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【記者日記】兵庫県芦屋市·潮芦屋地区で高齢者置き去りの開発が進む

                                                 かわすみかずみ

 

兵庫県芦屋市の潮芦屋地区は、六甲川が海に注ぐ扇状地だ。古代から気候が温暖で豊かな漁場があったこの⼟地は、富裕層の別荘地として栄えてきた。明治以後は、阪神、JRなどとの鉄道敷設もあり、

⼯業化による⼤気汚染を逃れたい豪商が住み着いた。

この地で花開いたのが「阪神間モダニズム」。⼤阪の豪商の⽂化と神⼾の舶来⽂化が結びついた新しい⽂化だった。

1951年には国が「芦屋国際⽂化住宅都市建設法」を施⾏。⼀帯は⼯場のない都市として保護されることとなった。現在もこの法律により、商業地区の限定や景観保存に厳しい規制があるこの地区で、

今、開発が進められようとしている。


潮芦屋プラン


潮芦屋プランは1999年に施⾏された「まちづくり基本条例」の発展形で、2013年に改定された。コンセプトは「⽣活者の視点に⽴った多世代循環型の交流とにぎわいのあるまちづくり」。
このコンセプトに沿って、誰もが利⽤できる公共空間づくりや必要なものが⾝近にある歩いて暮らせるまちづくりなどが提案されている。

潮芦屋地区は埋⽴地で、28年前、阪神淡路⼤震災の後にできた復興住宅があり、近くには特別⽀援学校もある。復興住宅に住む⼈々は⾼齢者が多く、外出や買い物もままならない状況だ。付近にはセブンイレブンが1軒しかなく、買い物ができない。住⺠のためにセブンイレブンはこれまで、野菜の販売や居場所作り、安否確認など、住⺠サービスを積極的に⾏ってきた。だが、潮芦屋プランによって、そのサービスは断ち切られようとしている。

企業庁によれば、コンペを⾏い、セブンイレブンの後にファミリーマートができる予定だ。このコンペには、セブンイレブンも「コンビニエンス合同会社」として参加したが、落札できなかった。このコンペはプロポーザル⽅式で⾏われ、審査基準も落札者以外の情報も開⽰されていない。

そもそも公募には「住⺠への貢献を⾏うこと」が明記されているにも関わらず、実績のある企業を落札させなかった理由は明⽰されない。また、これらのコンペの審査委員は、企業庁の次⻑、芦屋市職員など⾝内ばかりだ。潮芦屋プランの分譲地売却が中⼼的に⾏われた2019年〜21年は、企業庁のトップに⽚⼭安孝⽒がいた。⽚⼭⽒は前兵庫県副知事で、現在兵庫県知事問題の渦中にいる⼈物。

住⺠は芦屋市や兵庫県庁に要望書を提出したり、意⾒を⾔いにいったが、説明会も1回も開かれず、話も聞いてもらえていない。

芦屋市⻑の⾼島崚輔(りょうすけ)⽒は、ユーチューブなどに出演し、「対話型リーダー」ともてはやされた。最年少市⻑であり、対話や丁寧な説明による課題解決を信条とする。だが、住⺠らは、⼀度も話し合いに来なかったという。


住⺠の思い


住⺠らは⼗分な説明もないままにサービスを切り捨てていった⾏政のあり⽅に憤る。

これまで無料で使えていた⾜湯は、今は閉鎖されたままになっている。付近に駐⾞場がなくて困っていた住⺠らに、駐⾞場を提供してくれていた施設も、経営者が変わり今は使えない。復興住宅に住む⾼齢者は、セブンイレブンがなくなれば、年⾦をおろせない。これについて企業庁に問うと「北側にある郵便局まで⾏ってもらうしかないですね」と答えた。そこまで⾏けない⾼齢者が多いから困っている、と筆者が返すと、「お声があることは知っています」という。「知っていて放置していたんですか?」と聞くと「それに関してはお答えできません」と逃げた。住⺠らは⾼齢で、抗議運動もままならない状況だ。⾼島市⻑は若者⽀援を盛んにいうが、⾼齢者は切り捨て。兵庫県企業庁は、企業の⽅だけを向き、「住⺠の視点に⽴った」まちづくりなどしていない。

斎藤知事の「信頼を取り戻す姿勢」は本物なのか?⾼島市⻑の「対話型リーダー」は果たして誰と対話しているのか?疑問でしかない。

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