健康被害急増の紅麴事件、安倍政権の規制緩和が元凶
小林製薬が独自に開発した原料「紅麹」を使った機能性表示食品(サプリメント)を服用した人の腎疾患、むくみ、倦怠感などの健康被害は拡大の一途だ。厚労省によると、「紅麹コレステヘルプ」などをのんで被害を訴えて病院で受診した人は延べ1594人、276人が入院し、5人が死亡した(5月19日時点)。ただ死亡と服用の因果関係は不明とされる。
被害の広がりを受けて消費者庁は機能性表示食品のあり方をめぐり医療や食品衛生などの分野の専門家からなる検討会を4月中旬に立ち上げた。関係団体へのヒアリングを重ね、これまで5回会合を開き、制度見直しの提言案をまとめた。それによると大きな柱は3つ。①健康被害について、製品に起因する疑いが否定できない場合、医者は症状の軽重を問わず消費者庁に報告、②生産・品質管理の厳格化では医薬品に義務付けられている製造時の管理基準(GMP)などを参考に一定の基準を設け、企業は順守状況の監視体制を行う、③国が安全性を審査する「特定保健用食品」(トクホ)との違いや医薬品との飲み合わせなどに関する情報を製品パッケージに記載―。
消費者庁はこの提言を踏まえて今月末までに内閣府令改正に向けた対応策をまとめる。
科学的な根拠や安全性の情報を企業が消費者庁に届け出れば販売できる機能性表示食品は2015年に導入された。ここで忘れてはならないのは、安倍晋三政権がこれを解禁に踏み切ったことだ。米国でのサプリメント市場の急拡大を受けて日本の経団連は機能性表示を認める制度の早急な検討を05年に要求。財界からの要請に応えるべく安倍政権は徐々に規制緩和した。農民連食品分析センター所長の八田純人氏は「機能性表示食品のルールブックつくるとき、消費団体の研究者たちが(健康被害)を懸念したが、政府に押し切られた」(新婦人しんぶん5月11日付)という。
米国では機能性表示食品オキシエリートプロを服用した人が急性肺炎を起こす健康被害が13年に起きた。死者も出てルールを厳しくすべきと欧米で高まり、日本でも問題視した。
しかし「世界で一番企業が働きやすい国」を掲げる安倍政権は、サプリ市場の拡大に走った。調査会社インテージによると、機能性表示食品のサプリ市場はこれまで急成長を続け23年の年間販売額は491億円と17年の3倍超。今年も3月までは毎月の販売額は前年同月比1割超のペースで増えていた。だが3月下旬の紅麹事件の発覚で、売り上げが急減した。
これからサプリ離れに拍車がかかりそうだ。安倍政権の罪は重い。
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