スリにはご用心を!
展示会が終わった。
正確には終わってはいないのだけれど、私は他業務の都合で通常出勤に戻るので、今日で今週のメインイベントは終わった。
お客さんは旅慣れた人達で、年に二桁の回数の海外出張をこなし、ミラノにも2回来る。それをウン十年とやっているが、今回はまんまとスリにしてやられた。
交渉の際に、うっかりバッグを身から離した位置に置いていたのがいけなかったのだが、たまたま今回に限って大量の現金を忍ばせていたものだから、その9割方をスられ、顔面蒼白になってしまった。
その後私たちは皆、葬式ムードに陥り、仕事を中断して帰路についた。
ブース内は確かに混雑していたが、自分の2歩後ろにあるバッグが、まさか10分もしない間に誰かに開けられ、財布を見つけられ、器用にも札一枚(これがいくらの札かを書くと、その総額を素早く計算された皆さんの脳も麻痺するに違いない)を残してありったけの現金だけを抜かれるなんて、誰が想像しただろう。
そういう私も、十数年前、まだ賃貸住まいで家賃が手渡しだった頃、お金をおろしたその夜の地下鉄でスられたことがあった。
繁忙期の金曜の夜のダンスのレッスン帰りで、4分待ちの地下鉄のホームでついぼんやりしてしまい、地下鉄に乗ろうとした瞬間、バッグのファスナーが全開で財布だけ盗まれているのに気づいた。
それ以来、ショルダーの長さ調節ができないバッグは持たない、もしくはそういうバッグには金目のものは一切入れない、と決めている。
数年前に弟がミラノにきた際も、お金を分散させずにきて、市内の駅に着く前に財布を丸ごと盗まれたことがあった。あの時は家の鍵まで財布に入れていたから、日本に帰国してからも大変だったらしい。
警察で調書を書いてもらっても、彼らにとっては日常茶飯事だから、サッカーの試合がやっていれば携帯で盗み見しながら話を聞くスタイルで、真面目に仕事すらしない。
所詮、彼らにとってはその程度の出来事なのだ。
その他のお客さんも、ポケットに突っ込んであった札をスられたり、レストランでぼったくられたり、色々している。
旅慣れた人、そうではない人、様々だし、地味な格好をして暮らしている身であっても、残念ながら、私たち日本人は格好の餌食になる。
コロナ禍は完全に過去となり、円安でもイタリアへ、フランスへと、旅をしに来る人が増えたように思うが、決して、スイスやオーストリアのような治安ではないことを忘れずに、身を引き締めて、現金はくれぐれも分散して、おしゃれをせずにきてください、と改めて、声を大にして言いたい。