正欲/朝井リョウ
【若いころは、時間さえ経てば何もかも忘れてしまうことを寂しく思っていた。だけど今では、神様がこの世界で生きていく人間のために忘却という機能を拵えてくれたような気さえしている。】
【社会は日々変わりゆく。価値観、考え方、常識、昨日はそうであったものが今日そうではなくなる。】(p.15)
【罪を犯すまでに過ごした時間がこちらの体内にも、流れ込んできてしまいそうになる。】(p.169)
【既に言葉にされている、誰かに名付けられている苦しみが他人に明かして共有して同情してもらえるようなもので心底羨ましいと。】(p.183)
【多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。時に吐き気を催し、時に目を瞑りたくなるほど、自分にとって都合の悪いものがすぐ傍で呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。】(p.188)
【自殺の方法を一度も調べたことのない人の人生は、どんな季節で溢れているのだろう。生まれ持ったものに疑問を抱くことなく生きていられる人たちの目に、この世界はどんなふうに映っているのだろう。】(p.212)
「多様性」「繋がり」「性的嗜好」「マジョリティ」「マイノリティ」「プライバシー」
理解できないし、気持ち悪いって思ってしまった…。自分では理解できない感覚を持っていても、分かってくれる人がいれば満たされるだなと。
明日も生きていきたいと思えるのは繋がりあるからなのか、でも、繋がることを押し付ける八重子が苦手だった。
今年の11月に映画化するらしいので観に行く。