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掃除マニアなイタリア人

この秋からフランス語のIntensiveコースへ通っている。

これまでは文化コースと言おうか、月に数回、割と好きで得意とする分野や書籍の話を聞き、興味のある単語や情報についてメモしたものの知識を深めていただけだった。
勿論、発言の義務もなく、復習の必要もなかったから、ゆるく楽しくやっており、Noteに鑑賞記録を書く時間も十分にあった。

だが、いい加減自分の低レベルさに嫌気がさし、春にTOEICのようなDELFという試験を受け、レベルアップを試みて通っているIntensiveコースとなると、講義のほか、予習と復習、そして課題が山ほどある(社会人対象のクラスのため、年齢層は様々で主には30代が多いが、中には私より年上の人もいる)。
大人なので「宿題=Devoir」という義務付けはないが、いかに基本の課題をこなし、それにプラスαで推奨されている課題をこなすかでスキルアップの度合いが変わっていく、というシステムだ。
 
先生は私と然程年齢が変わらなさそうな男性で、フランスのコメディー映画の脇役的な人で、食べ物の話や、パリのどこに行ったら出会いがあるかなど、私達生徒に質問をぶつけながら会話をし(例えば、あなたはどこに誘われたらデートしてもいいと思う、とか、そんな話だ)、3時間の講義でも飽きが来ない(毎日なら、飽きる前にくたばるとは思う😅)。
またクラスで唯一の日本人、いやアジア人である私の名前はまだ覚えられないらしく、講義の1番最初以外は質問もされず、今は助かっているが、そう長くは続かないだろう、と思い、苦手な会話を少しでも克服しようと、目下、プラスαの課題に必死で取り組んでいる。

日本でフランス語の学校に通えば確実にもっとずっと楽に話せるだろうし、寧ろ私が一番話せるくらいかもしれないが、今のクラスは私以外の9人がイタリア人、2人がポルトガル語を母国語とする人々なので、自分の会話のスキルの低さをまざまざと見せつけられ、みじめになる。
でも、半年後、1年後の少し明るい未来を思い描いて(その頃には彼らは時事問題についてもガッツリ話せるようになっているかもしれないが、そういうことはなるべく考えずに)暫くは梯子ギャラリーは控えめに、そしてNoteの更新はもっと控えめに、学習に勤しもうと決めた。

そんな決意をした中、先日の授業で、「シェアハウスで気を付けることについての提案文を、指定した構文で挙げろ」という質問があった。
以前パリで1年半インターンシップをしていたという、クラスで一番若い20代の男性が、「そういえばパリの家の大家は掃除がイマイチだった、僕にはイタリアの掃除レベルが一番で、最適だと思う」ということを付け加えた。

それを聞き、十云年前にミラノに引っ越したばかりの頃の記憶がふと蘇った。当時友達だった近郊の町に住む男友達の家に頻繁に週末泊まりに行っていたのだが(完全なる友達としての付き合いだったので、同じ部屋で寝ても扉を全開にし、彼の両親に不信感を抱かれない対策をしていた👍)、彼の母親が無類の掃除好きで、チリ一つなく、手がボロボロになるまで、毎日家じゅうを掃除をするのだ。まず椅子などを全て逆さにしてテーブルの上に載せ、掃き掃除をした後、掃除機をかける。そして更に拭き掃除をし、仕上げに更なる掃き掃除をする、という作業を毎日繰り返すのだ。おかげで家じゅうぴかぴかだが、両手は冬でなくてもあかぎれてひび割れ、悲壮感漂う有り様だった。

他の男友達の家に泊まったこともあるが、彼らは男三兄弟で動物もたくさん飼っており、結構慌ただしい環境のため、母親はそこまで掃除に熱心ではなかったが、それでも日本の一般的な家と同等かそれより少し綺麗なレベルだった。

そんな様子を、他の男友達たちの家も含め、渡伊してから1年以上見続け、当時は、「どうしてイタリア人のmammaたちはこんなに掃除をするのだろう、私なら手がぼろぼろにならない程度でやめておくのに」としばしば思ったものだった。

そんな記憶が、当時の友達たちより少し年上の男子がフランス語のレッスンの最中で発言したことで蘇るとは、世の中は循環してるな、人生も循環しているのかもな、と授業の後、教科書やノートをしまいながら、こっそり感じた。


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シマ子
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