【毎週ショートショートnote】 逆光のみクジラ
「御神体が、すごいですのよ!」
「へえ…これ、なんの神様ですか?」
「わたくしの先祖ですわ!」
「まさかの!」
いや、高嶺さんなら、ありえる。
すごくお金持ちのご令嬢だし。
この神社は、高嶺さんの祖先がお世話になったって言ってたけど…。
そもそも、先祖が建てたのでは?
「この御神体のすごさは、これだけではなくってよ」
高嶺さんは、ごそごそと、コートのポケットから丸いボタンがついた四角い器械を取り出して押す。
「スイッチ・オン!」
「うわっ、まぶしっ!」
御神体のうしろをまばゆい光が照らす。
あれ? これ、なんか…?
「クジラ?」
「そうなの! この御神体は、後ろから光をあてると、逆光で暗くなったシルエットがクジラになりますのよ!」
「へえ…そうなんだ」
「これに、はじめて気づいたのは、わたくしですわ」
「へえー…。すごいね!?」
「もっと、褒めてもらっても、かまわなくってよ」
高嶺さんの顔は、逆光で見えなかったけど、とくいそうに笑ってたんだろうな。