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1000文字小説(118)・ミッキーマウスは、マスク嫌い?(検証)
「あのさ。今も、インフルエンザ流行しているけど。特に、数年前のパンデミックの時にさ、気がついたことない?」
こう切り出してきたのは、東子。
東子は、大学院生。
俺のガールフレンド。
専門は、言語学。
英語のレベルは、プロ級。
フランス語も、韓国語も達者。
見た目はキュート。
頭もいい。
出来過ぎたガールフレンド。
久々のデート。
数年ぶり。
キュートなキャラで溢れかえるディズニーランド!
ミッキーマウスやドナルドダックやミニーマウスが、ダンスを踊っている。
楽しいミュージック。
そんな中、東子の突然の質問。
「何だよ。また、その話かよ」
俺は苦笑い。
東子は、パンデミックの時、デートが何度もキャンセルになったことを未だに根に持っている。
俺のせいじゃない。
いい加減にせい。
俺は文句を言おうとする。
だが、東子の反応は予想外だった。
「ミッキーマウスがなぜ、マスクが似合わないか知っている?」
こう、切り出してくる東子。
「え?」
「あのパンデミックの時、こぞって、日本のゆるキャラやアニメの著名キャラクターが、インフルエンザ用のマスクをしていたと思うの」
「うん。していた」
俺はドラえもんや、キティちゃんがマスクをしていたのを思い出している。
「でも。ミッキーマウスや欧米のキャラクターってマスクをしていなかったでしょ。仮にしていても、マスクが似合わなかったと思うし」
「そういえばそうだ」
「日本人がキレイ好きだからか?」
「ハズレ」
東子は話し続ける。
「あなた、プロフィールの和訳ってできる?」
「プロフィール?」
「そう。あのプロフィール」
バカにしている。
プロフィールくらいは知っている。
「履歴書……まあ、つまり、その人の学歴や職歴や性格みたいな意味だろ」
「うん。本来は、横顔って意味なの」
「横顔?」
「そう。欧米では、“横顔”のシルエットのロゴって多いでしょう。あれって、欧米人は横顔に、その人の特徴が出やすいと考えているからなの。それと比べてアジア人の横顔ってつまらないでしょ。個性がない……」
「ああ。そうかもな」
「つまり、欧米のキャラクターデザイナーは、キャラのプロフィールが出やすい“横顔”にこだわって作っているのよ。日本では、そうした“横顔”にこだわる文化がない、だから、扁平な顔のキャラデザインが多い。ドラえもんやキティちゃん。みんなそうでしょ……」
「へえ。それが、ドラえもんにマスクが似合って、ミッキーマウスにマスクが似合わない理由か!」