山下澄人『しんせかい』  

『おれに聞くの?: 異端文学者による人生相談』を読んで、小説も読みたいと思っていた小説家の芥川賞受賞作品です。でも以前図書館で借りたら1ページで挫折して図書館に返し、最近の作品の抜粋を作者本人がnoteに挙げていたのを読んだところ、面白かったけど読むのに骨が折れたので、ちょっとびくびくしながらこれを読み始めましたが、これは思いのほかすいすい読めて、かつ、おもしろかったです。

 いや、思いのほかというか、私にとっては、日本人の、今生きている人の、ジャンル系ではない小説の中では、いつになくおもしろかったです。近頃、現代の純文学系の日本語の小説は、面白いとわかっている幾人かの作家以外はほとんど読んでおらず、芥川賞作品など、避けて通っていました。でも、これはすらすら読めつつ時間の無駄と言う気がしませんでした。

(すいすい読めて、とか、すらすら読めつつ、とかいうのは、だから小説の価値が高いとか低いとかいうこととは関係なく、私の集中力が最近続かなくて全然ものが読めないので、すいすい読めるのはありがたかった、と言っているだけです。)

 ただ、何が面白いかということを述べることは難しいです。物語の素材自体は、山下澄人自身が19歳の頃、倉本聰の富良野塾にいた1年目の話です。おもしろいのはその語り口で、読むと、何とも言えないおかしみが感じられるのです。

 とにかくおもしろかったので、なんかもうちょっと気の利いた感想を書きたかったのですが、こんなんでごめんなさい。