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読み返したくなる短篇

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黙ってたのしく読み返していてもいいけれど、あえて考えてみる。なぜ自分はこれらを読み返したくなるのか。
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#SF

清新であること、残酷であること、美しくあること――「あなたの人生の物語」

【マガジン「読み返したくなる短篇」バックナンバー】  ほんの1カ月前まで、最近ほとんど小説読んでないなと思ってたけど、ここ3週間くらいで長い間積読になってたぶ厚い本(どちらも500頁超えでSF)を2冊、ペロッと読んだ。ひとつは「あなたの人生の物語」を含むテッド・チャンの同名短編集で、もうひとつは飛浩隆の『グラン・ヴァカンス』。いずれもとてつもなくよくて、後者の巻末ノートの一節が胸に響いた。 清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってS

なぜか夜中に読み返したくなる不穏で律儀な名篇――「変種第二号」(フィリップ・K・ディック)

*マガジン「読み返したくなる短篇小説」バックナンバー 「変種第二号」、原題は "Second Variety" 。目次に並んでいた、シンプルで無骨かつミステリアスなこのタイトルに惹かれて『ディック傑作集』を買い求めたのをよく覚えている。内容もまた実にシンプルで、テーマや世界観、ムード、物語の展開も含め、SFにあまり詳しくない私でも知ったかぶって「これぞ王道」とか頷きたくなるような、短いながらも土台のしっかりした濃厚な作品だった。  調べてみると、初出は1953年。52年か