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各球種の肘にかかる負担について

ストレートと変化球の肘への負担: 高速ストレート、スライダー、シュートの比較



ピッチングにおける肘への負担は、球種や投手のフォーム、筋力、投球頻度など、さまざまな要因によって異なります。

特にプロ野球や高校野球においては、肘の故障が投手生命を左右する重大な問題であり、その要因を理解し、予防することが重要です。

本記事では、ストレート(特に高速ストレート)、スライダー、シュート、その他の変化球が肘に与える負担について詳しく解説します。

1. ストレート(高速)の肘への負担


ストレート、特に高速のフォーシーム・ファストボールは、投手が最大限の速度でボールを投げるため、全身の力を効率よくボールに伝えることが求められます。

この投球動作において、肘にかかる負担は大きく、特に速球投手においては注意が必要です。

ストレートを投げる際、投手の腕は急速に前方に振り出され、リリース時には肘に大きなモーメントが生じます。

このモーメントは、ボールを速く投げるために必要な力を生み出す一方で、肘関節に強いストレスをかけます。

特に、内側側副靭帯(UCL)にかかる「外反ストレス」が増加し、この靭帯に過度な負担がかかることで、損傷や断裂のリスクが高まります。

近年では、速球投手のトミー・ジョン手術(UCL再建手術)が増加している背景には、このストレートの投球による負担が一因とされています。

高速ストレートが肘に与える負担を軽減するためには、適切な投球フォームの維持が重要です。

また、速球を多投する投手は、肩や肘のケアを徹底し、十分な休養を取ることが不可欠です。

筋力トレーニングやストレッチも、肘の負担を軽減するために効果的です。

2. スライダーの肘への負担


スライダーは、変化球の中でも特に肘に負担がかかる球種の一つとされています。

研究ではストレートの次に肘関節内反トルクが高く出ています

肩関節水平内転トルクも強く出ており肩への負荷もあります

スライダーは、ボールに横回転を与えることで、バッターにとって厄介な横方向の変化を生み出します。

この回転を生み出すために、投手は手首や前腕を強くひねる必要があります。

このひねり動作が、肘に横方向の「外反ストレス」を加える要因となります。

特にスライダーを多投する場合、肘の内側側副靭帯(UCL)や前腕屈筋群に強い負担がかかり、長期的には靭帯損傷や筋肉の炎症を引き起こすリスクが高まります。

また、スライダーはボールのリリース時に肘が外側に曲がりやすく、この動作も肘に不自然な力を加える原因となります。

これにより、投球後に肘に痛みを感じる投手が多く、スライダーが肘に与える影響の大きさがうかがえます。

スライダーによる肘の負担を軽減するためには、正しい投球フォームを習得することが重要です。

また、投球後のアイシングやストレッチなどのケアを徹底し、肘の回復を促すことも大切です。

3. シュートの肘への負担


シュートは、ボールに内側回転をかけることで、バッターに対して内側に変化する軌道を生み出す球種です。

シュートの投球動作では、前腕を内側にひねる必要があり、この動作が肘に対する「内反ストレス」を生み出します。

スライダーほどの横方向の負担はありませんが、シュートも肘や前腕の筋肉に負荷がかかる球種です。

特に、速いシュートを投げる際には、ストレートと同様に肘にかかるモーメントが大きくなるため、肘への負担が増加します。

シュートを多投する投手は、肘の内側に痛みを感じることが多く、これもUCLや前腕屈筋群に対するストレスが一因となっています。

シュートによる肘の負担を軽減するためには、スムーズなリリースと適切なフォロースルーを心がけることが必要です。

また、筋力トレーニングや柔軟性を高めるストレッチを行うことで、肘への負担を軽減することができます。

4. その他の変化球の肘への負担

その他の代表的な変化球としては、カーブ、チェンジアップ、フォークボールなどがあります。

これらの球種も、それぞれ異なるメカニズムで肘に負担をかける可能性があります。

- **カーブ**: カーブは、手首を強く内側に曲げてボールに縦方向の回転を与える球種です。

この動作が肘に「内反ストレス」をかけるため、肘の内側に負担がかかります。

研究ではストレート、スライダーに次いで肘関節内反トルクが掛かります

また、カーブの投球時には、肩や肘の関節に急激な角度がつくことがあり、この点でも肘や肩に負担がかかるリスクがあります。

肩に対しては水平内転トルクがスライダーと共に高く出ており、肩関節への一定以上の負荷が加わります

肩関節や肘関節の求心力がチェンジアップと比較するとカーブ、スライダー、ストレートは高く出ており肩や肘の筋による関節の安定性が高く必要とされているため関節周りを筋で固めている様にも思われます



- **チェンジアップ**: チェンジアップは、ストレートと同じ腕の振りでスピードを落とすため、バッターを欺く球種です。

この球種自体は、ストレートほどの速度がないため、肘への負担が比較的小さいとされています。

ただし、リリース時に手首を使う変化球タイプのチェンジアップ(サークルチェンジなど)は、手首や肘に負担がかかることがあります。

ストレートやスライダーなど他の球種と比較すると肘や肩への負荷が少なく始めに習得する変化球としておすすめかもしれません


- **フォークボール**: フォークボールは、ボールを指の間に挟んで投げることで、急激な落ちる変化を生み出す球種です。

この投げ方では、リリース時に指先と手首に強い負担がかかり、それが肘に伝わることがあります。特に指の力が弱い投手や、無理にフォークを投げようとする場合、肘や手首に過度の負担がかかりやすいです。

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