【記者日記】永野耕平岸和田市長に見る「有害な男らしさ」
かわすみかずみ
岸和田市長の永野耕平氏が行ったとされる性加害問題が話題となっている。この問題は裁判に発展し、先月和解した。永野市長側が和解金500万円を支払うことや謝罪することが条件だという。だが、永野市長は一貫して「自分に非はない」「合意していた」と主張してきた。
MBS放送の内容が大変分かりやすかったので、これを元に時系列をまとめてみる。
永野市長と被害女性は2019年に出会っている。同年6月頃から2021年1月頃まで、被害女性は市長から性的関係を強要されたという。女性は当時、婚約者がいたが、これをきっかけに「自分が穢れた気がして距離を置いた」と言っている。性加害の内容はジャーナリストの小川たまか氏の記事に詳細に書かれている。嫌がる女性の顔に布のようなものをかぶせ、3人くらいの男性が行為に及んだとされる。2021年7月に女性は警察に被害届を出すが、不起訴とされ、民事訴訟を行う。
MBSの報道の中で、松田まき弁護士は、「裁判上、500万円というのは、加害を認める状況での金額とみていい」と述べ、事実上女性側の主張が認められたものと考えられるとした。また、裁判の中で永野市長側が「上下関係はなかった」と主張するも、裁判所は「上下関係はなかったとは言えない」と、永野市長の主張を認めていない。これらの状況から永野市長側の事実上の敗訴と言える。
市議会でも追及がなされたようだが、市長は一貫して否認。傍聴者によれば、大阪維新の会所属の議員は質問もせず黙っていたという。
維新の会では、「除名処分になった場合は首長などの役職を辞任する」という誓約書を書かされるようで、この点について聞かれた市長は、「除名処分なら辞職する」と語っている。
だが、大阪維新の会の新代表である吉村洋文氏は、「説明不十分」として離党勧告に留めた。その後、永野市長は「さらなる説明を尽くしたい」と述べ、女性側に開示できる情報を聞いてみると記者団に伝えた。MBSの報道では、女性側の弁護士が「そもそも秘匿条項はない。話してはいけないとも言っていない。きちんと説明を尽くしてほしい」と述べている。永野市長が勝手に自分を守るために作り出した架空のストーリーがひとり歩きしている。
永野市長の実家は、岸和田市内で養護施設や児童支援センターなどを経営する有名な一族だ。だが、転職サイトなどで、これらの施設に勤務経験がある人の声を拾うと「一族経営で一方的な命令が多い」という書き込みが目立った。
離党勧告にすれば辞職せずに済む上、何年か後に再選挙があってもみんなが性加害問題を忘れ、一族の地盤で再選できると考えているのではないか、と穿った見方をする人々もいる。
大阪維新の会は、大阪府内の首長選挙を連続で落としていることもあり、なんとか辞めさせない方法をひねり出したと言えなくもない。
だが、斎藤知事問題は長く尾を引き、万博は失敗確実だ。この問題にどう向き合うかは、維新の会という、男性優位に進められてきた集団のあり方でもある。これまでも同じようなことが繰り返されてきた維新の会。このまま永野市長が逃げ切るのであれば、維新の会に「身を切る改革」などありえないという証左となる。今後の永野市長の同行を注視していく必要がある。