストランだった。そう、私は本家を知っている。

私は何事もなさそうに、1番安い「2000円弱のコースにしてドルチェつけたらついでにお茶もできるから長居できてお話しできますね」と言った。
優しさである。飲み物もついてきてお茶菓子もついてきて、ジェラートにプラスでドルチェをつけることができる。
それだけあれば2件目のカフェ代も不要だろう。その分食後にゆっくり会話ができたならお互いについてよく知ることができるよね?という私の完全な善意である。そこまでの世話をさせるな。

ドルチェは2種類から選べた。パフェかブラウニーである。
私はコースにジェラートがつくことに気がついていたのでブラウニーを選ぼうとした。
しかし男はメニュー注文のタッチパネルを手放さなかった。
そして何故か、パフェを選んだ。

何故?

バカなのかな?元からジェラートのつくコースに問答無用でパフェを追加。なんで??私ブラウニーがよかってんけど

会って2回目くらいのやつにそんなことは言えない。俺のマブだったらお前暑いん?くらいは聞いただろう。
しかし2回目。不可能だ。

まあバカなんやなと思って諦めることにした。そんなこともある。

ちょっとお高いレストランには紙のナフキンがある。これがもっと高級店になると布になるわけだが。
とにかく汚れないようにお膝にかけてね〜っていう、あれだ。

おかわり自由のフォカッチャが席に届き、私は当たり前のこととしてナフキンをお膝にかけた。パンくずがこぼれることはよくあるしな。
そして横を見る。

男、なぜか使わない 

なんで?

なんで?お前この紙のこと何やと思ってんの? 初めて見たん?これ

そう思いながらフォカッチャを食べながら雑談をする。
フォカッチャを一口大に千切ながら食べていると男の食べ方が気になる。

齧り付いている。フォカッチャに。

パンは一口くらいにちぎって食べようねって小学校の給食の時くらいに聞かなかったか?
そうでなくてもここはポンテベッキオである。どうにかならないのか?

私は大人だから。もうこの時点でこいつとの次回はないが雑談を続ける。

そうこうしていたらメインのパスタが来た。
それでも男はナフキンを取らない。お前これのこと埃カバーか何かだと思ってる?

そして男はフォークを手に取った。
スプーンと共に。

お前ここどこか知ってる?ポンテベッキオやねん。由緒正しきイタリアンレストランの派生やねん。
アメリカンダイナーやったらスプーンの上でクルクルしてええと思うで。
サイゼリヤでも許されると思うで。
でもさ、ここ、ポンテベッキオやねん。

私は男の顔を見るのをやめた。久々に食べた秋刀魚は美味しかった。

そしてパスタを食べ終わるとドルチェたちが来る。ジェラートと、パフェと、お茶菓子のチョコだ。

バカじゃねーの?
ほらやっぱそうじゃん。ジェラートとパフェがキャラ被りしてるやん。
何なら器同じやん。てかなんで私に選ばしてくれへんかったん?

着席して約1時間半。ドルチェのほとんどがアイスだったせいもありお茶菓子以外を食べてコーヒーやお茶もおおむね飲み終えた。
まだ有料で購入した飲み物は残っている。

男が帰り支度を始めた。
お前、俺の話を聞いていたのか?

ドルチェのセットにしたらゆっくりお茶して話ができるね。の私のフォローはどこへ行った?
ここは松屋じゃないんだぞ。飯食ってすぐ退店しないといけないタイプの店じゃない。わかる?
ご飯食べてしばらくおしゃべりする店なの、ポンテベッキオは。おしゃれランチのお店なの。

男が店を出ようとするので慌てて財布を出しながら私は問うた。
「お会計って好み分かれますよね。どうします?」
「あ、出しますよ」

ここに来てやっと好感度アップイベントである。
初回はね、カッコつけて欲しいよね。ポンテベッキオだし。

私は財布をカバンにしまって男の斜め後ろに立った。会計を見届けて一応÷2の数字を算出しておいた。

店を出てから財布を取り出して確認する。「⚪︎⚪︎円くらいでしたよね」
財布から千円札を何枚か取り出した。
店員の前で財布を出さず店を出てから再度確認するのは私なりの優しさである。
割り勘の意思を見せつつ、店員の前では男性をたててやる気遣いである。
先ほどいいよ、とは言われたが一応の礼儀作法のつもりだった。
男は言った。

「きり良く1,000円で良いよ」

何が???????????

全然キリが良くない。別にランチが千いくらだったわけではない。もうちょっとした。何千いくらとかの世界である。
天下のポンテベッキオの派生だからね。

いいか、ポンテベッキオを選んだのはお前だ。
ポンテベッキオを知らなかったのもお前だ。
人がカフェの店探しや金も省略させてやろうとドルチェセットを提案したがそれを潰したのもお前だ。
席を立つ前に「いいよ」とも言ったのもお前だ。

きりよく?!1000円?!何が???????????

私は1000円を手渡し、ありがとうございます、と微笑むとしばらくルクア周辺を歩いた。
ルクアを指定したからにはこいつなりに何か考えがあるのだろうと思った。

なかった。

本当に数分歩くと解散の流れになった。
「次はいつ頃…」「あ、また予定がわかればって感じですね」
男の言葉を遮る。ナフキンを膝にかけない男と2度はない。お前今まで膝にあれかけたことないんか?
「LINEの交換とかって」「LINEはまだ不安なので、今度」

男は梅田に用事があるらしくそのまま残るようだった。
私はその場を後にして本屋に駆け込み、本を4冊買って帰路に着いた。

これがことの顛末である。
今度から、好きなタイプは「教養のある人」と答えようと思った。

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