見出し画像

サステナブルの矛盾

先日、少し会社を早引きして、1駅先の行きつけの薬局へ予約していた持病の片頭痛の薬を取りに行き、1駅戻ってこれまた行きつけの病院へ次の検査(これで遂に腹痛の原因が判明することを祈る。しかし病院が行きつけって、ちょっと悲しい🥲)の疑問点を聞きに行った。
その後、"ささっとアートに触れたいな"、と思い、Noteには書かない陳腐な展示を12分で眺め、最寄り駅までの道すがら、大小さまざまなファスナー付きのスーツケースを売る店が立ち並んでいるのに気付いた。

私が十云年前にミラノに移住した際に日本から持ってきた新品のハードフレームのスーツケースは、一昨年から鍵穴の調子が悪くなり、去年はたまに開かなくなることもあった。そろそろ寿命だな、ということで、こちらで大中小3個付きで170ユーロ程度の、薄っぺらく質の悪いファスナー式のを買う羽目になった。
「羽目」というのは、本当は大1個で十分なのに、店主が「3個セットじゃないと売らない」と言い張るのだ。まぁ、仮に1個だったとしてもこの金額なら高いとは言えないし、その月には年に一度市から徴収されるごみの税の支払い等があり、少しでも安いものがあればそれにしがみつきたかったのだ。

イタリアでハードフレームのスーツケースを買うのは容易ではない。なぜって、殆ど種類がないし、売っていてもRi〇〇waやSams〇〇〇〇eで有に900ユーロはするのだ。その点、日本のサイトで念入りに調べたところ、安いものは2万円台からあるにはある(但し中国製だが)。

ちょうどその少し後、Noteにも鑑賞記録を残したLilleへの旅が待っており、本当は翌年(つまり今年)に古いスーツケースを持って帰国し、新しいハードフレームのと交換しようと思っていたが、万が一旅の最中に鍵が開かなくなっては困るので(実際にはそれ以上に大変な出来事があった…その際の記事のリンクを貼っておきます)、やむを得なかったのだ。

買った瞬間、頭の中で「チャリーン」という音がしたのを覚えている。まるでアニメじゃないか、と思うほどにくっきりはっきりと「チャリーン」という、あたかも「ムダ金払いました」的な音がしたのだ。
その理由は次の通りだ。

Lilleには中サイズのスーツケースを持って行ったが、初日のトラブルで、早朝にホテルに到着したにも関わらず、夕方までずっとひいて観光せざるを得なくなった。石畳の多い旧市街等の中心地では、脚が短く弱い安物は角が時々石畳にこすれて、最初は小さな傷だったものが大きくなり、穴が開いてしまった。たった一度の、一週間もしない旅で、スーツケースが1つ、壊れてしまった。

今年の晩春の連休でSwedenへ行った際、大サイズのスーツケースを持って行った。ここでもまた、旧市街を通過する宿を予約しており、かなりの距離の石畳を下る最中、キャスターが1つ外れてしまった。幸い、合計3か所の宿に泊まり、3件目の前に起きたハプニングだったので、あとは空港まで運びきれればどうにでもなれ、という気分だったが、たったの5日間で、また1つ壊れてしまった。

Swedenから家に戻り、「さて、夏の帰国はどうしたものか?寿命到来ので行くか、ネットでキャスターを買い、大サイズを自分で修理するか?」と考え、一先ず物置から、いつか粗大ごみに出そうと思っていた中サイズを取り出し、キャスターのサイズを見てみると、なんと、中と大が同じサイズではないか!
不幸中の幸い、とキャスターのオペを行う。
そして、帰国前に日本のハードフレームをネット購入して、実家で交換することにした。

丸2日検索して、値段も質もよさそうだと判断して購入したサイトはこちら
↓ ↓ ↓ 

この会社では、古いスーツケース1つの無料回収オプションが付けられる。
古い大サイズは2度しか使っておらず中が綺麗なので、母が「万が一地震で避難所生活をするような事態に備えて荷物を一つにまとめたいからもらっていいか」と聞くので(実家の近くは石畳ではないから早々に壊れないことを祈る)、実家にあったオンボロのを無料回収してもらった。

実家を発つ日、真新しいスーツケースを引いてみた。
サイトにあった通り、音が全然しないし、動きがスムーズすぎて、母もびっくりしていた。「さすが日本の技術、最高!」と2人して大喜びした。

新しいスーツケースは4万円ほどしたけれど、1回の使用で壊れる約57ユーロ(単純に3で割ってみた)の粗悪品を買うくらいなら、4万円払って10年以上もつ方がどれだけよいか。

ここ数年、どの業界でも、「やれサステナブルだ、リサイクルだ」と騒ぎ、「うちはこの証明とあの証明を取得している」と声高に主張している会社もあるが、だったらなぜ、3~4万円台のハードフレームは殆ど作られなくなり、1~2万円程度のすぐ壊れるファスナー式ばかりつくられるようになったのだろう。
使い捨てとは言わないまでも、ファスナー式の安物は、数回、もしくは2年程度しか持たないのに。。
全然サステナブルじゃないじゃないか!

ファストファッションもしかりだ。
ユニクロのように価格を少し上げ、クオリティーの向上に努めている優良企業も一部はあるが(もうファストファッションの域を脱しているとも言えるが)、殆どは質の悪い、数回着たらよれよれになる代物ばかりが出回っているのは周知の事実だ。

「世の中は本当に矛盾している」

と、浅黒い人々がスーツケースを売る商店街を、痙攣する横腹を握りしめながら歩き、心から実感した。
もう一度、頭の中で、「チャリーン」という音がした気がした。


いいなと思ったら応援しよう!

シマ子
宜しければ応援お願いします。いただいたチップはマイナーな食材購入&皆さんへのご紹介に使わせていただきます🤚