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おじいちゃんとぼく。

小学校から誰かが歩いてきました。小学4年生の男の子、たかおです。たかおは笑顔でした。明日は待ちに待った土曜日。おじいちゃんと約束していた釣りに行く日です。たかおはわくわくしていました。
「明日は土曜日だ!」
たかおは思わず叫んでしまいました。
そしておじいちゃんと釣り堀へ出かけていきました。しかし、行ってみるとこれが、まったくつれません。おじいちゃんの方を見ると、ひょいひょいと,手慣れた動きで魚を釣っています。たかおはだんだんイライラしてきました。
「おじいちゃん、もう帰ろうよ。つまらないよ。」
そういうと、おじいちゃんはガハハと笑って、
「なんだ、もう飽きたのか。じゃあ、そこら辺で遊んでなさい。」
確かにそれ以外やることもないのですから、たかおは近くの砂浜でぼんやりしていました。
〔ああ、釣りってつまらないんだな。こんなところ来なければよかった。〕
そんなことを考えていますと、一人の少年が釣り糸を垂らしています。目がはりちぎれそうな勢いで釣り糸を見ています
「ねえ、そんなことしてなにがたのしいの?」
ぼくはふと、聞いてみました。その少年は、びっくりしたというようにぼくのほうをみて、一呼吸おいてから、
「そんなの、ぜんぶだよ。餌を選ぶ時もどれにするか迷うのが楽しい。魚がかかるのを待つ時間も流れてくる風が気持ちいい。それにね・・・」
途端に少年の顔が真剣になった。
「つりは人間が生きていくのにひつような技術なんだ。釣りがもしできなくなったら、キミの食卓は一気に寂しくなるだろうね。」
ぼくは、少年の言葉を聞き終えると、おじい
ちゃんのいる釣り堀を見てみました。
するとどうでしょう。
頑張って釣り竿に餌を差し込んでいる人。
釣り糸を垂らしながら風に吹かれている人。そして、
楽しそうに魚を釣っているおじいちゃん。
話を聞く前とは別次元の光景が、そこにはありました。
ひょっとして、おじいちゃんは、この光景をぼくに見せたかったんじゃないだろうか…
ぼくは、そう思いました。すると、おじいちゃんはにかっと笑いながら、グッと親指を僕に突き出しました。

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