〔連載小説〕 うさぴょん ・その101
昨日の朝、水やり当番だった部長さんから“セイヨウアサガオ発芽”と連絡が来た。写真はない。すぐに見に行きたかったけれど試験期間中の日曜日なのでそうもいかない。
夕方になって、今度は宮内先輩から“いい感じに発芽してる”と連絡がきた。いい感じ、とはどんな感じなのかそこが気になるのだが、写真もなく詳しく教えてはもらえなかった。写真の代わりに“各自でみに行ってね”とだけ。
特に異常がなかったからそういうふうに言ってきたのだろうけど、ものすごく気になる。気にはなるけれど、勉強もしないといけないし、という一晩を過ごして朝になった。
いつもの駅でいつもの時間に佐々野さんに会う。
「先輩、写真って撮ってますよねえ?」
「もちろん撮ってますよ。記録ですからね」
「どうなってんにゃろ?」
それからセイヨウアサガオの話ばかりで、別に逃げやしないのだけれど、地下鉄を降りて自然と小走りになった。
部室の側に苗床のポリポットがずらっと並べてある。
「あっ」
「うわっ」
いくつかのポリポットで発芽が確認できた。まだ種の皮を被っているものもあれば、双葉が開きかけているものもある。
色々と育てているけれど野菜は苗を買ってきたし、へちまは試験後に植えることになっているし、こうやって発芽させたのは、セイヨウアサガオが初めてだ。苗を買った方が手っ取り早いし確実というのはあるが、やっぱり種から育て始める楽しさはちょっと違う。
「これから楽しみですねえ」
「はい。宇佐美君、あのう、先輩が引退したらふたりなので、手入れが大変になると思いますけど、よろしくお願いします」
「それは、はい」
「あっ、おはよう」と小野村先輩がやってきた。先輩が水やり当番だ。「セイヨウアサガオはどうなって、あれっ、ふたりともどうしたん?」