捻転差
投球動作における「捻転差」とは、主に下半身と上半身の回旋運動のタイミングのズレを指し、効果的な投球を行うために重要な役割を果たします。
具体的には、下半身が先に回旋し、その後に上半身が追いかけるように回旋することで、体の回転を最大限に活用し、効率的なエネルギー伝達が行われます。
このメカニズムを適切に利用することにより、投球時により高い球速が得られる可能性があります。
捻転差のメカニズム
投球動作は、足元から手元までのエネルギーを段階的に伝達する「キネティックチェーン」(運動連鎖)によって成り立っています。
捻転差は、このキネティックチェーンの一部であり、下半身と上半身の回旋運動のタイミングの違いが球速に大きく影響します。
例えば、下半身が先に回旋することで骨盤が前方に回転し、次に上半身がその回転に遅れて追従します。
この「ズレ」によって、上半身には「捻り戻し」の力が生まれ、これが投球腕に伝達されると、効率的な加速が可能となります。
いくつかの研究では、この捻転差の効果が球速にどのような影響を与えるかが調査されています。
ある研究によれば、投球フォームにおける捻転差が大きい選手ほど、より高い球速を出す傾向があることが示されています。
具体的には、トップレベルの投手では下半身と上半身の回旋タイミングにおいて30度以上の差が見られることが多く、これがエネルギーの蓄積と解放に寄与しているとされています。
球速と捻転差の関係性に関する研究
捻転差と球速の関係について、いくつかの研究が行われています。
たとえば、Escamilla et al.(2007)の研究では、大学生の野球投手を対象に捻転差の大きさと球速の関連性を調査しました。
研究結果によると、下半身の回旋が上半身に先行する時間が長いほど、またそのズレが大きいほど、球速が向上する傾向が見られました。
この結果は、体幹部の筋力や柔軟性が捻転差を有効に利用する上で重要な要因であることを示唆しています。
また、Takahashi et al.(2019)の研究では、プロ野球選手とアマチュア選手の投球フォームを比較し、プロ選手はアマチュア選手に比べて捻転差が顕著に大きいことが明らかになりました。
これにより、上半身の回転を後から追従させる技術が球速向上のために重要であることが示唆されています。
さらに、Okada et al.(2021)の研究では、投手の捻転差をモーションキャプチャ技術で分析し、捻転差が不足している選手は、骨盤から肩へのエネルギー伝達が効率的でないことが確認されました。
この場合、球速が向上しないばかりか、腕や肩にかかる負担が増え、怪我のリスクが高まることが指摘されています。
捻転差を向上させるためのトレーニング
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