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PTAのあり方問う·各地での保護者たちの動き


かわすみかずみ


  全国でPTAへの批判が相次ぐ。強制加入や役員強制、不透明な徴収金会計など、保護者の不満が噴出している。ひとり親家庭の増加や子どもの減少もあり、加入世帯も減っていることも理由のひとつだ。近畿の各地でのPTAについて聞いた。

   大阪府高槻市内の小学校に2人の子どもを通わせるAさん(40代)は、2022年5月に突然「学級委員に決まりました」と手紙を受け取り、会議に参加するよう求められた。おかしいと思いながらも会議に参加し、PTA会長からの役割の説明の中で「学級委員長は(役員が提案する)議案に手を挙げるお仕事」と告げられた。
    “手を挙げるだけのお仕事”とはどんなものかと学級委員長をやってみることにしたが、学校へのテント寄付に際しPTAが寄付採納手続きをしておらず、地方財政法違反があった。PTAからの強要が多く、コロナ禍に保護者だけの親睦会の強要や会議の締め出しなどの嫌がらせにも遭った。
  また学校長自らPTA規約変更の提案を行い、要配慮個人情報をPTAに集めさせようとしていたことを知り、Aさんは不信感を募らせた。
2023年2月にPTAに対し退会届と個人情報利用停止請求書を提出し、提供した個人情報を削除するよう求めた。
   Aさんはこの頃から本やSNSでPTAについて情報を集め、公文書開示請求で学校がPTAに提供した名簿と個人情報取扱同意書、学校に配布された個人情報取扱に関する規定を取り寄せた。学校やPTAとやり取りを行うなか、学校がお便りに「児童の情報をPTAに渡します。ご意見などあれば4月上旬までにお知らせください」と記載していることを知った。このような方法は「オプトアウト」と呼ばれ、情報を提供される側の意志確認が不鮮明なことが多く、違法行為である。

   AさんのSNSを見つけた学校がPTA会長に報告。投稿が名誉棄損にあたるとして2023年3月末で引退したはずのPTA会長が削除したはずの個人情報を盗用し、Aさんを提訴した。
   第1回口頭弁論が始まり、数度の口頭弁論ののち、自身の“個人情報の盗用”に気づいた原告側から“和解してほしい”と申し出があり12月に和解に応じた。
Aさんは学校長からのオプトアウトによる児童の情報の提供は違法として23年12月に刑事告発に踏み切り、学校長は書類送検されたが、大阪地裁は嫌疑不十分という理由で不起訴にした。市議会でも議員が追及したが、教育委員会はまともに答えることはなかった。

   口頭弁論が始まった同時期、PTAの指名委員マニュアルがX上に投稿され、強制的に次年度役員の説得に行かされていた問題が発覚し、メディアを騒がせた。
   筆者は高槻市PTA協議会へ指名委員訪問マニュアルについて問い合わせを試みたが「メンテナンス中」としてホームページが公開されておらず、連絡が取れなかった。また、同教育委員会は指名委員訪問マニュアルについての質問に回答はなく、学校長の刑事告発についても把握していないと繰り返すばかりだった。

   高槻市在住のBさんは「指名委員」の経験者だ。指名委員とは、次年度の役員候補の家に訪ねていき、役員になってもらうよう説得する係のことだ。
Bさんは、指名委員の学習会に参加させられ、そこでマニュアルを渡されたという。マニュアルには、「最初は指名委員とは言わず、渡すものがあるので開けてもらえませんか?と言う」などと書かれていた。その後、年配の会員がロールプレイで実践して見せたとBさんは証言する。
  実際に訪問するのは夜が多く、子どもを連れて訪問したこともあったそうだ。1日2軒を手分けして訪問し、それでも決まらない年もあったようだ。

PTAのおかしさを変えたい

滋賀県大津市在住の井上哲也さん(60)は、子どもが1年生のとき学年委員に立候補した。学年委員とは、同学年の保護者の代表として役員会の内容の伝達を行ったり、学年からの意見を会に伝えるものだ。井上さんは「中からPTAを変えよう」と思い、副会長やPTA連合会の理事も引き受け、おかしいと思うことをどんどん発信していった。
当初何十人もいた役員を10人程度まで減らし、必要な時はボランティアをお願いすることで、保護者の負担を減らした。
現在、大津市ではPTA運営に関する手引きが制定され、各学校長に共有されている。これは井上さんが市教委に情報提供し、担当者と粘り強く協議を重ねてできたものだ。
これまで「任意加入」と言いながら入会届も説明もなく加入させられてきたことを反省し、入会届を配布し、しっかりと説明を行うことを盛り込んだ手引きは、全国的な模範とも言える。
だが、改革の途中では、登校班を編成する他校で児童が排除されるなどの事態も危惧された。
それでも「できない人、本当に困った人に配慮のないPTAを変えたい」という思いは変わらなかった。PTAが引き金となって自殺した保護者も出た地域もあったと、井上さんは語る。

日本PTA協議会と内閣府の旧時代体質

日本PTA全国協議会(以下日P)は、各学校のPTA会員から会費を徴収し、国の教育関連事業などを行う「公益社団法人」だ。国の事業を行う際は補助金が入る代わりに、収支報告書や予算書などを提出する義務がある。だが、「公益法人infometion」を検索しても同団体の報告書はでてこない。
これに関連し、金田淳前会長は5000万円に及ぶ赤字、共済金や積立金の不透明な運用などを明らかにし、改革に取り組もうとした矢先にパワハラがあったという理由で解任された。現在のPTA会長後藤豊郎氏は改革について取り組んでいる様子はない。現在も東京都赤坂の一等地に事務所を構える同事務所に違和感を覚える保護者は多い。
今年3月の埼玉新聞では、日Pの問題がきっかけとなり、県内では西部を中心に脱退が相次いでいるという。県内の会員組織率は13.7%まで落ち込んでいる。さいたま市では元市PTA協議会役員が、管理する現金を横領し逮捕されている。東京都小学校PTAも昨年、所属する約190校がすべて日Pから退会した。

内閣府は毎年、優良PTA表彰を行っている。文部科学省のホームページには、優良表彰された各地の学校の様子が載せられる。
滋賀県立河瀬中学校·河瀬高校PTAは全校生徒923人で加入率100%だという。「1人一役」を合言葉に活動する。校外の地域行事などにも参加。
「生き生き」と活動する様子が写っている。
だが、多くの学校では役員決めで揉めたり、できない保護者を非難するようなところもある。


各地でのPTA改革


西宮市在住のCさんは、4人の子どもを通わせていた小学校のPTAがきっかけで、市教委にPTAが適正に運営されるよう働きかけを行った。当初は妻が役員をするPTAと学校に働きかけを行っていたが、まともに議論にならず市教委に働きかけをする事となった。学校から市教委まで、何度も足を運び、情報公開を行い、質問を重ねた。従来西宮市では、学校が本人又は保護者の同意なく児童•生徒名簿をPTAに渡している学校もあった。これを元にPTAはPTA登録カードを出さない保護者に名指しで提出させるという事も行われていた。
西宮市教育委員会も「PTA運営ハンドブック」を作成し、市教委のホームページに掲載し、適正化に向かっていると聞いている。
Cさんらは、PTAのあり方について、行政に教育環境の改善を求められる組織になってほしいという。また、PTAの加入届や退会届の整備、説明責任について徹底するよう求めている。九州などでもPTA協議会や学校を訴える保護者がでてきており、少しづつではあるが、不透明な会計や強制加入の実態が明るみに出てきている。
多様な家族の形を認め、学校やPTAとの関わり方を押し付けないPTAのあり方が問われている。

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