障害者スポーツの見方が変わる?!-『障害者スポーツの臨界点ー車椅子バスケットボールの日常的実践から』
車椅子バスケの選手たちの「日常」を通じ、身体の多様性に根ざす障害者スポーツの論理と競技観戦の「ものさし」を論じる意欲作!
渡 正 『障害者スポーツの臨界点ー車椅子バスケットボールの日常的実践から』新評論、2012年。
🏀著者紹介🏀
渡 正(わたり ただし)
1979年 北海道札幌市生まれ。
専門はスポーツ社会学、障害者スポーツ論。
(⇒本書刊行時の情報)
🏀作品紹介🏀
本書は障害者スポーツ全般を紹介する本ではなく、障害者スポーツのこれまでを振り返り、「考え直す」本である。また、車椅子バスケットボールの日常的実践から、「障害者スポーツ」というものの限界を追求することを目指したものです。
本書には何人かの車椅子バスケットボール選手が出てきます。彼らがどのようにして練習場にくるのか、競技用車椅子をどのようにして持ってきているのか、練習をどのように行っているのか、ゲームの特徴、自分の「障害」や「スポーツ」をどんなふうに考えているのかなど、著者自らが体感し、彼らにインタビューしたことが描かれています。
🏀目次紹介🏀
本書は分厚い本となっているので、読書が苦手な人は目次をみて気になった章だけでも読んでみてください!!
▽目次
序章 障害者スポーツを語る地平
第1章 障害者とスポーツの問題系
第2章 スポーツとルールの論理
第3章 障害者スポーツの歴史
第4章 車椅子バスケットボールチームの日常
第5章 ルールとその働き
第6章 ゲームと、その達成
第7章 日常の経験とスポーツ
第8章 イスバスとインペアメント/ディスアビリティ
結章 障害者とスポーツの臨界点
🏀紹介したいポイント🏀
車椅子バスケットボールってどんなスポーツ?
車いすバスケットボール:下肢などに障がいのある選手が、競技用車いすを巧みに操作しながらプレーするバスケットボールのこと。通称イスバス。
特徴
・選手は回転しやすい競技専用の車いすを使う。
・選手は障害の程度によってクラス分けされている。
⇒選手は最も障害の重い1.0点から最も障害の軽い4.5点まで0.5刻みに分けられており、コート上の5人の合計点は14点以内と決められている。
・健常者もプレーすることが出来る。
🏀独自のルール🏀
・ダブルドリブルが適用されない。
・選手がボールを持っているときのプッシュ(車いすを手で漕ぐこと)は
連続2回まで。3回以上でトラベリング。
・車椅子に直接攻撃するようなプレーの禁止。⇒ファウルになる。
⇒試合中の車椅子は身体の一部と見なされるため。
・お尻を車いすから離してはいけない。
⇒「バイオレーション」の反則にあたる。
🏀印象に残っているところ🏀
私が本書を読んで一番印象に残っている車椅子バスケの選手の「にせもの」の障害者と「ほんもの」の障害者という考え方を紹介したいと思います。
「にせもの」: 日常生活において自立していたり、バスケなど自分の好きなスポーツを「できる」状態にある障害者。
「ほんもの」: 日常生活において自立した生活が送ることが困難だったり、バスケなど自分の好きなスポーツを「できない」状態にある障害者。
(本文の車椅子バスケ選手のインタビューより引用)
🏀感想🏀
本書は障害者スポーツに対する新たな見方を提供してくれる一冊だと思います。私自身、本書を読んで障害者スポーツに対して偏見を持っていたことに気がつき、障害者スポーツに対する見方が変わりました。また、本書は障害者スポーツについて知るきっかけとなる本だと思います。障害者スポーツに興味がある人、私と同じような意見を持っている人、そして、障害者スポーツのことを知りたいと思っている人に是非読んでいただきたいです。
作成者:秋山 陽菜