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【記者日記】阪神オリックス優勝パレード ·収支報告を検証する


                                              かわすみかずみ

  2023年11月23日に行われた阪神オリックス優勝パレードの収支報告書が、兵庫県、大阪府のホームページで公表されている。どちらも全く同じ内容のものだ。これは兵庫県、大阪府の両方を合わせた金額を公表したもので、各都道府県の収支は公表されていない。本来各都道府県のホームページには、各都道府県の収支が載るはずだが、なぜ載らなかったのか?その疑問を元に、筆者は大阪府、兵庫県にそれぞれの収支を問い合わせた。


  収支が合っていない


  府県に対する情報公開請求では、運営について電通ライブ関西に2億8千万円余りで業務委託していたことが分かった。府県で全く同じ内容、同じ金額で委託していた。府県のホームページに載っていた収支報告書の内訳は、電通ライブに業務委託していた内容と同じだったが、合計金額が違っている。また、府県それぞれから得た電通ライブとの契約書は、各内訳の金額が黒塗りになっていた。普通に考えれば2億8千万円を2倍にした5億6千万円余りとなるはずだが、ホームページの報告書は6億4千万円余り。8千万円の誤差は何か。さらに府県に聞いた。

  兵庫県は、クラウドファンディングの返礼品を府県の分送ったため、返礼品の購入費や発送費がかかったと答えている。また、スタッフ用のジャンパー、帽子を買ったという。これについては報告書の内訳の金額に入れ込んでいるという。兵庫県の支出項目の中で、返礼品購入費だけが黒塗りされていた。さらには支出の全額が書かれていない状態だった。県は、帽子とジャンパーの購入費については警備関係費に、返礼品についてはパレード運行関係費に入れたと証言した。

  大阪府府民文化部に問い合わせたところ、スタッフ用のジャンパー、帽子を買ったことや、クラウドファンディングの手数料を払ったと回答した。これらについては、収支報告書のパレード運行関係費に入れたという。また、ホームぺージの製作を外部に発注したという。

  クラウドファンディングの手数料については非公開だった。公開すると企業間の競争において不利益を被る可能性があるからだと、府民文化部は答えている。だが、クラウドファンディングを行ったREADY  FORはホームページ等で各プランにおける手数料を公開しており、競争における不利益を被ることがあるとは思えない。READY  FORは「調達金額が目標に達しなかった場合は手数料を取らない」とも公表しており、府県が手数料を払っていない可能性すらある。クラウドファンディングの目標金額は5億円だが、1億円余りしか集まらなかったからだ。この他、府はスタッフジャンパーや帽子の購入費も非公開としている。また、ホームぺージの製作費については、府民文化部は契約書もみていないし、金額も分からないという。府民文化部は実行委員会の会議には参加していない。実行委員会からきた書類を保存していただけだった、と担当者はいう。ではホームぺージ製作の発注先を公表できなかったのはなぜなのか?
  府民からは兵庫県の問題に絡んで苦情や質問が相次いでいるという。担当者はかなり疲弊しており、「兵庫県と大阪府の各事務局はそれぞれ単独で動いていました。でも府民からは一緒に見られているんですね」と表情を曇らせた。

  筆者はオリックスブルーウェーブス、阪神タイガースの公式ショップから、できるだけ似たものを探し、クラウドファンディングのページから返礼品の数を探して、正規の値段で購入したと仮定して費用を計算した。また、READY  FORで、1番手数料が高い「フルサポートプラン」で手数料を計算し、費用を出して足したところ、6億3千万円余りだった(大阪府のスタッフジャンパーや帽子の購入費は兵庫県の2倍として計算)。つまり800万円余り多く報告書に計上されている可能性がある。筆者は最大限費用がかかったと仮定して計算したが、クラウドファンディングの手数料が必要なかったり、返礼品を安く買えていたら、もっと使途不明金が多くなっていると思われる。非公開とされているホームページ制作の委託費を仮に50万円としても、750万円余りが使途不明だ。


   清算人と監査の不透明さ


府民文化部は、パレード実行委員会の清算を府民文化部の次長が担ったと言っている。府民文化部によれば、清算人は実行委員会規約の17条にある「その他」の項目で「この規約に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、必要に応じ、委員会の会議において別途協議する」と書かれているので、会議で決めたと答えた。府民文化部への聞き取りでは、次長は印鑑を押しただけで中身の確認はほとんどしていないという。その後の振り込み等を課の職員が行ったとのこと。

  2024年 3月26日に行われた会議(書面のみ)で府民文化部の次長が清算を行うことに決まっているが、1週間前の3月19日、実行委員会の収支についての監査の報告書が提出された。監査報告書はチェック項目が4項目あるだけで、金額は示されていない。府民文化部の次長は会計上の金額などは一切みていないという。

大阪府府民文化部から、情報公開請求によって公開された監査報告書。府民文化部は実際の収支をみていないことが分かった。

  監事は大阪商工会議所と神戸商工会議所だ。両商工会議所はこの実行委員会の構成員であり、万博協会の役員でもある。法的には任意団体の監事についての取り決めはないようだが、府のホームページに公表する以上、外部監査が必要だったのではないか?監事として両商工会議所は適任だったのか?また、両商工会議所が監査した収支報告書で750万円余りの使途不明が出ている理由は何か?使途不明金はどこへ消えたのか?両商工会議所、大阪府、兵庫県は説明責任がある。


 


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