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素敵なインクボトル
前から欲しかったものを入手しました。
旧タイプのパイロットインクのボトルです。
幸運にも「廃棄を考えている」という方と巡り合うという、
”渡りに舟”みたいな話が舞い込んできて、
その方から譲っていただいたものです。ありがたや。
この旧タイプのインクボトルは、初めて見た時からなんだか懐かしくて、お部屋に飾りたいなとずっと思っていましたが、
「手にする事のないモノなんだろうな」とうっすら諦めていたので、嬉しさも一入です。
いつの年代のものか。全体的なデザインや雰囲気で察することができますが、詳細な年代までは解らない。いいんです、そこまで知らなくて。
譲っていただいたのは、ピュアレッドとブルーブラックの700ccボトル。
ブルーブラックのほうは少しだけ使用したようで、それもまた時代の味がしみ込んでいて良い。
これを眺めながら、「いつ、誰が、どんな」を瞑想するのが楽しいのです。
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どうですか、この堂々とした風格。私のお部屋に花が咲いたよ!
今更ながらロゴ体の恰好良さに気が付いた。
まず、私が知らなかっただけなのだが、ボトルがガラス瓶であることにテンションが上がりまくりました。
写真や画面などを通した情報により、見た目の印象だけで勝手にペットボトルのような素材と決めつけていたのです。(1960年代にペットボトルなんてまだ無いよね)
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ところで私は「懐かしい」という目でこれを見てるけれど、
はたして実体験として見たか?使ったか?となると非常に怪しい。
なんとなく学校の職員室で見たような気がするが、
これも現実なのか捏造された事実なのか、ちょっと判らなくなってきた。
まあいいや、考えないことにします。don't think too muchである。
このビッグサイズ(正式には何と呼ばれていたんだろう)のパイロットインクのボトルを見て、
最初に懐かしいと思ったのは「秋刀魚の味」1962年(小津安二郎監督作品)の一コマで観たときです。
同じ小津映画を何度も観たくなる理由の一つには、その時代のいろいろなアイテムを鑑賞できることにあります。たばこ、醤油、化学調味料、ビール、ウイスキー….。今も変わらない物もあればもう見なくなったものありますね。小津映画は、もはや私の中の「昭和標本」です。
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<秋刀魚の味1962>
旧パイロットインクのボトルを手にしたことで、
「小津映画と私物を共有できた喜び」を噛みしめながらふと思ったのは、
「これどうやって使うの?」ということです。
ボトルで供給される程、インクの使用頻度が高かったのかな?
このボトルが活躍した時代は、まだボールペンが普及していなかったのかな?
また、小津映画では小瓶に移し「つけペン」式で使っているのを確認できます。
その様な憶測で大方は外れてはいないと思うのですが、
実際にどういう使い方をしていたのかが、はっきりとイメージできません。
現在も大きめのボトルのインクがあるのは、ネットで見て知っていたものの、どんな使われ方をしているのかが、今一つピンとこないのです。
ネットで調べれば一発なんですが、せっかくアナログアイテムを手に入れたので、ここはアナログに徹して文具店で聞いて見ることにしました。
とりあえず文具店のインクがあるコーナーに行ったら、なるほど、だいたい解りました、万年筆ですね。
このボトルが活躍した時代は、万年筆の使用頻度が高かった訳です。
ところで、万年筆のインクといえばカートリッジ式しか知らなかった私。
恥を凌いで小瓶のインクを「これどうやってカートリッジに入れるんですか?」と尋ねたところ、”コンバータ”というものがある事をお店の方に教えてもらいました。なるほど。
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ドン引きされること請け合いなので。
となると、コンバータ式の万年筆を使ってみたくなりますね。
お店の方に「万年筆使った事ないのですが」と前置きしていろいろ聞いたら「kakuno」という初心者向けの万年筆を教えていただいた。
そこでちょいと使ってみる事にしました。1000円也。
50代にして万年筆デビューです。
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へえー、なるほどやってみて解った。こういう一手間は好きです。
私が小さい頃の古い写真アルバムに、親父が書き残したと思しき写真へのコメントを思い出しました。(あれは万年筆で書いてるよね)
コンバータにインクを注入する。
この所作は、なんだかアナログレコードを聴くのに通ずるめんどくささを感じて、実に好感が持てます。
書いてみると書いた感触も気持ちいい。紙にインクが馴染む感じも万年筆の独特な味なのかとても新鮮です。
しばらくメモ帳用で使ってみようと思います。
ちなみに私の愛用の手帳はロルバンなのだが、なんだろう、この黄色みがかったノート地への書き味が妙に気持ち良いのである。
もうずっと書き続けていたいです。
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「秋刀魚の味」また観ようかな。
素敵なインクボトルを手にした事で、万年筆デビューしてしまったという妙なお話しでした。
最後まで見てくださりありがとうございました。