『トップガン』の街、サンディエゴでの「ホエールウォッチング」
以前、アメリカはカリフォルニア州のサンディエゴに住んでいたことがある。
私は、カリフォルニア州でロサンゼルスに次いで人口が多いこの街が好きである。
映画『トップガン』で馴染み深い「基地の街」という強面な印象でありつつも、見事な景観で心を和ませてくれる「優しさ」も兼ね備えるこの街が好きである。
それにもかかわらず、私はまだnoteでサンディエゴのことを書いたことがなかったのか(実にくだらないショートショートをつくったことはあったが)。
サンディエゴの便利な面として、車を30分~1時間も走らせれば、現地の大半の観光スポットや景勝地に行くことができる。
ついでに車で2時間ほどでLAにも行けるし、その気になれば、メキシコに入国することも可能だ。
私もメキシコ入りを果たし、そこで少しスリリングな体験をしたが、それは機会があれば、また別記事で書きたいところである。
当時、私はサンディエゴのソラナビーチ(Solana beach)という実にロマンティックな海辺に住んでいた。
海辺に住んだことなんて、日本では1度もない(香港在住の頃の話をすると、香港島自体が海で囲われているので、海辺に住んでいたということも言えるが)。
そして、週末になるたび(たまにムリしてでも)車で色んな場所に遊びに行った。
以前、徳島で渦潮観光船に乗った話を書いた。
そのとき、渦潮観光船が何かに似ている、、、あっ!サンディエゴで体験したホエールウォッチングだ!、、、みたいなlことを書いた。
そのときの画像と映像が見付かったので、紹介したいと思う。
サンディエゴの海にクジラが回遊してくるのは、12月~3月頃とのことである。
私がホエールウォッチングを体験したのは、1月であったと記憶している。
現地ではホエールウォッチングの広告を頻繁に目にするが、特に予約する必要もないと考え、直接、クルーズ船が出る港に行った。
港で何社かあったクルーズ船乗り場の1つを選び、チケットを購入した。
ただ、「クジラ観察」のチケットを購入したとは言え、相手は生き物である。
いつも同じ場所で待っていてくれるとは限らない。
せっかくお金を払ったのに、クジラにお目にかかることができなかったら残念だとも思った。
思わず、係員さんにこう聞いてみた。
「今日ですが、、、海に出てクジラに遭遇できる可能性って、だいたい何パーセントぐらいでしょうねぇ、、、?」
係員さんは「まあ、今の季節だと100%だろうね!」と即答した。
100% !!
確かに周りのクルーズ船乗り場を見渡すと、立て看板に「もしクジラを観ることができなかった場合、返金(refund)しますよ!」などと案内文が記載されていたりする。
うーむ。サンディンゴのクジラ屋さんたち、すごい自信だ!
さて、いよいよ出発時刻となり、船に乗り込む。
以下に船内の様子もチラッと。
さあ、いよいよ出発なり~!
クジラも楽しみだが、私は船旅というもの自体、何ともロマンを感じて好きである。
「男なら、みなヘミングウェイが好きだ」みたいなことを言った人がおられたような気もした。
先日、ミシシッピ川に関する別記事で、アメリカ文学『ハックルベリィ・フィンの冒険』が好きだと書いたが、同じアメリカの古典的な文学として、私は『白鯨』も好きである。
私の中で、「ダラダラと長ったらしいが、それでもスキだぜ」という小説と言えば、『果てしないものがたり』と『白鯨』を思い出す。
『白鯨』は確かに、延々とクジラ学を展開するあたり、なかなか苦しい時間もあるのだが、あのネットもない時代に、あんな「クジラ百科事典」なものを作り上げた執念みたいなものに感服する。
あの時代にして、実に「クジラ愛」と「嫌われる勇気」を貫いた「万人受けしないであろう文学」だと個人的に感じている。
でも、あの小説、何と言うか、不思議な魅力があるのだ。
あれを読むと、あのおっかないエイハブ船長やカッコいいスターバック兄貴たちと一緒に大勢で「ピークォド号」に乗り込み、乗組員の1人となって伝説のモビィ・ディックを追っているようなワクワクした気持ちになれる。
組織内での人間関係みたいなのも面白いし。
それにしても、あの話、最初に読んだとき、ホントにダラダラ感が凄い!と感じた。
そもそも、なかなか船に乗らないのだ!
実に200ページぐらい、グダグダと「やれチャウダーがうまい」だの「やれ男同士でベッドでどうした」だの、、、しかも、チャウダーが実にうまそうなのだ。
あの小説、ホントに脱線ばかりで、本編の「クジラ追跡」が進まない。。。
では、皆さん、次は「私の好きな3大アメリカ文学」でお会いしよう!
さようなりぃ~。。。
、、、
、、、はい、本記事の本編「クジラ追跡」を続けよう。
メルヴィルぱいせんが下りてきて、正に本記事が『白鯨』状態になってしまった。
さて、出船直後、海鳥が私を追っかけてきた。めんこい。
船はサンディエゴの海をグングン進む。
モビィ・ディックはまだか~い。
まあ、そんなに簡単にクジラも見付からんわけである。
そこそこ歩かないとお目にかかれない中国の動物園のパンダみたいなもんである。
おっ! ありゃ何だ!
何とも、アザラシ観察隊とすれ違った。
そうそう、サンディエゴと言えば、「クジラ」と「アザラシ」なのである。
アザラシについても、ゴチャゴチャと書きたいが、長くなりそうなので、ここは観察隊を横目に先へ進む。
その後、船は暫く真っ直ぐ航海を続けていたが、その内、少し減速し始めた。
船員さんが、マイクでアナウンスする。
「皆さん、そろそろクジラの生息エリアに近付きました。彼らは敏感な生き物なので、逃げてしまわないよう、なにとぞお静かに願います」
私と愛すべき中国人ソウルメイトの「モンキーマジック」さん含め、それまでワイワイと船旅を楽しんでいた乗客たちは、一斉にシーンとなり、船上に緊張が走る。。。
当然、クジラたちがいきなり「ワァーッ!」と出てくることもなく、船もたまにエンジンを切ったりしながら、ゆ~っくりと狙いを定めて海面を漂う。。。
。。。
、、、う~ん、なかなか出てこない。。。
緊張の糸も切れ始めた頃、船上の何人かが急にヒソヒソとし始めた。
そして、みんな「アレ、何?」みたいな感じで1つの方向を指差し始めた。
そのとき!
「モンキーマジック」さんが、海上を指差し、私に囁いた!
「ねえ、アレ見てっ!」
何だ!
、、、
、、、ホントに何だ? 何があるというのだ?
「いや、あそこにホラ、大きな波が打ってる!あれ、クジラの大群じゃないの?」
なにぃ~っ?!
どこどこ?
、、、
「、、、モンキーマジックさん、、、アレって、ただの大きい波じゃないの?」
「あ、そうなの? ふ~ん」
おい!
すると今度は、乗客たちが別の方向を指差し始めた。
、、、!
おぉ~っ!
何か吹いてるぞぉ~!
おぉ~、アレはひょっとしなくても「クジラの潮吹きだぁ~!」
私を含め、乗客一同から歓声があがった。
その後、クジラ数頭の群れは次々と順番に潮を吹き始め、乗客たちの拍手を受けた。
そして、暫く経つとクジラたちも大人しくなるので、船は別のクジラたちを探して動く。
そのたびに「初めて船で偶然乗り合わせることとなったに過ぎない我々一同」は、まるで長年ともにプレイしているレイカーズのメンバーのように一致団結し、「静かにね。クジラ近くにいるから喋んなよ」みたいな空気をお互いに確認し合った。
そして、同様の「潮吹き」アトラクションを発見するたび、船上のみなで盛り上がった。
そして、いよいよ!
おぉ~っ!
待ちに待った「クジラ」の群れが海上に姿を現した!
彼らの尾が海上に現れ、そして再び海中に潜ってゆく。
それを何頭かが交互に繰り返す。
船上の拍手喝采は、まるでパーティー会場のそれのように一段とヒートアップした。
一度では見飽き足らない乗客たちを満足させるべく、船は続けざまにクジラの群れを探し続ける。
クジラの群れを発見するたび、乗客たちはまるで子どものように(実際に子どももいたが)「ヒャッホー!」とはしゃぎ、次の群れを探すときには、一斉に「シーン…」と声を潜めてスタンバイする、、、という姿が、それはそれで、とても可愛らしく、滑稽に感じた。
もちろん私も、その滑稽な集団のいちメンバーであることは百も承知で、すっかり「クジラ待つ阿呆」となり、潮吹き観ては歓声をあげ、尾っぽを観ては感激のときのため息を吐く、といったことを繰り返した。
膨らむ想像力の「答え合わせ動画」を貼るので、ぜひぜひ、そのときの臨場感を少しでも味わっていただきたい。
ひととおりの「潮吹き」の後、、、まあ、直接観ていただければと思う。
大盛況のうちに乗客からはクルーの頑張りとお互いの忍耐力(?)を褒めたたえるかのように、ひときわ大きな歓声と拍手が沸き起こり、クジラたちのショーは幕を閉じた。
『白鯨』の作者の時代から今に至るまで、人々を魅了してやまない「クジラ」という海の生き物。
彼らが私にかけた「大人の心をいっとき子供に戻す」という不思議な魔法は、船を下りても暫く解けることはなかった。
(完)