![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/115225962/rectangle_large_type_2_49cafe6f3eb0df494a97bba943001adc.png?width=1200)
スパルタ教師の暑苦しいアドバイスのおかげで、何とか社会人できている。
私は基本、過去を気にしないタチなのだが、どうしても忘れられないことがある。
中学三年生の春、入学式の担任決めで私はその人と出会う。
20代後半の男、頭はトサカでワックスをかけており、髭が小太りだが、服がロックでファンキーな黒色のラメ入りTシャツに短パンを履いていた。
チンピラみたいだなと思いつつも、「実はめっちゃチョろい人」という漫画的オチを期待したが、
自己紹介で「綜」という文字を出した時点で、
「あ、じゃあ崖の上のボニョだな!」
何かに失敗するたびに
「アホ!」「馬鹿!」
と自分がコンプレックスにしていたあだ名を、始まりの4月から、
いきなりデリカシーゼロで躊躇なく言ってきたのだった。
そんな担任のクラスは一年中破天荒だった。担任が元サッカー部ということもあって体育会系だったというべきだろう。
昼休みになると、クラスメイトと担任がグラウンドに集まってサッカーを行い、負けたチームの代表が好きなタイプを暴露。チャイムと同時に一斉に走り出して発狂しながら各自の掃除場所に向かう。
担任は英語教師だったため、英語の時間は全員挙手が絶対で、間違えると全員が大爆笑。英語スピーチは一か月に1回必ず行われる。
私はクラスメイトからの強要で英語係を一年間行ったが、挨拶するときに英語で話せだの、一発ギャグしてから挨拶しろだの、ダンスしてから挨拶しろだのと言われ続けた。
普段の生活態度も厳しく、あいさつ運動を活性化させるべく朝の7時30分には学校の正門に並んで始業まで正門に通りかかった人に挨拶を行う。掃除もサボることは許さず、手を抜いたところがあれば「掃除さぼるな!」と大声で怒鳴っていた。給食配膳も1秒でも遅れたら、説教されて休み時間がなくなっていく。そうした評価をポスターに貼って、先生の言いつけ通りできた回数だけシールを貼っていくというノルマが常にある状態だった。
学校イベントも厳しかった。
9月に行われる体育祭に向けては、珍しく5月末から始めるなど、1年2年3年のどのクラスよりも早くから練習していた。目標は全校優勝することだったので練習メニューも筋トレとか走りこみがあってきつかったの一言だった。
11月に行われる合唱コンクールも、必然的に優勝することが目標だったため、4月から朝昼夕合わせて3時間の練習メニューをこなした。そして他のクラスや教頭先生に歌の評価をしてもらって、その後は担任からは激励と今後の方針について真剣に話し合う場が何度も設けられた。
こうした努力もあって学校イベントはどれも総なめ優勝した。賞状は黒板の上に分かりやすく貼られていた。このことに関してはクラス全員、心の底から嬉しそうか顔をしていた。そして私自身も嬉しかった。当初あった不安も和らいでいき、からかられていたクラスメイトともいつの間にか仲良くなっていった。
部活も勉強も普通で中途半端な結果ばかりだったので、このクラスと過ごしたスパルタ日常は何だかんだ楽しかった。
卒業式だ。クラスメイトはぼろ泣きだったが、私は嫌な思い出のほうが多すぎたので逆にホッとしていた。
これで終われると思った時に、担任から生徒ひとりひとりにメッセージを送りたいので、呼ばれた人から廊下に来るようにと言われた。
私に担任はこう言った。
「綜はこの1年で本当に成長した。最初、綜を見たときに大人しい子だなと思ったけど、それ以上に自信が全くなさそうだったから心配だった。このクラスはそういった意味でも、明るく未来に進める子たちに育ってほしかったから色んな要求を出した。辛いこともたくさんあったと思うけど、これは綜という人間が変わる良い機会になったし、これから成長することは間違いない。1年間本当にありがとう。」
そして、担任はクラス全員にメッセージカードを渡して、こう話した。
「これから人生は色々あると思う。そのときに選択肢が君たちの前に出てくる。そんなときは厳しい道を行きなさい。行動することで未来は開ける。そしてもし辛くなったら、このクラスでの日々を思い出してください。このクラスでの思い出は君たちの背中を押す事になると私は確信している。最後に君たちにはこの言葉を送る。卒業おめでとう!」
その後も高校生・大学生・社会人になった私だが、仕事・人間関係の悩みは尽きない。ただそうした危機に陥って、悲しみに暮れて絶望したときに担任の言葉が頭に響き続ける。トラウマなのかもしれないが、頑張ろうという気持ちにもなる。そうして私はまた現実と向き合って、社会という大きい存在からの無茶ぶりと戦い続ける。自分が正しいと思う明るい生き方をしていくのだ。
おわり