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1000文字小説(126)・サンドウィッチ⇔遠足⇔恐るべき復讐(ギャグ)

一枚の写真。

学校指定のジャージを着たクラスメート。

そう。
そこには、愉快気に笑っている俺。

あれほど、悲惨な結果になるとは、夢にも思っていない。
そんな笑顔。
俺は、サンドウィッチを手にしている。これから、頬張ろうとしているところ。

周囲には、2名の舎弟たち。

右のヤツは、パン屋の息子。

左のヤツは、ジャム屋の息子。

遠足の写真だ。

そう。
それは、楽しい遠足になるはずだった。

俺は当時、学校一のガキ大将として、たくさんの舎弟を引き連れて、小学校人生を謳歌していた。

女にはもてないが、男たちは、誰もが俺に敬意を払って接してくる。

遠足前日。
昨日のこと。

「君らの店の商品を使ったサンドウィッチが食いたい」

俺はジャム屋とパン屋の息子たちに命令した。

「喜んで」

「右に同じ」

頷く舎弟たち。

その遠足は、現地で簡単なランチを作って食べるという趣旨だ。

俺たちの班は、サンドウィッチを作って食べることになった。

ジャム屋とパン屋が舎弟なのだから当然だ。

何の問題もないはずだった。

だが、その夜――

2度の電話。

舎弟たちの実家から。

双方とも怒り狂った親たちが、電話口で怒鳴り散らしているという有様。

「おい。うちの子が嫌がっているのに、無理やり、店の高級ジャムを持って遠足に来いと命令したと泣いているんだ! どうなっているんだ!」

ジャム屋の店主だった。

バカ。
こういう連中を、子供たちの気持ちを知らずに、過保護にするゴミのような親というんだ。

俺の率直な印象。

俺は、居留守を使った。

適当にあしらってくれと、ジェスチャーで伝えた。

「何かの聞き間違いでしょう」

母親は電話口で、適当にあしらってくれた。
親の鏡。

すぐに2本目の電話。

「おい。うちの子が嫌がっているのに、無理やり、店の高級パンを持って遠足に来いと命令したと泣いているんだ! どうなっているんだ!」

これは、パン屋の店主である。

ジャム屋と変わらずバカ丸出し。

「何かの聞き間違いでしょう」

母親が適当にあしらってくれる。

当日。

舎弟たちが親を説得して、用意してくれたジャムとトーストでサンドウィッチを作る。

貪り食った。

上出来。

高級ジャムと高級トーストだから当然。

だが5枚目を食っていると、異変に気付く。

ジャムの入った瓶の底から、物凄い量のカビ。

トーストからはゴキブリと思しき羽……

親たちの復讐。

舎弟たちも、サンドウィッチに口をつけていない。
知っていたらしい。

ガッデム。

俺は、1週間学校を休むことになった。



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