【毎週ショートショートnote】 秘密警察を宣伝してみる
「お久しぶりです。お二人とも」
次に泊まる旅行中の家めざして歩いているさなか、見覚えのある人に声をかけられた。
相棒は、あきれ顔だ。
「また、あんたですか…」
「ふふ、いいじゃないですか。私はお二人に適正があるから、声をかけているんです」
この人は、秘密警察に務める人事部なのだそうだ。
「犯罪組織からヘッドハンティングって、普通、しないと思いますけど」
「だからですよ。優秀な人材であれば、どこからでも引き抜きます。金持ちでも、犯罪者でもね」
俺の疑問に、ちゃんと答えてくれる。
この人は、本気なのだろう。
「どうして金持ちと犯罪者なんだ?」
「金持ちは、学ぶ環境がととのってますからね。頭脳が明晰である方がほしいのです。逆に、犯罪者は、人にない経験をお持ちで、大胆さと繊細さをかねそなえている。鼻がきく、本能的な方がほしいのですよ」
「くだらねえ」
「あなたたちには、才能がある。私はそれを見過ごせません」
そんな、くだらない才能は、いらない。