ケッショウーそれは心が踊るー#2

ジリリリリリリリリリリリ……
トルバ「ん、うーん……」
目覚まし時計が鳴り響く部屋で、俺は目を覚ました。
トルバ「朝か……ん?」
イロハ「ニャー……ニャー……」
トルバ「……ふふ、寝息が鳴き声みたい。」
自分の布団の中に、可愛い後輩が潜り込んでいた。
昨日はあれだけ一緒に寝ないと言ってたくせに。
悪戯の一つでもしたくなったが、可愛い寝顔を見ていたいので敢えて見逃す。
トルバ「さーて、今日こそは仕事をしなきゃ。」
昨日から何でも屋を開業するつもりだったのに、あの結晶を手に入れてから嬉しくなって、そのまま魔王と勇者をボコボコにしてきてしまった。(ケッショウーそれを食べれば『なれる』ー#1参照)
まあそれがネットニュースで拡散されたから、これから開業すればその腕っぷしを頼りにしようとする人が出てくるはずだ。
イロハ「……にゃ?」
トルバ「お、起きた?おはようイロハ。」
イロハ「……へ?///」
トルバ「あれーおかしいなあ?昨日はあんなに一緒に寝るのやだって言ってたくせに。」
イロハ「こ、これは違います!違うんです、その……」
トルバ「ふーん、何が違うのかな?」
イロハ「ち、違わないです……///」
トルバ「まあいいや、ちょっとチラシ作るからご飯待ってね。」
イロハ「えっ!先輩がご飯作ってくれるんですか!?」
トルバ「うん、いつも寝坊助だから作れてないけど、基本は俺が作ろうかなと。」
イロハ「やったー♪︎先輩のご飯大好きー♪︎」
トルバ「へへ、可愛いなイロハは。よし、急いでチラシ作るからな。」
トルバは恐ろしい早さでチラシを作り上げた。
トルバ「これでよし。」
イロハ「何て書いたんですか。」
トルバ「『魔王を倒した僕、何でも屋始めました。』って書いた。」
イロハ「おお!カッコよくて良いですね!ええと、魔王を倒した僕……え?魔王?先輩、魔王倒したんですか!?」
トルバ「うん。昨日リーグスに会いに行ったから、ついでに倒してきた。」
イロハ「ついでって……物理で?」
トルバ「うん、それだけで倒した。あいつが弱すぎるだけな気もするけど。」
イロハ「あの、全然弱くないですから。魔族の王様ですから!イケメンでカッコいいですから!」
トルバ「ああ、そっか、イロハ魔王のファンだもんね。」
イロハ「やってることは許せないけどそれはそれとしてカッコいい!……でも倒されちゃったのか……複雑。」
トルバ「大好きな先輩に大好きな魔王殺されて、可哀想にね。」
イロハ「うーーー!」
トルバ「まあ取り敢えず、これをピーアルに届ければ宣伝してくれるよ。」
トルバはそう言いながら電話をかけた。
トルバ「もしもしピーアルさん?チラシ配って欲しいんですけど。」
ピーアル「おう!もう店の前にいるぜ!」
トルバ「えっ早!?」
トルバは急いで身支度をして外に出た。
ピーアル「おっす!」
トルバ「流石ピーアルさん、情報仕入れるの早いですね。」
ピーアル「ここが開業するのは前々から知ってたからな!」
鳥のようなモンスターが誇らしげに胸を張る。
トルバ「それじゃ、このチラシを配ってください。」
ピーアル「任せとけ!今度飯奢ってくれよ!」
ピーアルはそういって空へ飛んでいった。
トルバ「すげえやあの人。」
イロハ「あ、あの…」
トルバ「おう、どうしたイロハ?」
イロハ「ご飯、まだですか?お腹空いちゃって……」
トルバ「おお、そうだったそうだった。朝ご飯食べようね。」
イロハ「えへへ///」
トルバはほぼ高速でご飯を作り、僅か10分で全てのご飯を完成させた。
トルバ「イロハお待たせ~!」
イロハ「うわーー美味しそう!!」
イロハが目を輝かせて喜んでいる。良かった、朝から高速で動く羽目になったけど、この顔が見れて良かった。
トルバ「ふう、何か朝から疲れた。いただきます。」
イロハ「いただきます♪︎」
イロハが美味しそうに食べ始める。よかった、本当に良かった。取り敢えずこの国宝級の顔を写真に収めてスマホの待ち受けに
トルバ「うっ!ゴホゴホゴホ!」
イロハ「先輩!?大丈夫ですか!?」
トルバは突然喉から何が出てくる感覚に迫られた。強いチクチクとした違和感、一体何が?
トルバ「ゲホッ、ゲホゲホゲホ!」
イロハ「先輩、喉に何か詰まっちゃいました?」
トルバ「い、いやたぶん大丈夫、心配かけてごめ」
トルバがそう言いながら体を起こそうとすると、手のひらにあの結晶が黒ずみ、割れた状態でついていた。先程、手で口を抑えた時に、咳と一緒に出てきた結晶がついていたのだ。
トルバ「……ごめんイロハ、やっぱ大丈夫じゃないかも。」
イロハ「えっ!もしかして……命に関わる」
トルバ「特殊能力が失くなったーー!」
イロハ「ええ!?どういうことですか!?」
トルバはこれまでの経緯をイロハに話した。
イロハ「先輩、それって……」
トルバ「グスン、せっかく強くなれたのに……」
イロハ「違法ド○ッグじゃないですか!?」
トルバ「ええ!?」
イロハ「騙されてはいけません先輩!多分それはクスリの幻覚で、特技なんか使えるようになってないんですよ!」
トルバ「いやいやいや!リーグスのは特技で勝ったし、使えるのは本当だよ!!」
イロハ「正気に戻ってくださいーー!先輩は努力以外何もできないゴリッゴリの脳筋人間じゃないですか!」
トルバ「正気だよ!そしてやかましいわ!」
イロハ「そ、そうだ!保健所に相談したらどうにかしてくれるかも!電話しなきゃ。」
トルバ「やめてくれ!」
ヒュンッ
イロハ「え?」
イロハが振り向くと見知らぬ男性が立っていた。
イロハ「ちょ、ちょっとあなた!不法侵入です!今すぐ帰ってくだ」
クデラ「これ食え。」
トルバ「うわ雑。まあいいやありがとう。」
イロハ「あ、あ……(取引してる!他人の部屋入ってきて違法ド○ッグの取引してるよ!)」
トルバ「例のごとく代金は要らないんだな?」
クデラ「もちろん、それゴミだし。」
トルバ「とうとう隠さなくなってきたな。」
クデラ「あっ、そうそう、私謹慎くらったんでしばらく来ません。何でこの1日分が最後です。それじゃ。」
トルバ「あっちょ!」
ヒュンッ
トルバは即行で消えた。
トルバ「謹慎って何したんだろうあの人。んーにしてもこれが最後かー、惜しいなー。」
イロハ「先輩、もう手遅れです。早く自首してください……」
トルバ「だから違法じゃないって!もし本当に違法なら精神がおかしくなってるから!」
イロハ「特技を使うだなんて虚言を吐いているじゃないですか!」
プチンッ
トルバの中の何かが切れた。
トルバ「虚言?馬鹿にしすぎだろ、俺のこと。」
イロハ「せ、先輩……?」
トルバ「俺だって……俺だって、皆みたいに特技が使えるんだ……これさえ食べれば。」
トルバは結晶を握りしめた。
トルバ「ありがとうイロハ。もう明日からここ来なくていいよ。」
イロハ「えっ!?そんな、そんなの嫌です!」
トルバ「俺一人で……俺一人で構わない。俺を信じられるのは俺一人で……」
イロハ「せ、先輩、あの!」
ピンポーン!
インターフォンが鳴った。
トルバ「お客さんが来た。掃除、やっとくから。」
トルバはそれだけ言って部屋から出ていった。
イロハ「そ、そんな……」
イロハは一人、部屋の中で静かに泣き崩れた。


トルバ「いやーすみません!掃除が済んでいなかったもので散らかっちゃってますが、こちらにお掛けください。」
トルバは依頼人をソファーに座らせてお茶を差し出した。
トルバ「それで、ご依頼の方は」
富豪「わしと遊んでくれ!」
トルバ「……」
富豪「どうした?できないのか?」
トルバ「あ、いえいえ!できますとも……ただ、本当にそれだけで宜しいんですか?」
富豪「ああ、それだけで構わん!わしはとにかく暇なんじゃ!今まで様々な者と遊んだが、どいつもこいつも接待ばかり!男ならしっかり向き合って勝負しろってんだ!」
トルバ「おお、そうですかー、確かに、あなたのような人物と対等に遊んでくれる人は、少ないのかもしれませんねー(でもそれ、俺じゃなくても良いんじゃない?)」
富豪「うむ!だから向かいにある何でも屋にも頼んでおいた!」
トルバ「うわっ!?心読まれた!というか向かいに同業他社いんの!?」
???「いるさ、我ら四神獣がな。」
トルバが声のした方を向くと、そこには自分の召喚した四神獣が立っていた。
富豪「そうそう、この方たちにも頼んでおいた!何やらこっちに頼むと無料で一緒にやってくれるらしいのでな!」
トルバ「何そのサービス!?許可なく決めないでよお前ら!」
白虎「トルバ、俺たちはお前から解放されたことで、お前の行動を模倣する独立した存在となったのだ!!」
トルバ「ん?ごめん、自立してるのか依存してるのかどっち?」
玄武「そこで、お前に勝負を仕掛ける。」
トルバ「ごめんそれも何で?」
青龍「ルールは簡単。お前と同じ仕事をして、俺たちが客を満足させられたら俺たちの勝利、お前が満足させたらお前の勝ち。これで行くぞ!」
トルバ「うーんよく分からんけど一つ条件をつけよう。」
朱雀「何でしょう?」
トルバ「これからこういうことをやるのを許す代わりに今回のサービスをこれからも続けること。そうすれば、俺の仕事の宣伝になる。」
青龍「良いだろう。勝負だ宿主!」
富豪「ワッハッハ!愉快愉快!どっちが勝つか、とくと見させてもらうぞ!」
こうして、よく分からない勝負が始まった。

富豪の邸宅
富豪「わしがやりたいのはダーツと天体観測!この2つの両方でわしを満足させることができれば、そちらが勝ちとなる。良いな!?」
朱雀「なるほど、分かりました。トルバさんもそれで良いですね?」
トルバ「別に?俺は何でもいいよ。何でも屋だけに。」
富豪「上手い!1ポイント!」
白虎「ん?何のポイントだ?」
富豪「勝敗とは別にポイントをつける。そのポイントに応じて褒美をやろう。」
白虎「なるほど、布団が吹っ飛んだ!」
富豪「寒い!-1ポイント!」
白虎「マイナスって何!?」
玄武「何をしているんだ白虎!寒いのはお前の呪文だけにしておけ!」
白虎「○すぞ!」
富豪「では早速始めよう!まずはダーツからじゃ!」
富豪は俺たちをダーツができる部屋に案内した。
富豪「では始めよう!わしと勝負して勝つこと!これがわしが満足する条件じゃ!」
トルバ「分かりました。必ず満足させて見せます。」
玄武「ああ、こちらも全力でやる。」
青龍「まずは俺からだ。ここらでお遊びはいい加減にしろってところを見せてやりたい。」
トルバ「見せちゃったら本末転倒だろ。遊びに来てるんだから。」
富豪「よーし!気合い入れていくぞ!必中魔法 アルターヒット!」
富豪の投げたダーツは100点に命中した。
トルバ「ええ!?」
朱雀「あそういう感じ!?」
青龍「ちょっと待て!?あんたそれチートだろ!?」
富豪「何を言っておる!?こんな呪文誰でも使えるじゃろ!」
白虎「使えねえよ普通の人は!」
玄武「しかし、あのご老人の中ではあれが『普通』。つまり俺たちはあれをどうにかしないといけないってことか……。」
朱雀「厄介ですねこれは……」
トルバ「よし、じゃあ俺がやるよ。」
白虎「流石のトルバでも100点じゃ無理ゲーでは?」
トルバ「そうだね。でも100点を入れないことには始まらない。」
トルバはそう言うと結晶を食べた。
トルバ「あ~またグニャングニャンに~~~」
朱雀「これじゃ、違法薬物扱いされても仕方ないですよね。(コショコショ)」
白虎「保健所行った方が良くね?」
トルバ「そこ、亡き者にしてやっても良いんだぞ?パラドックス!リークアタック!」
トルバは自分に向けてダーツの矢を投げ、それをリークアタックで跳ね返した。
矢は真っ直ぐ飛んで中央を射る。100点だ。
玄武「なるほど、反射魔法か!」
朱雀「もはや彼のは魔法とは全く別物ですが。」
富豪「やるな~貴様!ではそこの龍人、やってみよ!」
青龍「任せてくださいよ。必中魔法 アルターヒット」
朱雀「何!?そんな馬鹿な!」
青龍「反転!」
青龍は横を向いてから、自分に向けて矢を飛ばした。
青龍「これは軌道をずらす魔法。この矢は魔法で弾かれて、真横に飛んでいく。そして!」
シュパ!
青龍「的にきれいに刺さる。」
玄武「おお~」
富豪「うむうむ。必中魔法は何もアルターヒットだけではない。反射魔法のようなものはどんな力や風向きでも一定方向に跳ね返す。それが理解できれば、あらゆる魔法は必中魔法になるのじゃ!」
トルバ「甘いっすよ爺さん。」
富豪「む?」
トルバ「今ので分かりました。このダーツの本質は……」
ジュパーン!
トルバはすごい早さで矢を投げ、ダーツの的を射た。
白虎「す、すげえ!矢がずれる前に高速で投げやがった!」
富豪「な、何と……!」
トルバ「普通の人は投げたら軌道がブレるけどな。下半身の、少ない力だけで投げれるようになれば造作もない。」
青龍「あいつ、どうなってんだ?普通上体使っちゃうだろ……」
朱雀「やっぱ例の薬では」
トルバ「デフォルトです!本当に!」
富豪「ナッハッハ!もはや魔法に頼らないという境地へもう達するとは!上達が速いな!」
青龍「え、ダーツって本来そういうもんだよね?」
トルバ「ね。」
こうして、富豪とトルバ、四神獣の戦いが始まった。
トルバはひたすら力と反射魔法で100点を取り続け、富豪は急に魔法を使わない縛りを始めて成績はゴミに、四神獣は惜しくも玄武と朱雀が80点を取ったため、最終的にはトルバが優勝した。
富豪「ワッハッハッハ!良かろう良かろう!トルバに2ポイント、お前たちには1ポイントじゃ!楽しかったぞ!」
玄武「くそ、こちらは未だ0ポイントか……」
白虎「面目ない……」

一方その頃イロハはーー
イロハ「うう……えぐっえぐ、先輩の馬鹿ぁ……」
家を追い出されて仕方なく荷物をまとめて彷徨い歩いていた。
イロハ「一人で生きるなんて嫌だよぉ……」
リーグス「あれ?イロハちゃんじゃん!どうしたの。」
イロハ「へ?」
イロハが顔を上げると、そこにはリーグスとその一行が立っていた。
イロハ「リ、リーグス先輩……」
リーグス「どうしちゃったのイロハちゃん!?そんなに泣いちゃって……そうだ、トルバは?あいつはどこへ?」
カジル「何だ?その子知り合い?」
リーグス「うん、大学の後輩なんだけど……泣いてるみたいで。」
カジル「可哀想に。何があったか、話してもらえる?」
イロハ「じ……実は……」

富豪「よーし、次に移るぞ!次は天体観測じゃ!さあ、わしに天体を見せよ!」
玄武「天体って……そんなもん、望遠鏡で見れば良いだろ。」
富豪「いいや、わしは降ってる星が見たいんじゃ!」
トルバ「はあ……流れ星ですか?」
富豪「そうじゃ。しかし、ただ降っているだけでは足りんぞ!しっかりこの庭まで降らすのじゃ。」
富豪は彼らに自分の庭の地面を指差した。
青龍「え、ええ?良いんですか?こんなにきれいな庭なのに……」
富豪「たまになら構わん。広すぎてもはや一つの自然と化しておるしな。変な窪みがあってもそれもまた自然じゃろう。わーはっはっはっは!」
青龍(まずいぞ……我々にそんな奥義はない……このままでは大して満足させることができないまま終わってしまう。)
玄武(青龍、俺に考えがある。) 
玄武と青龍は目配せだけでテレパシーのように会話を行う。
玄武(俺があの術を使って星が降っているように見せかける。)
青龍(なるほど、すごい速さで落とせば何だか分からないからな!)
トルバ「さて、こいつらは恐らくそんなたいそうな呪文や特技は持っていないはずだから、ここは俺から先にやるよ。」
白虎「おいおい、甘く見てもらっちゃ困るぜ!」(特に算段もないけど。)
朱雀「私たちを見くびってもらっては困りますよ?」(本当にそんな技誰も持ってないけど。)
話を共有できていない二人が虚勢を張る。
青龍「まあまあ良いじゃないか。どちらから先にやろうと変わらない。お先にどうぞ?」
トルバ「ああ、見せてやるよ。俺の新たな力。」
富豪「うむ、それじゃあトルバよ!わしにダイナミックでアメイジングな流星群を見せてみよ!」
トルバ「パラドックス スターストーム。」
トルバがそう唱えると、次々と流星が落下し、辺りは巨大な隕石だらけになった。
富豪「おおう!これこそわしの見たかった光景じゃ!」
朱雀「く、何という力だ。」
玄武「凄まじいな。これがパラドックスの力……!」
隕石が降り終わり、辺りは巨大な天体が複数個残った。
玄武「流石に邪魔ですね。今破壊します。厄災操術 シェルスマッシュ!」
玄武がそう唱えると、無数の亀の甲羅が現れた。甲羅は着弾すると爆発し、次々と隕石を壊していく。
玄武「よし、一通り片付いたな。」
富豪「いやー面白いものが見れた!ありがとうトルバ君!」
トルバ「へへへ……」
玄武「では、続いては私がいきましょう。」
富豪「ほう、どれ、見せてもらおうではないか。」
玄武「厄災操術!スターシェル!」
玄武は特技を使い、次々と何かを落としていく。しかし、それは隕石ではなく、巨大な甲羅だった。
白虎「何ー!?玄武の奴あんな技を!?」
朱雀「使えるのか……いやあれはもしや……」
富豪「おおう!これまたすごいのう!」
トルバ「確かにすごい……こんな技が彼らに……ん?」
青龍「すごいでしょう!玄武は器用なんですよ!」
富豪「そうかそうか!奴もなかなか面白い。」
トルバ「待ってくださいご主人。この男の降らせているものは、ただの甲羅です!」
四神獣「何!?」
青龍「お、おいおい、言いがかりはよしてくれトルバ。我々のような気高き生き物がそんなことするわけないだろう。」
青龍はトルバに詰めよった。
トルバ「青龍、確かに玄武は器用だ。先程俺が降らせた隕石と同じ大きさの甲羅を生成して、かつ高速で落としているからな。でも、俺の目は誤魔化せないよ?」
朱雀「……なるほど、やはり、そういうことでしたか。」
青龍「ま、待て待て!証拠もないのに疑うのは良くないぞ!見ただけで判断するのはナンセンスだ!」
トルバ「そうだね、でもそこに落ちてるじゃん。鱗がさ。」
青龍「なっ!?」
青龍はトルバの指の指す方向を見る。
そこには降らせた甲羅の破片が落ちていた。
玄武「く、くそ、バレてしまったか……」
玄武は特技をやめ、富豪に謝罪した。
玄武「申し訳ありません。私たちには、隕石を降らせる術式はできません。強いてできるとすれば、この技しか浮かびませんでした。本当に申し訳ない……」
富豪「……もう良い、そんな細かいことを気にする……いや、見える歳ではないわ!」
玄武「へ?」
富豪「わしはあまり目が見えん!望遠鏡では星がボヤけて見えんのじゃ!だからお主らに、目の前で降らせて欲しかったのじゃよ!」
玄武「そ、そうだったんですか……」
富豪「ぶっちゃけそれっぽければ何でも良い!良いものが見れてハッピーじゃ!ワーッハッハッハッハ!」
白虎「面白い奴だなあいつ。」
朱雀「ええ、そうですね。」
朱雀は肩をすくめてクスクス笑った。
ズガーーーーーン!
一同「……!」
平和だった庭に突如として雷が落ちた。








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