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MJ
取り引き先の方から、食事に誘われる。
「CKさんって、洋楽好きなんですよね」
「まあね」
「これから案内する店、CKさん、絶対、喜ぶと思います」
「はあ」
「実は、マイケル・ジャクソンが来日した時に訪れた店なんですよ」
「え!行きたい、行きたい!連れてって、連れてって!」
「もう、期待通りのリアクション、ありがとうございます」
薄暗い階段を下って地下へと降りていく構造の店。
「ねえ、ここの雰囲気ってスムース・クリミナルのPVに出てくる店に似てるね。マイケル、ここから思いついちゃたのかな?」
「そうなんですか?残念ですが、私、そのPV知らないです」
そこは鉄板焼のお店だった。シェフが、目の前で肉を焼いてくれるスタイルだ。
「ちなみにあそこみたいですよ。MJが座った席は」
指差した先は、店の奥の角の席だ。
「俺、重要な事に気づいちゃったんだけど」
「なんすか?」
「MJ、確かベジタリアンだったんだよね。この肉一色の店で、MJはいったい何を食ったんだろ?」
「・・・。モヤシっすかね」
「(MJモノマネで)ココノモヤシ、ウマイネ!」
「恥ずかしいからやめて下さい」
「あ〜ゴメン。今、降りてきたわ」
「ホント、勘弁してください」
「ところで君達の世代だと、MJのどの曲が好き?」
「あんまり詳しく無いんですけど、あのウォーキング・デッドみたいなビデオのヤツすかね」
「あ〜、スリラーね。俺はさ、マン・イン・ザ・ミラーって曲が好きなんだよ」
「残念ですが、その曲知らないです」
「あ、いいんだよ。気にしないで。その曲はね、「このクソみたいな世界を変えたいならば、まずはクソみたいな自分から変えようぜ」っていうMJからのメッセージソングで、この曲のPVには、あの自己顕示欲がクソ強いMJが最後の方にチョロっとしか出てこないんだよ」
「はあ」
「でね、その映像が日本の幼稚園児と一緒に撮影した映像なの。だから、ここでモヤシ食べた後に撮影したのかなって」
「はあ」
「モヤシ、ウマイネ!」
「CKさん、ほんと冗談抜きにヤメテ下さい。もうこの店、来れなくなっちゃうじゃないですか」
「あ、ゴメン、ゴメン。また降りてきちゃってた」
「肉、冷めない内に食べて下さいよ」
「わかった、わかった。ふむふむ。あ!ヤッパモヤシ、ウマイネ!」
「絶対ワザとやってるでしょ。ブッ殺しますよ」