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評価されない男|“頑張るだけ屋さん”の小村太郎(27歳)錯覚資産を築き、社内を無双せんとす。
課長『新宿、渋谷、秋葉原、池袋の駅前店舗は... 桜宮(さくらみや)、お前に任せる。絶対に落とせん!!頼んだぞッ!!』
桜宮『はい!お任せください!(キリッ☆)』
課長『うむ。小村!お前は郊外店舗だ!!そっちはそっちでしっかりやれよッ!!』
小村『ハ、ハイ!!(悶...々...)』
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小村は悟っていた。自分よりも2年後輩の桜宮が駅前旗艦店を任される傍ら、先輩である自分は郊外の店舗...。上司の評価は低く、自分は出世コースにいない。
桜宮は自分の10倍、課の売り上げに貢献するだろう...。主任、係長、課長...、順調に出世を重ねていくであろう事は、直属上司の桜宮への態度から火を見るよりも明らかだ。それに比べて自分は...。
(俺かて...任せてもらえればそこそこやりますよ...。任せてもらえれば...。)
◇
◇
小村 太郎(27歳)
1991年大阪府大阪市生まれ / 大手家電メーカー勤務 / 誠実、真面目でストイック。遅刻、病欠などは一切せず、仕事には熱意をもってこなす。学生時代にはブラスバンド部の副キャプテンを勤め、楽器はギロを担当した。
◇
クラック・ジャック(天才無免許精神科医)
悩みや不安など、あらゆる心理不調を対話を通じて解消する男。"気付き" を与る事によって心の平安を取り戻す事をモットーとしており、電気療法、薬物療法に依る精神医療産業従事者からは目の敵にされている。
◇
◇
※本文に登場する人物はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
1. 頑張るだけ屋さん
自分で言うのも何ですが...。
真面目に頑張ってきたんです...。真面目に...。
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うむ。
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それやのに、僕は...。
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評価されないと?
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ハイ...。"実力" がないんでしょうがないんです...。
こんな事、先生に相談する事やないですね...。
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"実力" がない。それは本心か?
自分だってやればできる、チャンスさえあれば。
そうは思わないか?
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しょうみ...思います...。
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どんな人間なのかは目を見れば分かる。
お前さん...自分が本当にできない人間だとは思っちゃいない。
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仰る通りです...。
でも...僕にはチャンスが回ってきません。運も実力のウチ...。
今の上司にあたったのも...ツキがなかったと思わなしょうがないですわ...。
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つまり『 "運" があれば評価される』と?
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えぇ...。何かオカシイですか?
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...。
少し俺の話をさせてもらおうか。俺は...『華佗(かだ)』の末裔なんだ。
【 華佗(かだ)とは 】
三国志の時代、曹操の典医(侍医)となり、民衆たちから「神医」と呼ばれ、尊敬のまなざしを集めた伝説的な医師。創薬、鍼灸、外科手術などの高度な医術を駆使した。東洋医学史上No.1のレジェンドとも称される。
学歴はハーバード大学物理学科、ワシントン大学医学部、メニンガー精神医学校、卒業後はアメリカ・ロサンゼルスで精神科専門医として働いた。ノーベル生理学・医学賞の受賞候補にも挙がったんだぜ...。
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は、ハイ...。(こりゃスゲェ...♩♩)
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今は闇医だが...年に数千人からの相談を受け、あらゆる心理不調を対話のみを通じて解消している。寄せられた感謝の手紙は俺の生きた証だからな...全てデータ化してとってある。
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-- ハードディスクの山(2PBに及ぶ(TBの上の位)) --
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は、ハイ...。(マジか??)
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これ以上は口にするまでもない。俺には、お前さんの心理不調を解消し、スキップに鼻歌調子で帰ってもらえるであろうという自信がある。
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は、ハイッ...。(ゴクリ...)
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うむ...。
この "凄い人" は、僕に何をしてくれるのだろう?
きっと凄い『教え』が得られるに違いない。この人が言う事は間違いない...。
お前さんの心境...当たらずとも遠からずと言ったところか?
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へ??(急になんやねん!?)
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これだけは、はっきりさせておこう。
『この世は "実力" ありきだが、実力が人から "評価" されるとは限らない。』
❶ 実力があってこそ結果が出せる ⇨ ❷ 結果が出せるからこそ、評価され、昇進・キャリアアップを重ねる事ができ、良い環境を手に入れる事ができる。 ⇨ ❸ 環境が良いからこそ実力を発揮できる。⇨ ❶ ⇨ ❷ ...
この『実力の好循環ループ』何かおかしな点に気付かないか!?
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おかしな点!?
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❷ 結果が出せるからこそ...とは言っても、結果が評価されるとは限らない。
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え!?
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さっきの自己紹介だが...お前さんは俺を "評価" をした。それは、神医の末裔、学歴、ノーベル賞、感謝の手紙など、目に見えるカタチで誰をも納得させ得る『結果』の存在があるからだ。
ハーバード大学を出てノーベル賞候補にもなった男と、謎の闇医者、同じ話を聞くにしても、どちらの男から話が聞きたいと思うよ?
『この世は "実力" ありきだが、実力が人から "評価" されるとは限らない。』とはそう言う事だ...。
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政治家のプロフィールにみられる略歴や経歴...。作家のプロフィールにみられる学歴...。インフルエンサーのプロフィールにみられる役職や肩書き、それに関わったプロジェクト...。これらは他人に "評価させる為" の『結果の掲示』と言う事ですか!?
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そう言うコト。結果さえ出せば、人様の評価が勝手についてくるなどとは思わないコトだ。
"運" があれば評価される? "実力" があれば評価される? とんでもない。
運があろうが実力があろうが、他人に評価 "させる" 努力を怠る者は "頑張り屋さん" ならぬ "頑張るだけ屋さん" って事よ...。
フッフフフ...。
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2. 運や実力をも飲み込む "錯覚資産" とは?
他者に "評価させる" 事に長けた者達は、つまり、功績のアピールが上手な人達は、もれなく共通の資産を築いている。
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し、資産!? なんでっか!? 株でっか!? 不動産でっか!?
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ノーノーノー...。
錯・覚・資・産だ。
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さ、さっかくしさん!?(初めて聞いたな...。なんやそれ?)
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錯覚資産とは『他人が自分に対して持っている、自分に都合の良い思考の錯覚』を言う。
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なんでんの!? 何を言うてますの!?
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お前さん、ハロー効果と言う社会心理学の用語を知っているか?
ハロー効果とは認知の偏りの一つで、ある対象を評価する時に、それが持つ顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象を言う。
・ジャニーズ顔負けの彼は、きっと性格も良いに違いない。
・オックスフォード大学卒の彼女は、仕事ができるに違いない。
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なるほど。
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例えば、お前さんが売れっ子の漫画家だったとする。その場合『あの漫画家の小村さんならきっと小説を書かせても面白いに違いない、と多くの読者が色眼鏡でお前さんを見る。
尾田栄一郎先生の書く恋愛小説、井上雄彦先生の書く推理小説、福本信行先生の書くSF小説、板垣恵介先生の書く官能小説...。
漫画家としては超一流でも小説家としては素人だ...だが、読んでみたくないか?面白いに違いないと期待してしまわないか?
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読んでみたいです...。
浜岡賢次先生(浦安鉄筋家族)の経済小説...絶対に買います...。
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うむ。錯覚資産とは分かりやすく言えば、そういうモノだ。お前さんの職場を思い出せ。評価される男性の身なり、態度、言葉遣い。評価される女性の雰囲気、空気感、匂い。彼ら、彼女らは本人が意図しているか否かに関わらず、外見や態度から上司や同僚に思考の錯覚をもたらしているんだ。
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た、確かに...。(桜宮は、見るからに "できそう" な男や...。)
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つまりだ、ビジネスの場では『外見で判断して欲しくない』などと口が滑っても言うものじゃない。他人に思考の錯覚をもたし、自分を認めさせる...この事は身なりや、素ぶり...とにかくなんでもアリだ。およそ五感の全てを刺激して他人に自分を "評価させる" んだ。
お前さんに足りないモノが徐々に見えてきただろう?
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甘かった...。はっきり言うて、僕、甘すぎましたわ...。
スーツは適当、靴は最後にいつ磨いたのか覚えてない、鞄はナップサックやし...髪型なんて小学生の時から変わってません...(汗)
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株に、不動産...物質的な資産などは、錯覚資産を築いた後で好きなだけ買えば良い。結果の有無を問わず、嫌でも人から "評価される" 様になれば金や仕事はいくらでもついてくる。
手始めにその髪型から手をつけようか?良い理容師、紹介するぜ...無免許だがな。
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お、お願いします。(無免許精神科医に無免許理容師、なんでみんな免許ないねん...。)
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勘違い上司から学ぶべきコト
錯覚資産の重要性については分かりました。
しかし、先生...。職場ではオカシな事も起きてます。
明らかに数字もない、結果もないそんな社員が主任に抜擢された後、上司が変わると同時に降格なんて事がありましたわ...。
『えこひいき』や言うて、社内では噂になっとったんです。
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うむ。感情ヒューリスティック...。端的に言うと、その時の上司の『好き嫌い』で人事配置が行われたという事だろうな。
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はぁ!?好き嫌いでっか!?
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感情ヒューリスティックとは『置き換え』の一種だ。
誰の年収をいくらにすべきか、誰を昇格させるべきか、誰にどんな仕事を与えるべきかなど、社員の人生を大きく変えかねない重大な "問題" は答えを出す事が難しい。
ヒューリスティックとは、人が意思決定をしたり判断を下すときに、厳密な論理で一歩一歩答えに迫るのではなく、直感で素早く解に到達する方法のことをいう。
誰を昇格させるべきかと言う難しい問いに対して、簡単かつ高速に答えを出す方法は?
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シンプルに考える...でっか?
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その通り、その時の上司は、無意識的に難しい質問を簡単な質問に置き換えて答えを出したんだ。つまり誰を昇格させるべきか ⇨ 誰が好きか? と言った具合にな。
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そ、そんなぁ。無茶苦茶や。
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単に好感を抱いている部下の年収を上げたり、昇進させたり、上司本人には不公平さの自覚はない。『自分は極めて公平で客観的な人事評価を行なっている』と信じて疑わないモノだ。
結果、人選を誤り、会社の利益を大幅に削ってしまう事も起こり得る。つまり、"評価させる事だけ" に長けた者、実力を伴わないブラフを見抜く力、思考の錯覚を錯覚であると認知する事も大事なんだ。
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なるほど...。
3. 『美しき敗者』 と 『醜悪な勝者』 好きな方を選べ!!
錯覚資産を築くとは言うても...具体的に...具体的に、僕は何をすればエエんでしょうか?
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フッフフフ...。
つまりつまる所、思考の錯覚なしにはドラマは成り立たない...。孫悟空が戦闘民族サイヤ人の生き残りである様に、浦飯幽助が魔族の子孫である様に...ハロー効果によって主人公にはカリスマが宿るんだ。
お前さん自身も『一目を置かれる存在』になりたい?そうだよな?
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と、とにかく僕は今の仕事を頑張りたいです...。できる事なら、出世もしたいッ!!現状がどうであれ、僕にとって、今の生きがいは仕事なんですわッ!!
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分かった...。お前さんをサイヤ人たらしめる『核心』について触れよう。
そもそも、錯覚資産の大きな人は立派な人なのだろうか?尊敬できる人なのだろうか?否『錯覚資産』と言うのは褒められるモノでも、誇れる様なモノでもない。それはある意味で人の判断を誤らせる空虚なハリボテだ。
・学歴の高い人は善か? ⇨ Noだ。
・イケメンは正義か? ⇨ Noだ。
・金持ちは正しいのか? ⇨ Noだ。
にも関わらず、大衆の心には最終学歴『ハーバード大卒』、イケメンの代名詞『キムタク』世界一の大富豪『ビルゲイツ』らの声が響く。彼らは正しいのだと思い込む。
3.5億円のバイオリンを本物のプロミュージシャンが路上で奏でても、大衆は足を止めない...。つまり風の音と何も変わらんのだ。
仮に1席数万円のコンサートホールで同じ演奏をしたとしよう。感動して涙を流す者までみられるだろう...。
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...。
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錯覚資産を築き、評価され、世界を生きやすくしようと言うのであれば、この事を肝に命じておくんだな。その世は『空虚なハリボテ』でのどつき合いだと。
つまり、"評価させる者" 錯覚資産を築こうとする者は『醜悪な勝者』にもなり得る、"頑張るだけ屋さん"、錯覚資産を築かない者は『『美しき敗者』とも言える。
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...。
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その上で、お前さんの『具体的に、僕は何をすればエエんでしょうか?』に対する答えは、他人に自分を評価 "させる" 為にできる事の全てをやれ。だ...。
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つまり、なんでもアリですか...。
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うむ...。結論としてはそう言う事になるな...。
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家路を急ぐ小村の心境は複雑だった。この世が世知辛いと言うコトの意味とその現実を突きつけられたのだ。しかし、その手には仕立ての良いスーツに品の良い革靴...。新しいヘアスタイルを揺らす風は爽快で、まるで自分の背中を押している様だ。
ふと空を見上げると今夜は満月だった...。
『サイヤ人に満月かいな...。フッフフフ...。』
この日を境に『自分には "実力" がない』などと考える事をやめた。
参考文献 : 人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている。 ふろむだ(著)