〈111〉事例検討は大事だ。しかし武勇伝は要らない。
放課後児童支援員の学びの場が少ない、学ぶ意欲がある人も少ない、設置者に理解が無い等の理由で、現場の中だけで何かが起きている、現場の支援員だけが困っているということが常に続いています。
そのため何か、何でもいいからヒントをくれ!と書籍にすがるわけですが、学童保育についての書籍はそれほど多くはありません。
その中で有意義だと思った本が一冊あります。「子どもの権利条約を学童保育に活かす」(安部芳絵 著、高文研、2020)
子どもは保護者の所有という考えが昔からある中で、この子どもの権利に目を向け続けるという軸を放課後児童健全育成事業に関わる全ての者は、持つ必要があるでしょう。どの放課後児童クラブにも一冊置けばいいのにと思った書籍です。
現場の放課後児童支援員が書いた本もあります。
多いのは発達障がい(神経発達症)児への対応とその保護者とのやり取りでしょうか。
その時の声かけや介入が載っていて、どれも良い関係が築けた、めでたしめでたしのような締めくくりがよくあります。
現場の質向上のためにも事例検討はとても大事な工程です。
良い結果に至れた事例の検討も大事です。
しかし、書籍を読んでいても、どうも釈然としないのです。
やはり長期に渡る支援・介入を書籍の事例紹介にまとめるには、途中の最も大事であろう部分が抜けています。
現在進行形で苦慮している者が読むと、知りたいのははじめと終わりだけじゃない!と思うのです。
「支援員が声かけしたら子どもがこう変わった」とあれば、どう声かけしたのかを知りたいのです。どのようなステップを踏んでどうなったのか、変化の過程を知りたいのです。
「支援員が発達支援センターに、病院に同行して」とあれば、どういうコネクトをそもそも持っていたのか、どう保護者に介入したらそういう選択肢が出来るのか、そもそもそこまでの労力を割く是非を含めて知りたいのです。
結局、リモート研修もそうなんですけど、話し手の紹介する事例と自分たちの手元にある事例に共通点はあります。でも、やはり背景が違うため、参考にしきれないんですよね。
ましてや「難しい。それでも向き合えば変わっていく!」みたいな方向性だけのアドバイスは不要なんですよね。
「そちらも大変ですね。わかります。」みたいな共感で終わっても、傷の舐め合いしているたけで進歩がないんですよね。
目の前の数年間の変化が、本当に子ども達の人生をどう形成していくか、良い変化なのかなんて、それこそ長期的視点で見ないとわかりませんしね。
つまり、現場に必要なのは事例検討ではなく、ケースカンファレンスなんですよね。
背景アセスメントして、短期的・中長期的にどう介入するか考え、実際に介入して、振り返る。
他職種連携して支援の選択肢を増やすとか、現場介入のヒントを得るとか。
どこかの誰か一人の武勇伝じゃなくて、自分の目の前の子どもについて話がしたい。そういうことです。