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息子の事

私の息子は、食べ物の好き嫌いが多い。どうでもいいことをしつこく何回でも話してくる。よく笑う。歯も抜ける。そして、ころんだ友達のために絆創膏を家まで取りに帰ってくる子だ。

今も成長中の息子が産まれたのは予定日ちょうどの日だった。可愛い。3000グラム以上あるのに、脚が鶏ガラみたいだった。男の子特有の骨っぽい感じだったのだろうか。あんまりぷくぷくしなくて心配した。きっと親はどんな些細な事でも心配してしまう生き物なのだろう。

赤ちゃんの頃からあまりまとまって寝てくれないので、私は慢性的な睡眠不足になっていた。1歳になっても夜中、泣いて何回も起きる。
息子と一緒に過ごしていて、言葉が遅く意思の疎通ができないことで本人も泣いて意思表示していると感じていた。

この現状をどうにかしたいと思った。家に子供といられる事は幸せだけど、苦しかった。息子のためにできる事を考えて、遊びや食事など試行錯誤していた。自分で自分を追い詰めていたのだ。あまり相談できる人はいなかった。

夫もいるが、ほぼ1人で子育てをしていた。私1人で息子を育てる事への限界を感じた。先輩お母さんに「保育園に行かせたらすごく成長したよ」という話を聞いた。そうか、働いてみよう。
すぐに役所に申請をした。あっという間に保育園が決まった。

小規模保育園で1クラスの人数はものすごく少ない。先生が多く、とても手厚かった。慣らし保育ということで、数時間から預け始める事になった。
別れる時の息子の泣き叫ぶ声に、大丈夫だろうかと心配になりつつ先生に託した。そうして息子が泣こうとも毎日連れて行った。生きのいい魚みたいに私の腕の中で暴れてビチビチしていた…。私の腕力はその時に発達したのかもしれない。

慣らし保育の途中で風邪をひいて熱をだして休んだ事もあった。そうこうするうちに1か月が経っていた。
問題が発生していた。先生に「水分を一口も摂らないんです。食事も食べません。このままだと預かれません」と言われた。

保育のプロにこう言われたら、どうしたら良いのだろう。息子はストライキを起こしていた。途方に暮れていた私に一筋の光が…。
園長先生が「お母さんがかわいそうだから、預かってあげましょう」と保育園の担任の先生経由でその話を聞いた。ありがたかった。

そうして、ストライキを起こしたままの息子だったが、それからすぐに、水分も摂取し、食事もとるようになった。あきらめた様だった。
私も久しぶりの仕事は大変なこともあったけれど、充実していた。

息子は保育園があまり好きではなかったようで、2年間ほとんど泣きながら通っていた。それでも、保育園で預かってもらい、私が働くことで、息子を可愛いと思えることを大切にしていた。そうやって心のバランスをとっていた。

息子にとってもマイナスなことばかりではなかったはずだ。私が見ていないところではきっと楽しんでいることもあったと思う。

途中から幼稚園に通い始めたのでそこからの成長は凄まじいものがあった。あんなに遅かった言葉が爆発した。そこから話を沢山する子になった。

最近息子に対して思うのは、人間になってきたなという事。
「目覚めてきた」という表現があっているのかは分からない。だけど、今まではぼんやりと人間じゃない何か別の生命体の命を守っているような気持ちで育てていた。

今、息子は夕飯の時に私の分のおかずがちゃんとあるのか心配してくれるし、息子が楽しいと思ったときに「ママも楽しかった?」と私が同じ気持ちでいるのか確認してくれる。ひとつひとつのやりとりは、その瞬間は覚えていてもすぐに忘れてしまう。

忘れてしまう事はないのかもしれないけれど、すぐには引き出せない引き出しにしまわれてしまう。
あれもこれも、全部大切なのに、どうしたらいいのだろう。困るよ。

あなたの生きることに不器用なお母さんは、あなたの事をとても愛しているよ。毎日大好きだよと言って抱きしめたり、頭の汗臭いにおいをかぐことも大好き。あなたが私の事を愛している事を知っているよ。あなたが時々私の事を心配していることも。

時にぶつかることもあるかもしれないけれど、悪い事じゃないよね。
これからもあなたが自分で決めたことは応援したい。どんな大人になるのだろうね。すぐに引き出せなくなってしまうから、ここに記すよ。

いつも学びをありがとう。一緒に成長させてくれてありがとう。






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