日本共産党は、不誠実な選挙総括を改め、失敗を直視せよ
統一地方選挙の後半戦も終わりました。まずは皆さんの奮闘を讃えたいと思います。
敗北の分析ができてない
前半戦・後半戦を通じて、日本共産党は議席も得票も大きく減らしました。比較の対象である4年前の選挙も議席を減らしており、そこからのさらなる後退は、全体としては「敗北」以外の評価はあり得ません。
これに対し、選挙結果を分析・講評する文書としては、4月24日に出された常任幹部会声明「『130%の党』づくり、岸田政権の暴走とのたたかいに立ち上がろう――統一地方選挙後半戦の結果について」 が最後のようです。
(5月末現在。その後の中央委員会総会での総括について、最後に言及しました。)
この文書、敗北の背景に「反共キャンペーン」などの外的要因を持ち出し、それを打ち破れない原因を「自力の問題」としています。しかし、いまでも末端の組織が懸命に党勢拡大を図っているのに、なぜうまくいかないのか、そこに言及しなければ、何も言っていないのと同じです。「選挙の後退の悔しさは、党勢拡大で晴らそうではありませんか」という呼びかけに、心から賛同できる党員がどれほどいるでしょうか。
さて、今回特に指摘したいのは「国政比例との比較」という部分です。
議員と住民の距離が極めて近い地方選では、議員個人としての得票という意味合いが強いし、地域に強力なライバルがいれば、政党が別でも票の移動があり得ます。候補者を何人立てるかでも、全体の得票が変わります。これに対し、政党の支持そのものが問われる比例代表は、そうした特性は弱い。
明らかに性質の異なるものを比較するのが間違いであることは、誰にでもわかります。常任幹部会は26人(選出時)で構成されていますが、少なくとも過半数(たぶん大半)が、データもまともに読めないか、無批判に追従するだけかのどちらかだということです。
得票の違いを可視化してみた
実際の票の出方を可視化したいと思い、比例(衆院・参院)と地方議会選挙の過去数年分をグラフにしてみました。まずは私の住む川口市と、生まれ育った行田市です。
(グラフ中の得票率は、有効投票数を分母としています。過去のデータは見つからないものもありました)
一見して明らかなとおり、地方選より国政比例の方が、得票率の浮沈が顕著です。ここから「今回は地方選だったためにそれほど減らなかったのでは」という推論が成り立ちます。少なくとも、前回の参院比例との比較で「前進している」という見方は、はっきりと間違いです。
2例だけでは心許ないので、適当にいくつかの自治体を拾って調べてみました。
国政選と地方選で票の出方が全く違うことがわかります。そしてやはり「比例に比べ、地方選は得票率の変動が小さい」という傾向はありそうです。地方において、地域に根付いた議員・候補者が頑張っている様子が見て取れます。
上のグラフでは表現されていませんが、地域で共産党議員が信頼を得ていることは、やがて党としての信頼につながり、国政選挙にも良い影響を与えているであろうことは想像できます。献身的な党員とまじめで仕事熱心な議員は共産党の宝です。地域課題については、議員に丸投げだったり、地元党支部が議員と協力して取り組んだりと千差万別ですが、地道に頑張っているすべてのみなさんに、心からの敬意を表します。
異論排除の影響はこれから
今回は地方選だったため、巷で言われている、松竹伸幸氏・鈴木元氏の除名問題は、さほど大きく影響しなかったのではないか、と私は見ました。前述のグラフは、その推論と矛盾しません。また、議員を増やしたところもあり、個別の選挙はそれぞれで分析をしなければいけません。それでも全国で俯瞰すれば大きく減らしたことに、危機感を持つべきです。
いま衆議院が解散されたら、地方選より影響は大きく、議席を減らした前回よりもさらに後退するのではないか、と懸念します。
追記。8中総では
6月24日、25日に開かれた第8回中央委員会総会では、前回参院選との比較について少しトーンダウンした感はありますが、「前進への一過程」とする見方は変わっていません。
さらに、民主集中制の問題について、民主的運営という「建前」を延々と述べた上で、「事実として民主的な議論ができていない」という具体的な批判を「攻撃」と描くなど、相変わらずの無謬主義を振りまいています。
この中央委員会総会の幹部会報告・結語が、200人の中央委員の全会一致で決まったということが、異論を排除する党の体質を如実に示しています。
ただ、党の中からも「このままではいけない」という声が上がってきていることを、私は知っています。今後を注視していきたいと思います。
余談すぎる余談
4年前の統一地方選挙でも、国政比例(このときは17年衆院選)との比較で「前進」と言ってますね。
このときは、私自身が落選した候補者でして(というか当選したことない残念な奴です)、職探しどうしよう、という不安でいっぱいだったので、常幹声明をちゃんと読んでませんでした。良い子の党員のみなさんは、マネしちゃダメだぞ!
修正履歴
(2023.05.05 大阪市・富田林市・高松市のグラフを追加)
(2023.07.17 8中総について追記)
(2024.03.18 異論排除の話を別に起こしたため削除)