1950年代のJ.A.T.P
ジャズが好きすぎて証券マンからプロデューサーに転職、クレフ、ヴァーヴ、パブロレーベルと「皆が楽しく、寛げるジャズ」を追求した(と、私は思っている)プロデューサー、ノーマン・グランツによるJAZZ AT THE PHILHARMONICのレコード。私が手に入れたのは1950年代のベスト3枚もの。
写真のデイヴィッド・ストーン・マーティンのジャケットはグッときますね、この絵がクレフ、ヴァーヴ・レコードのシンボルマークでもあり、手にしてニヤリ(^^)。
内容は当時の一流プレイヤー達のジャムセッション(コンサート)。
日本盤なので大判の解説まで付いていて誰のソロなのかも分かって勉強になります(^^)
大人数のジャムセッションと聴くと元気いっぱい、一本調子に延々続くイメージがあり、なんとなく聴きそびれて長らく棚の肥やしになっていましたが、いざこうして聴いてみると50年代のものは録音も良く、同じ楽器が延々張り合うようなこともなく、一人一曲のバラードメドレーなど、各メンバーの音色、アドリブが活かされる趣向となっています。
1枚目、MV9058 Aの2、「時さえ忘れて」のレスター・ヤング(ts)、「オール・オブ・ミー」のフリップ・フィリップス(ts)、「テンダリー」のイリノイ・ジャケー(ts)、大御所それぞれが個性丸出しに有名なバラードを歌い上げます。中でもレスター・ヤングの音は踏ん張る感じがなく、体が地面から離れていくような浮遊感が独特。他、ディジー・ガレスピー、ロイ・エルドリッジのトランペット「言い出しかねて」「マイ・オールド・フレイム」、と、滋味豊かな演奏をいろいろ聴けて得した気分。
人の個性を活かすには競争ではなく、しっかり「場」を与えることだな、と。
次は2枚目、MV9059のA面、オスカー・ピーターソン(p)、バーニー・ケッセル(g)、レイ・ブラウン(b)のトリオ。「スイート・ジョージア・ブラウン」「チーク・トゥ・チーク」「C・ジャム・ブルース」と有名曲をピアノは転がるように、ギターはこねくり回すように、ベースは職人っぽく、一人ひとりがお互いの音を聴き、必要とされる音を載せ、螺旋状にグルグルと高みへ登っていくような。音の一粒一粒が気持ち良い!
3枚目、MV9060のAはレスター・ヤングの浮遊感のあるテナーがまた炸裂。十八番の「レスター・リープス・イン」が別名で演奏されます。この人のテナーにはスケベな感じがない。印象は青い炎。スタン・ゲッツとレスターは似てるなぁ、と聴きながらあらためて思いました。
4曲目からはクラリネットのバディ・デフランコ。
一気にベニー・グッドマンのビッグ・バンドのような演奏になって戸惑います。お馴染みの「イージー・リビング」「アイ・リメンバー・エイプリル」「枯葉」、知ってるだけに楽しいけれど、あまりに流麗、明確過ぎて深みや謎がありません(T_T)
そして最後はライオネル・ハンプトンの木琴も入り、皆でガンガン鳴らしまくる、J.A.T.Pらしいジャムで幕を閉じます。
ここにあるのは聴き流すBGMのようなジャズではありません。
ちゃんと向き合うことを要求されますし、音の一つ一つにプレイヤー達が込めた思いがあるように感じました。
明るさと寛ぎに満ちた演奏、あなたを優しく包み、温かな気持ちにしてくれると思いますよ(^^)