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鼻うがいは効果がある?最新の研究からみた感染症への効果を解説

皆さんこんにちは。
初めまして、アザラシです。
このnoteでは先進テクノロジーを駆使した治療や健康管理、病気予防などをわかりやすく解説することを目指しています。それだけでは堅苦しいので、雑学的な科学、旅行・料理のエピソードまで幅広くお届けしようと思っています。気楽にお付き合いいただければ幸いです。

それでは早速、本題に移っていきたいと思います。初回は皆さんにも身近で、それでいて知っていたらちょっと得をするかも?という内容です。

新型コロナウイルスの流行以降、「鼻うがい」(生理食塩水を用いて鼻腔内を洗浄する方法)が感染予防に有効ではないかと注目されてきました。もともと鼻うがいは鼻炎や風邪のときに鼻腔内をスッキリさせる民間療法として親しまれてきましたが、COVID-19に対しても何か効果があるのでしょうか? 最新の研究論文を中心に、鼻うがいの効果について
感染予防
症状緩和
ウイルス排除

の観点から見ていきましょう。

感染予防:鼻うがいでウイルスの侵入を防げる?

新型コロナウイルスは主に鼻や喉の粘膜から体内に侵入します。そこで、生理食塩水で鼻腔内を洗浄することでウイルス量を減らし、感染そのものを防ぐ効果が期待されています。​pmc.ncbi.nlm.nih.gov

実際、鼻うがい・うがい等の洗浄は、マスクや手洗いと並んで追加の予防策になり得ると専門家も提言しています​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。まだ大規模な証拠は限られていますが、「やらないよりやった方が良い」かもしれません。


鼻うがいが感染予防に寄与すると考えられるポイントは以下の通りです。

  • 物理的洗浄効果:ウイルスが付着した粘液ごと生理食塩水で洗い流し、鼻粘膜に留まるウイルス量を減らします​

    1. pmc.ncbi.nlm.nih.gov

  • 周囲への感染拡大抑制:鼻腔内のウイルス量が減れば、くしゃみ・鼻呼吸などで外に出るウイルスも減少します。その結果、感染者が周囲にウイルスをばらまくリスクを低減できる可能性があります​

    1. pmc.ncbi.nlm.nih.gov

  • 安全で手軽な予防策:生理食塩水による鼻うがいは副作用もほとんど報告されておらず、安全で安価に実施できる点も利点です​

    1. pmc.ncbi.nlm.nih.gov

※なお、鼻うがいは絶対に感染を防げる保証された方法ではありません。あくまで「追加の予防策」として、有効性が示唆され始めている段階です。基本的な感染対策(ワクチン接種、マスク着用、手洗いなど)をまず徹底し、その上で補助的に取り入れるのが望ましいでしょう​pmc.ncbi.nlm.nih.gov


症状緩和:発症後の症状を和らげ、重症化を防ぐ効果は?

もし感染してしまった場合でも、鼻うがいが症状の緩和や重症化予防に役立つ可能性があります。COVID-19では鼻づまりや喉の痛み、嗅覚障害など上気道の症状が現れやすいですが、食塩水で鼻や喉を洗うことで粘膜の潤いを保ち、ウイルスや炎症性物質を洗い流すため、症状の軽減につながると考えられています​pmc.ncbi.nlm.nih.gov
症状緩和に関する研究はまだ規模が小さいものが多いですが、「やってみたら楽になった」という患者さんの声も多く報告されています​

pmc.ncbi.nlm.nih.gov。少なくとも悪化の報告はなく安全ですので、感染後のセルフケアとして鼻うがい・うがいを取り入れるのは十分に価値があると言えるでしょう。

実際にいくつかの臨床研究から、その効果を見てみましょう。

症状改善のスピード向上:インドで行われた小規模RCT(ランダム化比較試験)では、軽症のCOVID-19患者に生理食塩水でのうがいを毎日行ってもらったところ、平均して約4日で臨床症状が改善し回復しました​pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

。これは、何もしなかった対照群に比べて明らかに早い回復であり、統計的にも有意差が認められています(p=0.01)​pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

。この研究では一方でポビドンヨードうがいも試されましたが、ウイルス検査が早く陰性化したのはポビドンヨード群、症状の改善が早かったのは食塩水うがい群という結果でした​pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

。つまり食塩水によるうがいは症状を楽にする効果が高いことが示唆されています。

肺炎の進行抑制(重症化予防):鼻うがいによって、ウイルスが鼻・喉から気管支や肺へ広がるのを抑え、肺炎への進展を防ぐ効果も期待されています​

pmc.ncbi.nlm.nih.gov

。実際、別の研究では、生理食塩水の鼻スプレー+うがいを実施したグループでウイルスが早期に陰性化し(62人中30人が陰性化=48%)、コントロール群(63人中16人=25%)よりもウイルス排除が有意に進みました​

doi.org。さらにCT検査で肺の状態を追跡したところ、鼻うがい群では91%の患者で肺炎の改善または進行停止が見られたのに対し、対照群では63%にとどまり、明らかに鼻うがい群の方が肺炎悪化を防げていたのです​

doi.org。このように、生理食塩水で鼻や喉のウイルスを減らすことで肺へのウイルス供給(微小誤嚥)を断ち切り、重症化を予防できる可能性があります​doi.org

ウイルス排除:鼻うがいでウイルスを洗い流す効果とメカニズム

鼻うがい最大の狙いは、鼻や喉にいるウイルスそのものを物理的に取り除いてしまうことです。生理食塩水自体にはアルコールのような強い殺ウイルス作用はありませんが、ウイルスを鼻粘膜から洗い流して排出することで結果的にウイルス量を減少させます​

pmc.ncbi.nlm.nih.gov。これは、ちょうど手を洗ってウイルスを洗い流すのと同じイメージです。では、具体的にどの程度ウイルスを排除できるのでしょうか?

研究によれば、鼻うがいをすると鼻腔内のウイルス量(ウイルス負荷)が目に見えて減少します​

pmc.ncbi.nlm.nih.gov。以下に、最新の研究結果をご紹介します。

短期間(即時)的なウイルス量低下
たとえばギリシャで行われたパイロット試験では、入院中のCOVID-19肺炎患者に生理食塩水での鼻洗浄を16時間の間に4回(4時間おき)行ったところ、わずか24時間後には鼻咽頭のウイルス量が有意に減少しました​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。一方、鼻洗浄をしなかった対照群では同じ期間にウイルス量が増加しており、洗浄群との間で明確な差が出ています​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。つまり生理食塩水で一日洗浄するだけでウイルス増殖を抑え込めることが示されたのです。

長期間の使用でウイルス排出を加速
複数の研究を総合すると、定期的な鼻うがい・うがいの習慣は体内からウイルスを排除することを早める傾向が見られます​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。実際、陽性判明直後から食塩水の鼻洗浄・うがいを開始したグループでは、10日目に91%もの患者がPCR陰性化したとの報告があります(対照群はわずか28%)​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。わずかな塩水でここまで差がつくのは驚きですが、それだけ鼻・喉のウイルスをこまめに洗い流すことが重要だと言えるでしょう。
同様に、別の外来患者対象の試験でも5日目の陰性化率が洗浄群68%に対し対照群25%と、大きな開きが報告されています​pmc.ncbi.nlm.nih.gov
このように、鼻うがいはウイルスを素早く体外へ追い出し、感染期間を短縮する効果が期待されています。

考えられるメカニズム:鼻うがいがウイルス排除に効く理由としては、第一に物理的にウイルスを洗い流す作用があります。さらに、生理食塩水は粘膜の線毛運動(鼻の中の小さな毛が異物を押し出す働き)を改善し、粘液の粘り気を調整して痰やウイルスを排出しやすくします​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。この結果、体が本来持つクリアランス機能が高まりウイルス除去を手助けします。また試験管内の研究では、生理食塩水(等張~やや高張濃度)がウイルスの複製や細胞融合を直接阻害するという報告もあります​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。塩によってウイルスのタンパク質構造や細胞環境が変化し、増殖しにくくなる可能性が指摘されています。ただし、この直接作用については研究途上であり、主な効果はあくまで「洗い流すこと」と考えたほうがよいでしょう。

まとめ

鼻うがい(生理食塩水を用いた鼻腔洗浄)は、新型コロナウイルスに対して次のような効果が期待されています。

  • 感染予防効果:鼻・喉から侵入するウイルスを洗い流し、粘膜にとどまるウイルス量を減らすことで感染リスクを下げる可能性があります​

    1. pmc.ncbi.nlm.nih.gov

  • 症状緩和効果:感染後に鼻うがい・うがいを行うと、鼻づまりや喉の不快感が和らぎ、症状の回復が早まる傾向が報告されています​

    1. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

  • ウイルス除去効果:塩水による洗浄で鼻咽頭のウイルス量を直接減少させ、体内からのウイルス排除を早めます​

    1. pmc.ncbi.nlm.nih.gov

鼻うがいはシンプルかつ安全な方法であり、研究の中でも大きな副作用は報告されていません​pmc.ncbi.nlm.nih.gov。もちろん、現在のエビデンスは主に小規模研究に基づくため、「鼻うがいだけでコロナに万全」というわけではありません。基本となるワクチン接種やマスク着用、医療機関での適切な治療は不可欠です。しかし、「自分でできるプラスアルファの対策」として鼻うがいを習慣にすることは、最新の知見から見ると十分試してみる価値がありそうです​pmc.ncbi.nlm.nih.gov

手洗い・うがいならぬ「手洗い・うがい・鼻うがい」で、身近にできる予防・症状ケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。


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