毛髪量マイノリティ
ねぇ
どこいくの?
突然「抜ける」なんて
聞いてない
何がいやだったの?
相談もなく「抜ける」なんて
それで独立したつもり?
でもあなたの行き着く先は地べた
いちどでも「抜ける」と二度と帰れないんだよ
わかってる?
もう金輪際「抜ける」ってことでいいの?
もうコンティニューはしないってこと?
もうコンサルタントしないからね
もうこんな思いしたくない
もう今夜から「抜ける」んだね
もう根底から覆さないでよ
毛根のバカ
いやぁ最近抜けるよね。
前髪が。
うん。
気にしすぎだとは思うよ。
ちょっと多いかな?ぐらいだよ?
べべべべ別に焦ってはないけれど
でも抜け具合なんて僕が一番よくわかっているんだから。
誰がなんと言おうと抜けている。
気がする。
毛根仕事しろ 根性みせろ。
とにかく事前申告なしに勝手に頭部から脱退することは認めません。
今 抜けようと画策している毛髪がいれば考えなおしなさい。
まったく。
これは社会の縮図か。
ブラック企業「毛穴」で働く「毛根」の物語。
あんなにドッシリとした「毛根」だったのに。
職場環境が悪いとこうも抜けるのか。
毛根は僕に見切りをつけて別れを告げる。
いや。
僕は信じない。
毛根はそんな薄情なやつじゃない。
きっと抜けたくて抜けているわけじゃないんだ。
そうだろ?毛根。
僕には君が必要なんだ。
君はあまり意識したことはないだろうけれど
薄毛は社会的に立場が弱いんだ。
見知らぬ小学生にクスクスと笑われるなんて嫌だよ。
だから僕を見捨てないで。
抜けるなんて言わず僕と共に歩もう。
え?
ダメ?
そんな。
もう僕たちやりなせないのか。
ほんならしゃーないね。
プランBに変更だ。
もう君たち毛根には執着しない。
見事に薄毛を個性に昇華させてみせる。
そうブルース・ウィルスをみろよ。
僕は薄毛でもダンディで粋なオジサマになってみせる。
後で僕の毛穴に帰りたいと訴えてもダメだからね。
地べたで後悔するがいい!
さぁしかしまいった。
日本ではまだまだ薄毛に対する風当たりは強い。
どれだけ凄い事を成し遂げても
どれだけ名言を残そうとも
どれだけユーモアに富んだエッセイを書いても
みんなは心の中でこうつぶやく
「ハゲなのに 笑」
と。
耐えられない。
性的マイノリティはなんとなく世間に受け入れて来ている感じがする。
次は毛髪量マイノリティの番だ。
集え!
毛髪量マイノリティ諸君。
「薄毛にも人権を」
と書かれたプラカードを持って大阪城公園に集合だ。
社会に一石を投じよう。
その波紋は小さくても徐々に大きくなる。
最終的には「毛髪量の多いやつはまだまだおこちゃま」というところまでいこう。
薄毛こそ大人のシンボルであり成熟した証である。
そう認知されるその日まで
毛根さんもう少し我慢してください。
お願いします。
病院とか行きたくないんです。
きっとドラマとかも主人公はみんな薄毛になりますから。
サムライヘアがまた流行るから。
ブームは繰り返すというし。
ちょんまげにして誤魔化すのもありだよね。
とまぁ薄毛の側から話をしているが 僕はまだまだ自分を薄毛と認めたわけじゃない。
ハゲと直接的な物言いを避けて薄毛と言っているのが何よりの証拠だ。
さぁ将来の自分の為に マイノリティの壁を叩き壊すぞ。
同志よ立ち上がれ。
毛根狩りだ!
ではまた。
臨時ニュースです。
昨夜遅く 道を歩いていると「毛根狩りじゃ」と叫びながら頭髪を引っ張る という事件がありました。
容疑者はその場ですぐに取り押さえられ身柄は警察に拘束されているとのこと。
警察の発表では容疑者は「毛髪量マイノリティが」と意味不明な事を言っており……。
次回予告(ウソ)
「毛根にもサステナブルを」
の巻き。