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【記者日記】 3度目の都構想は万博失敗を隠すアドバルーン
かわすみかずみ
開幕まで100日を切った大阪·関西万博は、海外パビリオンの建設の遅れやチケット販売数の伸び悩みが不安要素だ。また、ここにきて参加国のうち12カ国が撤退。経済界の負担分を、過去の万博基金を取り崩すことで充てるなど、赤字は必至の状況だ。
これらの問題の中で最も重要で命に関わる問題のひとつである「万博子ども無料招待事業」では、大阪府内でも不参加が相次いでいる。熊取町では同教育委員会が、町として不参加を決めた。東大阪市、茨木市では学校単位で不参加を決める学校が出てきた。2024年7月10日の産経新聞によれば、府内の全小中学校、支援学校1900校あまりに意向調査した結果、参加希望は1526校、未定·検討中が275校、不参加40校だった。
4月から5月に実施された意向調査には「不参加」の項目がなく、検討中とした学校には後程連絡するなどと書かれていたため非難が集中した。その後、府教育委員会が再調査したものが、上記の内容となった。
夢洲カジノをとめる大阪府民の会の調査では、府下の複数の市町村で、万博遠足に参加する学校に対し、万博遠足のみ補助金を支給する動きがあるという。この動きは万博の入場者数を増やすための学校への働きかけであることは明らかだ。
夢洲1区は、元々産業廃棄物の最終処分場であり、立ち入り禁止区域だったが、万博では子どもたちの休憩場所やバスの発着所となる。この区域の中でも特に東トイレ付近はアンモニアや硫化水素が基準値を超えて噴出する日が続き、危険が伴う。
学校側は万博についての情報が入りにくく、下見も充分にできないことから、参加に二の足を踏む学校も増えてきている。
これらの状況を、1月15日の定例会見で知事に質問した。万博子ども招待事業の不参加校が広がっている理由について聞いたところ、「学校や市町村が決めるもので、府が関与するものではない」と回答した。また万博遠足のみ補助金を出す動きについては「府として把握していない。市町村が決めることなので」と回答を避けた。
大阪市は2025年度から10年は赤字になることが確定している。万博の費用がかさみ、市政を圧迫したことも一因だ。万博の閉幕までにさらに費用がかかることは確実で、閉幕後は、赤字をどこが背負うかを、国、経済界、大阪府市がなすりつけ合う泥試合が起こることは必至だ。
大阪維新の会は支持率の下落を防ぐことや万博終了後に同会の注目度が下がらないよう、3度目の都構想を打ち出した。2015年、2020年と2度否決された都構想。2度目が否決されたとき、吉村知事は「もう都構想をやることはない」と会見で発言していたが、その後すぐに「広域一元化条例」を制定し、実質的な都構想への布石を打った。
2024年12月17日のMBSニュースでは、大阪維新の会が「都構想検討チームを発足させた」と報道した。半年から1年かけて検討するとしたが、この中で吉村知事は「3度目の都構想をやるというわけではない」と発言した。この発言を信じることができるかは、大阪府民なら判断できるだろう。3度目の都構想というアドバルーンが見せる未来は、大阪維新の会の「儲ける行政」の成れの果てである大阪の破壊だけだ。2重行政を解消すると言いながら3重にも4重にも手続きを煩雑にした維新行政こそ、府民にとって最も手間のかかるお荷物だと言えよう。