第6話 全てはタイミングが大事
隣のベットに入院してる人が、
「まさか高校時代バイト先で恋焦がれた由美子さんのお父さんだなんて」
「世の中には偶然というのが本当にあるのだ」と
「世間とは何処でとう繋がっているのか分からない」
もしかしたら、「全て繋がっているのかも知れない」
喫煙所から出てエレベーターに乗り廊下に出て部屋に向かって歩いている時、病室から女性の笑い声がする。
聞き覚えのある声だ。
高校時代バイト先で憧れていた由美子さんの声だと気がついた。
と同時に薬の副作用で浮腫んでいる顔を見られたら恥ずかしいという感情が湧いて来て足が止まる。
会いたい
でも顔の浮腫んだカッコ悪い自分を見せたくない。
Uターンして喫煙に戻ってしまった。
憧れだけで終わってしまった恋とは永遠に心に刻まれているのだ。
私の中で彼女は今でも理想の女性そんな風に心の中に存在する。
喫煙所でドキドキした心臓を落ち着かせタバコを吸っていると、そこに松田さんが入って来た。
「やまちゃん娘来てるよ、話したらやまちゃんの事覚えてると言ってたよ」
と松田さんが言う。
「そりゃそうだよ、あんなに電話して話していたんだから」
と心の中で呟く。
するとその彼女が喫煙所から見えるエレベーターから降りてくるではないか。
こちらに向かって来る、ヤバいどうしよう。
彼女は帰る前に松田さんに一声かけて行くつもりだった。
「お父さんまた来るね」
俺の大好きだった由美子さんがそこにいる。
しかし腫れた顔を見せたくない私は話し掛ける事も出来ず柱に顔を隠してその光景を見ているだけだった。
なので彼女の顔も半分だけしか見えない。
その柱越しに見える彼女はかつての綺麗さに大人の魅力がプラスされて更に美しくなっていた。
黒髪のロングでセンスの良い服装全てがパーフェクトだった。
白い古びれた病院、今は無くなってしまった大山のバイト先。
今でも近くを通ると思い出す、あの綺麗で優しい彼女顔。