1000文字小説(91)・やばい、リサイクルショップ(超こわくない話/ギャグ劇団笑)
僕は寺の息子。本当は怖がりだが見えちゃう。
くやしいが、ただの「弱虫」。
今日、浅草線の中で、幼馴染のタクミとばったり会った。
タクミは意地悪な奴。
こいつは母親が本物の「魔女」。魔女の息子は大人たちにばれないように不思議な「妖術」を使って惑わしてくる。
下手なイジメよりたちが悪いほど。
「おおっ。怖がりなお寺の子、見っけ」
電車の中でタクミはニヤニヤ笑いながら近づいてきた。
嫌だな。
「おい。ちょっと付き合え」
タクミは隣の席に座る。
「どこへ」
「浅草橋だ」
「浅草橋?」
「ああ。ちょっとやばいショップがあるんだ」
「やばい店?」
「ああ。本当に怖くないなら、俺について来いよ。それともキサマは怖くて耐えられないかな。また小便漏らすかな。幼稚園の肝試しみたいに」
こいつは、僕が幼稚園のレクレーションの肝試しで、小便を漏らしたことを覚えている。
そして未だにしつこく触れてくる。
この辺が、性格が悪いと言われる所以だ。
「うるせぇな」
僕は喧嘩に乗ってしまった。
こんな時、変なプライドは邪魔になるだけだ。
そして、僕はものの見事に、後から後悔することになった。
「こっちだ」
タクミは駅につくと、勝手に歩き始めた。
通行人のいないさびれた通りを歩いていく。
霧が出てきた。
タクミの妖術のせいかもしれない。
「あそこだ。怖い店」
タクミが指さす。
「何の店だ」
「リサイクルショップだ」
「なぜ。あそこが怖いんだ」
理由はまだわからない。
取り壊し寸前の建物。まともな連中なら、あんな店で買い物することはないだろう。
「あの店の中を一周してきたら、認めてやる」
タクミ。
「何をだ?」
「キサマがちょっとは、大人になったということ。弱虫な小便こぞうめ」
(うるせぇよ)
僕は歩き出した。
店内は埃だらけ、ガラクタばかりだった。
だが、そんなに怖くない。
奥に老夫婦が座っている。
店主の夫婦。眠っていて反応しない。
「すみません」
夫婦の前を通る。
次は古い家電コーナー。
結局、無事に外に出ることができた。
「全然怖くなかった」
僕は笑う。
「そうか」
「当然」
「老夫婦みたか」
「店の主人だ」
「違う」
「違うって?」
どうみても夫婦は幽霊でもなんでもなかった。
妖術のせいで霧が濃くなる。
「あの夫婦は販売される商品なんだよ。あのショップでは、不要になって山に捨てられた高齢者を安価で売ってるんだよ」