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幻影を突破しろッ

さぁ洗濯物が乾きにくくなってきた。

天気が良くてもカラっとは乾かない。

夏のあの太陽が懐かしい。
ジリジリと水分を焦がして蒸発させて欲しい。

お日様の匂いを僕へ届けてくれ。


無常にもオータムにウインターと外干し派には辛く長い季節が到来する。

しかし人類はそんなオータム達と対等に戦う術を手に入れた。

そう「乾燥機」だ。

低温だろうが湿気だろうが台風がこようとも洗濯物を乾かす事ができる。


人類は勝利した。


そして我が家の洗濯機には乾燥機がついている。

ありがとう人類の叡智。

ありがたく使わせてもらうよ。


とはいかないのよ。


人間とは愚かな生き物だ。

必須ではない事には躊躇してしまう。

洗濯をする事は必須だ。

だから洗濯機は回す。

どれだけ水と電気を使用しようともだ。

今更 洗濯板なんてやってやってられるかってんだ。


だがしかし。


乾燥というのは干せば出来てしまう。

手間を惜しまなければ カラッと具合に目を瞑ればできてしまう。

乾燥機を使うというのは必須事項ではない。

必須事項ではないことに電力を消費することは贅沢であり怠慢である。

そう刷り込まれて育ってきた。


やれ
使っていない電気は消しなさい。


やれ
使っていない水は止めなさい。


やれ
無駄にティッシュを使うんじゃない。


やれ
見てないならテレビを消しなさい。


全ては「もったいないじゃないの」に帰結する。


こうナンドモ刷り込まれ育ってきた僕は

「贅沢は悪。省エネは善」

心と身体たましいに刻み込んだ。


だからカラッと乾かしたいという身勝手な理由で家計を圧迫する電力を使う事に躊躇してしまう。

そこには乾燥機があるのに使えない。

使っちゃダメと誰にも言われていないのに使えない。


これは僕自身が作りだした幻影。


この幻影を突破する方法はただひとつ。

乾燥機を使うこと。

簡単かことだろ?

負けるな僕。

洗濯物を洗濯機から取り出すな。

そのまま乾燥モードへ移行しろ。



くッ!
指が震えて押せない…。



騙されるな。
その罪悪感は嘘なんだ 幻影なんだよ。


いけ。


おせ。


そうだ いい子だ。


自分の殻を破れ。


こうして僕は天気の良い日に乾燥機を使うのであった。

なーに。

妻が返ってくる前にすべてたたんで タンスへ戻せばわかりゃしないさ。



え?

「よく乾いたね」と言われたらどうするって?

そりゃゲームオーバーだね。

言い訳のしようはない。

「かかかかかか、乾燥機を使いました」

と白状するしかあるまいて。


しかし僕は怒られてもいい。


それよりも自分の殻を 幻影を打ち破る方が大切だから。

フフフ。

決まった。

さすが幻覚を打ち破った僕の放つひとことはカッコいい。



さぁあなたは自分の殻を破ってカッコよさを身に着けよう。

新たな高みはすぐそこだ。



え?

元が低いからあまり変わってないって?

フン。

僕が纏う殻はまだまだある。

それらすべて脱ぎ去った時。

僕はどうなってしまうのか。

今後のエッセイを見逃すなッ!






次回予告(ウソ)

「幻影の中の現実で幻影を突破してもまだ幻影の中」

の巻き。

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