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この退団公演は、彼女のことを想っている人のための特別な演目である

先日、東京にて退団公演のmy楽を迎えました。男役を演じる彼女にはもうお会いできないこと、頭ではわかっているのですが実感がわきません。なんだか失恋したような気分で、食事が喉を通りません、、


さて、ムラのmy楽を迎えたときから退団公演の感想noteを早く書きたいと思っていたのですが、たくさんの考えが浮かんでなかなかまとまらず、今日になっていました。

何を軸にするべきかずっと考えていたのですが、感想をいろいろと見ていると「退団公演らしからぬ雰囲気」とか、「イルカとキャベツのトンチキ系?」みたいな感想をたまに見かけるので、「とんでもない。この退団公演は彼女とファンのための特別な演目なんだぜ!」ということに焦点を当てて書きたいと思います。

1.ちりばめられた過去作品の要素


まず書きたいのが、彼女が演じてきた過去作品の要素が退団公演の随所に織り込まれているということ。今の組の作品はもちろん、彼女が前組にいた時代の要素もさりげなく入っています。
退団公演が始まる前に過去作をほぼ全て履修しておいたおかげで、今回の公演に隠された諸要素に気づくことができました。円盤をたくさん見ておいてよかった!

本編に関しては、稀代のバレエダンサー・ニジンスキーが最後の公演を行ったホテルを題材とした2021年の作品を見ていただくと良いと思います。舞台やキャラクターの設定が近い部分があるためです。それと同年の探偵のお話です。この二つは必須履修科目でしょう。
フィナーレについては2013年の例の作品ですね。フィナーレであの歌を歌われた時、最後にとうとうロミオになってくださった…!と胸が熱くなりました。
ちなみにデルフィーヌの「ボンニュイ、ムッシュ」のあたりのセリフは、2020年の有名ミュージカル宝塚版の公演の中にありました。

こういったかんじで、劇を拝見していると「これ見たことある!」と進研ゼミみたいな発見が多くて嬉しかったです。リアルタイムで彼女の人生を追ってきた方達にとっては涙腺崩壊ものなのではないでしょうか。

そして、過去作品の要素が盛り込まれていることには演出家の先生の深い愛を感じます。彼女が積み重ねてきた17年の歴史を先生が大切に尊重されていて。先生の作品といえば、エリザベートで彼女が演じたちょっとヘタレな旦那さん役が大好きです…♡

中でもすごいなぁと思ったのは、ラストシーンで歌われている曲の歌詞です。「今夜見上げる星」「明日見上げる空」という部分に、さりげなく前の組と今の組の名前が掛けてあるんですよね。

そういった「さりげない粋」が随所に織り込まれていることに気づいたとき、あぁこの物語は彼女のためのものなのだ、と改めて腑に落ちました。

2.パラシュートの場面が持つ意味


パラシュートで降りてくるという豪華な演出。そこに込められた意味はいろいろあると思うのですが、その中の一つに「この公演を見た人全員の記憶に強く残る象徴的なシーン」という意味があるのではないかと考えました。

パラシュートに乗って歌われる「いつの日か遠い街角であなたを思い出す時  この空の匂いと風の肌ざわり  必ず蘇るだろう」という歌詞は、「あの日見たパラシュートの景色のことを思い出す」ということなのかなと。

一度でもこの公演を見た人なら、彼女のことを思い出す時に、パラシュートの場面が自然に頭の中に浮かんできます。どれだけ時間が経っても鮮明に思い出せるあの日の景色。

「形あるものに永遠はない」とコブラとカナが言っていましたが、今回の退団公演は私たちに形のない永遠のもの、すなわち「記憶」を残してくださったのかなと思いました。

そして、これから何十年と時が流れても、彼女の退団公演には象徴的なパラシュートのシーンがあったという記録が宝塚史に残り続けることになります。宝塚を去りゆく彼女が、記憶と記録に鮮明に残されていくことに胸が熱くなります。

3.役に込められた想い


今回の彼女の役には、その一挙手一投足全てに、17年間蓄積された技がつまっています。男役仕草のひとつひとつ、極上のスーツ姿、煙草の扱い方、くゆらす煙の美しさ……。これら珠玉の様式美を、最後の機会に余すことなく見せてくださる幸せ。彼女が宝塚を卒業されたら、おそらくもう見られることはないですから(見られる機会を切実に欲しています 泣)。

彼女のファンが、男役を演じる彼女と悔いなくお別れできるように、男役要素を最後にてんこ盛りしてお届けしてくださっている。それが今回の役に込められた想いのひとつなのではないでしょうか。
お別れって書きたくないですね、文字にするだけで悲しくて胸がぎゅっとなります。

4.この退団公演は、彼女のことを想っている人のための特別な演目である


このように今回の退団公演には、彼女のことをずっと応援してきた人や、彼女のことを本当に想っている人だけが気づける要素・楽しめる要素が満載です。(また、今回彼女と共に退団される方々のファンにとって嬉しい要素もいろいろ含まれていると思います。マリア皇太后がいますし、英・米・仏だし…!)
こう考えると、彼女のファン以外の人からすると見えないことや気づかないことがあるかもしれません。それゆえ冒頭にあげたような色々な感想が出てくるのかも。

そういう点でも、この演目は彼女のファンのための特別なものなのだと思いました。彼女のファンだからこそ、この公演を隅々まで楽しみ尽くすことができるのだから。彼女の辿った軌跡を思い出しながら過ごす時間は、まるでお別れの儀式のようにも思えます。

男役を演じる彼女とはもうお別れなのかもしれません。ですが、彼女がこれからどんな人生を歩まれるのか楽しみです。きっとまたお会いできる日まで、もっと大きく、もっと賢く、もっと強く、もっと優しくなっていられるように生きていきます。
イルカのように知性と優しさに満ちたこの作品を見て、世界がもっと愛おしくなりました。

5.フィナーレのこと


ここまで本編のことを書きましたが、フィナーレ、すごすぎませんか?フィナーレについても語りたいことが山のようにあって、たぶん「ポストカードに米粒みたいな字」(メモリアルブック内の対談から引用)でぎっしり書けちゃうくらいなんですが、取り急ぎ三点ほど書きます。

①Hero in the darkがすごい

かっこよすぎる上に色気がすごすぎて本当にびっくりしました。どの瞬間を切り取っても絵になる耽美な空間です。仕草のひとつひとつ、表情、目線の全てが完璧で一部の隙もなく、彼女は人間国宝か無形文化財に指定されるべきなのではないかと真剣に思いました。

②本編と違うベクトルの、かっこよくて美しい彼女を見せていただける

本編の役はハードボイルドなかっこよさですが、フィナーレでは宝塚の男役ど真ん中なかっこよさを見せてくださいます。同じ「かっこいい」でもベクトルの違うものを見せていただけて、彼女の表現の才能に圧倒されました。

さらにかっこいいのみならず、彼女の美しい姿をも拝見できるのが今回のフィナーレです。清らかな純白の衣装で舞台に想いを届けられる場面。さっきまで色気とかっこよさに満ちていたのに急に美しさと上品さに全振りするので、感情の揺れ動きが大変なことになりました。
空間の全てを包み込むような慈愛の瞳に心が浄化されました。

③衣装と羽根の豪華さがすごい

フィナーレの衣装、キラッキラですごくないですか?特に階段降りのお衣装がすごい。ビジューに反射した照明の光が私のオペラグラスにジャストで突き刺さってきて、一瞬目が眩みました。それくらい輝きがすごかったです。
羽根についても過去作品で背負われていたもの以上の豪華さでびっくりしてしまいました。厚みや装飾の美しさがすごい。
衣装も羽根も全てが芸術作品なのだと実感しました。

6.ムラと東京の思い出をちょっとだけ


今回の公演で初めてムラ通いをして、初めて東京宝塚劇場に行きました。幸せだったなぁ。それぞれの場所にまつわる思い出などはまた改めてnoteに記録したいと思いますが、ちょっとだけ先に書いておきます。


①ムラ編

初めて彼女に会ったのは、まだ桜が咲く前のことでした。


そこから桜が満開になって、


葉桜になりました。


花のみちセルカにある「パスタ」のたらこごはん、すごくおいしかったです♡

春のお花たち。




②東京編

初めての東京宝塚劇場!



帝国ホテルの純白のロビー装花。


観劇体験は旅の思い出と共にあります。

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