父のこと④
私にとっての最大の試練は、火葬だった。
あれが。ほんとにいや。焼かないで。
うちの猫ちんが亡くなったときも、本当にいやだったのよ。
出棺のとき。
用意していたゴルフウェアたちを、体にかけた。
ご友人の方の計らいで、ゴルフシューズも入れられた。良かった。草履じゃ歩きにくいもの。
居間にたくさん飾っていた家族の写真も入れた。
生まれたばかりのひ孫の、手型と足型をついた色紙も。
私は、顔はめちゃくちゃ母似だが、身体の形や身体能力は父似なのだ。
足の形や筋肉のつき方が父そっくりだ。
スプリンターの足。ちなみにこれは息子が受け継いでいる。
その、そっくりな足をたくさん撫でた。
手もたくさん繋いでおいた。
家が大好きだった父。
身体が家にあるのはこれが最後か。
そんなことを思いながら火葬場へ。
火葬場での最後のお別れは、号泣が止められずにコンタクトがどこかにいってしまった。
母の悲しみを思うと余計に悲しい。
ねぇ、逝くの早いって。
収骨から葬儀まではあっという間だったけれど、お寺に到着すると、たくさんの方が集まってくださっている中で、静かにジャズが流れていて。
あぁ、父が望んでいた場なんだと、心が落ち着いた。
葬儀の後に行った法要で、
ご住職が戒名の説明をしてくれた。
《康芝院奏彩直歓清居士》
康:父の名前から一文字。
芝:もちろんゴルフから。
奏:ジャズだねぇ
彩:絵画。とくに油彩が好きだったことから。
直:曲がったことが大嫌い。武士のような人。
歓:頭の回転が早く、人を歓ばせるような冗談をよく言う。
父らしさを、これでもかっ!と詰め込んでくれた戒名。すごくいい。
ご住職、ありがとうございます。
これが、父の最後の物語。
私にとって父の存在はとても大きくて、整理しないと先に進めなかったので書き記しました。
お父さん、また会おうね。
ちなみに。
いつも派手なネイルをしている私。たくさん弔問の方がいらして、その度に手をついて礼をしていた、その指先はこれでした笑
親戚のおばちゃんが「キレイね♡」って褒めてくれてた。最高に黒の喪服に映えていたに違いない。
母の紫色の髪の毛も。