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自然農2年目の畑 種から育てて初めて分かる有難み

こんにちは。 長野県筑北村、泊まれる猫カフェ「クラシコ」の岡本です。6月に入った初夏の筑北村ですが、相変わらず寒暖差が激しく、今日は梅雨寒。 先日、コタツ布団を洗って片づけましたが、本日(6月14日)再びコタツがセッティングされ、猫達共々コタツに根が生えています。

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さて、昨年、2枚の田んぼに畝を立て、YouTube頼りに見様見真似で始めた自然農ですが、今年は2年目となり、更に新しい畝を立て、育苗床も作って圃場も充実。今年は作物の種類も増やし、猫カフェ業務より畑仕事の比率が圧倒的に増え、農家に傾いております。昨年は試験的な栽培だったので苗を買って植えてみましたが、何しろ畑が広いもので植える数も尋常ではなく、苗ではお金が掛かって仕方ないので、今年は種から育てると決め、年末位から種を選んだり買ったりして準備していました。

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種の魅力は値段の安さと種類の多様さ。例えばキュウリひとつ取っても、様々な種類の種が売っています。あとは、苗としては出回らない珍しい野菜の種も沢山あります。沢山収穫できたら野菜をネット販売しようと目論んでいる私としては、どこにでも売っている野菜より、高級スーパーやデパ地下でしか買えないような珍しい野菜の方が値段が付けやすいのですよ。へへへ。

そんな魅力的な種達をネットで探していると、ついつい買い過ぎてしまい、気づけばケースに入りきらない程の種コレクションになってしまいました。
これが種マジックでしてね、袋に描かれた美味しそうな写真とコピーを見ていると、「この種を蒔くだけで、こんなに甘いメロンができるんだ!」「この種を蒔けば、アイスクリームみたいな甘いトウモロコシが沢山食べられるんだ!」とポイポイ買う訳ですよ。値段も1袋数百円で、少ない物だと10粒、多ければ100粒以上の種が入ってるので、種から育てればメロン1個分の値段で何10個も収穫できるなら絶対お得じゃないですか。これぞ、畑持ちの特権。で、種が届いたらワクワクしながら育苗トレーに種を下す訳です。一日も早く美味しいメロンやトウモロコシを食べたいから、3月でも外が氷点下になるこの極寒地で、冬場は24時間エアコンが入り、この家で一番暖かい猫部屋で室内育苗。大事なトレーは猫にイタズラされないように猫ケージの中にいれ、猫カフェの猫ケージに猫が入れず、育苗室になる珍百景。土が乾燥しないように新聞紙で包み、毎日、霧吹きで水をかけ、芽が出るのを今か今かと待ちわびる日々、しかし。 芽が出ないのですよ。 何日待っても、何週間待っても、何か月待っても、芽が出ない。そう、種育苗のハードルその1「発芽しない」。

そもそも種は発芽率というのがあり、全ての種が発芽するとは限りません。そして、種は種類によって細かく「発芽条件」というのが分かれていて、条件が合わないと発芽しないのです。長くなるのでその話は割愛しますが、発芽してもすぐに現れるハードルその2「育たない」。漸く発芽し、喜んで日中は陽に当て、夕方は家に入れてとお世話しますが、苗が大きくならないのです。大きなピーマンが取れるはずの苗なのに、この苗では米粒ほどのピーマンしか取れないじゃないか、超ミニチュアシリーズかと思う程、ズッキーニもトウモロコシもなかなか大きくなりません。


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(↑)セルトレーで発芽したピーマン

そんな中でも少しづつ大きくなってきた苗は、トレーから移植しなければなりません。そう、ハードルその3「移植のダメージ」です。小さな種から発芽した大事な苗の赤ちゃんを大きな場所で育てられるようにポットに移すのですが、どうしても根に傷が付いたり、土の種類が変わったりして苗にダメージがでます。折角、ポットに移したのにそこで枯れてしまうケースもあり、今までの苦労が水の泡。更にポットで大きく育ったとしても、最終的には畑の畝に定植させなければならず、温室育ちの苗にとって、温度、風、虫と畑で大きくなって実を付けるまでには難関が待ち受けています。

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(↑)種から育てたズッキーニ

自分で育苗してみると、苗の値段が高い理由が分かります。芽が出たとしても、なかなか売り物の苗ほど立派には育ちません。それでもいくつかは種から畑で大きく育ち、ズッキーニも花を咲かせ始めました。「あの小さな種が立派になって・・」と、もうこれだけで感無量ですが、目的はあくまで野菜や果物の収穫。これからも実が付くのか、虫に食べられないか、病気にならないか、鳥や鹿に食べられないか、と実際に収穫するまでのハードルはまだまだ続きます。

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(↑)防虫ネットで守られながら畑で成長中の白いトウモロコシ「アイスクリームコーン」。果たして無事に人間の口に入ることがが出来るのか⁈

もう種の袋を見て、「この種を蒔いとけば、これができるのね。」と夢見る少女ではいられません。そして、巷で売っている野菜の値段を再認識し、「育てるより買った方が安いわ。」と思います。でも、だからと言って自然農を止めようとは思いません。収穫を経費や労働に対する報酬として考えればとてもやっていられませんが、私にとっては畑仕事自体が楽しみであり報酬です。肥料や農薬を使う慣行農法であれば、収穫量は増えてもこれほど楽しくはないでしょう。自然と向き合い、自然に合うように考え、自分もその一部になる。去年は上手くいっても、今年は同じようにならない。いつの間にかマニュアル化された社会が当たり前になっていた私には、結果の見えない自然との付き合いが新鮮で、立て続く失敗すらも楽しめるのが自然農の醍醐味だと感じています。

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