小説 『墓の無い村』 第一章
四月二十九日、今日は朝からどしゃ降りの雨。
憂鬱だった。
高校時代の先輩から「『相談』したいことがある」と二日前に連絡があった。
嫌な予感しかない。
憂鬱だ。
しかし、お世話になった先輩だ。お世話になったというか、ある意味命を救ってくれた恩人でもある。
だが、それが今ではこれみよがしに、先輩からの『相談』が定期的にあるのだ。
あの時から数えると、約10年におよぶ。
「悪い、ちょっと金貸してくれない?」
「悪い、俺の代わりに謝ってきてくれ」
「とりあえず、昼にあの店に並んで席を