見出し画像

院内のviolenceについて〜見過ごされがちなキズ〜

ご訪問ありがとうございます。今回は精神科病院における暴力の問題について。内容的にもheavyになりますので、今現在調子がすぐれない方は、折角ですが読むのをお控えいただければと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

精神科病院と暴力の問題は、切っても切り離せない、古今東西抱える大きな問題と言えます。しかし世間一般の方々にまで実態はそこまで知られておらず、ある種ブラックボックス化しているようにも感じます。

精神科病院での暴力と聞いてどういったことが思い浮かびますでしょうか?

最近だと、看護師患者さんへの虐待がニュースで取り上げられ始めました。身体的虐待(暴力)の様子も映像付きで報じられるようになり、文字通り目を覆いたくなるようなショッキングな内容ばかりで、その行為には情状酌量の余地はありません

そういった看護師→患者さんへの暴力の他にも、患者さん同士患者さん→スタッフへの暴力、といった事も大きな問題です。

そういったことが日常茶飯事に起きている、あるいは脅威にさらされていることは少し考えてみれば想像がつく事かと思いますが、なぜかあまり議論されることはありません

どの暴力も、病院の対応としては警察へ通報します。ただその後の警察の対応が、スタッフが暴力をふるった場合と、患者さんが暴力をふるった場合とで変わってきます

前者の場合は暴行罪などで起訴されるなど、刑法による処罰の対象となり得ます。では患者さんが暴力をふるった場合にはどうなるのか?

結論としては相手に負わせた傷害の程度にもよりますが、大抵うやむやのうちに済まされてしまうのが現状です。通報を受けた警察が病棟内で当事者から事情聴取をして口頭注意で終わり、です。

理由はいくつかあるとは思うのですが、一つにはなんらかの精神症状により既に入院中の患者さんをわざわざ逮捕して警察署に勾留するのもどうかということ、

もう一つには責任能力ないか、あっても部分的、とみなされてしまい処罰の対象とならないからです。結果、口頭注意のみとなってしまうのです。

ここで私が最近気にかけているのは、暴力を受けた病院スタッフです。

例えば、後ろから突然殴られて怪我をした、というケース。治療費は労災からおりますが、では怪我が治ったらそれでよし、元通り復職できるのでしょうか?

専門職なのだから、そういったことは日常茶飯事で、耐性ができているのでしょうか?

もちろん答えは「NO」。暴力を受けたのが患者さんであっても私たちスタッフであっても、受けたキズには変わりありません

現にそうした患者さんからの暴力(暴言、カスハラ)を受け、仕事を辞めていく医療従事者を何人も目にしてきました。

その方たちがその後どうなったのかも、あまり話題にあがりません。心のキズを負い、職を失いきっと経済的にも困っていることでしょう。

私たち同僚や産業医によるアフターケアも行き届かぬまま、人知れず現場を去っていくのです。

ついつい見過ごされがちな身近な同僚の心のキズとそのケアの必要性、私のような立場からすると未然に防げなかったのか、とも自問してしまいます。

今回は現場からの問題提起でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!