ドイツで出会ったバイオリンの先生
僕はバイオリンを5歳から毎日練習している。ドイツに来る直前に習っていた先生と現地で新しい先生が見つかるまでオンラインレッスンをすることにした。当時(2019年)はバイオリンのレッスンをオンラインでやるなどほぼ皆無だった。実際やってみると、意外とうまくいった。先生はオンラインレッスンの可能性にワクワクしているようだった。
母がネットで探したミュンヘン音楽学院のディレクターとコンタクトを取ると、早速明日からバイオリンのマスタークラスが始まるので見学しに来ても良いですよ。ただし、この教師に習うには高いレベルが求められるので難しいだろうといわれた。次の日、家族でそのマスタークラスを見学しに向かった。少し緊張気味でレッスンルームに入ると、女の子がレッスンを受けていた。レッスンを聞いている僕に先生は君何歳?と話しかけてきて、イレブンと答えた。これがドイツに来て初めて話した英語で初めての先生との会話だった。
先生は女の子にバレエを習いなさい。でなければ、バイオリンなんか君は弾けないよと言った。そして”ダンス!ダンス!”と先生も踊り出した。女の子は恥ずかしそうに体を動かしていて僕は少し気の毒に思った。でも、女の子がバイオリンを弾いている時の体は固かったので、そのアドバイスは的を得ているなと思った。
その日は二人のレッスン見学して帰った。
4日間のマスタークラスの最終日は生徒たちによる演奏会があった。日本の音大生も遥々このマスタークラスのために日本から来ていた。
コンサート後、先生とどうにか話そうと思ったが、生徒たちと話すのに忙しそうだったので、諦めて、帰ることにした。
出口のところで、年配の女性が話しかけてきた。どこから来たのと聞かれたので、先週日本から来たばかりでバイオリンの先生を探してると答えた。私の息子がバイオリンを教えているから聞いてみようかと言ってくれた。今呼んでくるから待っててと言われ廊下で待っていたら連れてきたのがマスタークラスの先生だった。先生はついこの間日本でのマスタークラス旅行をして、日本をすごく気に入ったと言っていた。
僕が先生を探しているというと、いきなり弾いてごらんと言われた。僕は万が一のためにバイオリンを背負ってきていた。僕はドキドキ、手に汗かきながら廊下でブルッフのコンチェルトを弾いた。
先生は、すごくいいね!君はペペロニだね!(ピリと情熱的という意味かな)でも細かいことで直すことがたくさんあるから来週僕の家においでと連絡先をくれた。住所を調べると先生の家は僕の家から徒歩5分の場所にあった。
続く