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網戸から雨を見破る方法

雨が降りそうで降らない。
忌々しい曇り空だ。

洗濯物を外に干しているから 雨が降ったらすぐに取り込む必要がある。

しかし僕はなるべくイスから動きたくない。

何度も確認する為に立ち上がるのはなんだか負けた気分になる。

幸い僕の座っている位置から外は見える。

窓があるのだ。

あるのだが外が見える範囲には網戸が付いている。

そう 一見して雨が降っているのかどうか判別できないのだ。

豪雨ならあるいはわかるかもしれない。

でも小雨ならそれを見極めるのは至難のわざ。

小雨でも脆弱な洗濯物たちは大ダメージを負ってしまう。

僕が守らなくては。


しかし、しかしだ。

僕はなるべく動きたくない。

なんとか この座っている位置から雨が降っているかどうか確認するすべを探すんだ。


人類の叡智を今ここに集結させる時。


まずは一番 現実的ではない ことから検討していこう。

消去法だ。


ではいく。

僕は神であり天候を操る力を持っている。
だから雨を降らさないようにすればいい。

うん。無理。



次。

僕は万物の声が聴ける人間だ。
雨の声を聞けばいい。雨雲でもいい。
雨が降ったら教えてねと言っておけばOK。

うん。無理。



次。

僕の右手は洗濯物を一瞬で乾かす事ができる魔法の右手。
だから雨に濡れても気にしない。

うん。なら初めから干すな。アホか。



次。

僕は稀代の発明王であり 反重力装置とジャイロ機能を搭載したイスを作り 座りながらにして窓まで移動できるようにする。

うん。無理。



次。

天体望遠鏡を準備し網戸の穴のその先を見通す。

うん。持ってないし多分見えないし その姿が恥ずかしい。



次。

視覚情報をシャットアウト目を瞑るして耳で雨音を聞く。

うん。窓は閉まっているし目を閉じたら執筆できない。



次。

雨をが降ったあの特有のにおいを察知する。

うん。窓は閉まっているし におう頃には洗濯物はある程度濡れている。



次。

天気アプリで逐一確認する。

うん。現実的かもしれないけれどかなり面倒くさい。



次。

いっそのこと洗濯物を取り込んでしまう。

うん。それは禁じ手。網戸越しになんとか雨の降り始めを感知したのだから。



次。

窓、網戸を解放し視覚聴覚嗅覚で小雨のすべてを感知する。

うん。どんどん現実的になってきた。でもホラー映画の悲鳴が外に聞こえて通報されるかもしれないという不安と闘う事になる。



次。

全てを放り出し 窓際で読書をしつつ網戸越しに雨を監視する。

うん。気分は張り込み刑事って感じでいいね。



次。

濡れてもよいではないかと開き直る。

うん。時には諦めも肝心だと思う。でもきっと妻には怒られる。


などと創意工夫をしている間に洗濯物は乾き 雨は降らなかった。

そう無駄な時間を過ごしたということだ。

いや ありとあらゆる可能性を模索することには意義があるはず。

そうやって誕生した発明品や物語もあるだろう。

そうさ僕は網戸越しの雨を見極めるという行為を通じて 人生のスキルを高めていたに違いない。


ふむ。

実に有意義な午後のひと時であった。


これは余談だけど。

たぶん僕の気迫を網戸越しに察知した雨が降るのをやめたんだと思う。


あれ?

これって天候を操ったということになるのでは?


ちょっと自分が恐ろしくなってきたのでこのへんで。

ではまた。




次回予告(ウソ)

「ぜんけい 雨乞いしてくれー!とモテ期到来」

の巻き。

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